※筆者撮影:当日のデジタルサイネージ
まずは東京ゲームダンジョンについて紹介しよう。同イベントは国内の個人・小規模チームが制作するデジタルゲーム(インディーゲーム)の展示会で、来場者は会場でゲームの試遊やグッズの購入などができる。
第一回が開催されたのは2022年8月7日で、当時の出展者は80団体、来場者は800人だった。日本貿易振興機構によると、昨年、実施された東京ゲームダンジョン8の出展者は293団体で来場者数は3100人とされており、過去最多を記録。今年は過去最大の規模の300団体超が参加しているほか、当日券を購入するために50人以上の列ができていた。公式からは3000人以上が参加していたとアナウンスされており、こちらも記録の更新に大きく期待できるのではないだろうか。
東京ゲームダンジョンでは、STEAMにおいてイベント出展者の作品の特設ページを設置し、世界のSTEAMユーザーへのPRにもつなげている。インディーゲームは基本的にPCであればSteam、家庭用ゲーム機であればNintendo Switch™で配信されている。
世界最大のPCゲーム配信プラットフォーム。米国のValve Corporation社が運営。ダウンロードだけでなく、クラウドでもプレイ可能で2024年には同時接続者数が4000万人を超え、同年に配信されたゲームタイトルは1万8864本である。
※出典:Steam「Steam-2024年の振り返り」
ここまで当たり前のように記載している「インディーゲーム」なるものだが、実はその定義は明確に定まっていない。明確に言えるのは、メジャーなパブリッシャーによる莫大な資金とリソースを投入して開発する「AAA(トリプルエー)タイトル」ではない。という一点だけだろう。
※筆者撮影:出展作品のパンフレット(一部)
私自身、東京ゲームダンジョンを訪れて実際に出展者の方々のブースを目の当たりにするまでは「個人または小規模な制作チーム」「予算があまりかかっていない」「成果が求められていない」「独立した市井のクリエイターによる制作」というイメージを抱いていた。
※筆者撮影:当日券の購入ために50人以上の列ができていた。
ところが、実際は必ずしも私のイメージに当てはまる方々ばかりではなかった。東京ゲームダンジョンに出展していたクリーク・アンド・リバー社の開発スタジオ「C&R Creative Studios」を例に挙げてみよう。同ブースでは、ゲーム部門が多様なジャンルのキャラクターデザイン、原型に携わっている著名な造形作家「Yoshi.氏」とコラボした「IZON.」の試遊できた。制作体制や規模はもちろん、キャラクターボイスに有名声優が採用されているなど、ゲームのクオリティにおいても私が抱いていたインディーゲームとは一線を画していた。
一方、一人で出展されているクリエイターの方も非常に多く、商業性の濃淡や作品への向き合い方も多種多様だ。むしろその懐の広さこそがインディーゲームが注目される下地の一つなのだろうと思う。それは東京ゲームダンジョンの「緩い」申し込み条件にも通じるだろう。
【出展団体】
・本展示会はデジタルゲームを開発している個人または小規模チームが出展申込いただけます。
・出展申込の代表者は日本国内に在住している必要があります。
・未成年の方が代表者として出展申込する場合、事前に必ず親権者の同意を得てください。
・申込可能なスペース数は1つの出展団体につき1枠のみです。
※出典:東京ゲームダンジョン「出展規約」
東京ゲームダンジョンの様子をレポートする前に、インディーゲームをめぐる情勢を確認してみよう。まずは所謂“ゲーマー”が日本で増えているファクトのチェックだ。
総務省が5年ごとに実施する「社会生活基本調査」の最新版である「令和3年社会生活基本調査」によると、2021年時点での趣味・娯楽に占めるゲームの割合は42.9%と上位3番目となっている。しかも前回(2016年)の調査と比べて7.1ポイントも上昇しており、コロナ禍の影響を考慮したとしても、日本においてゲーマーが増加傾向であることは間違いないだろう。
ゲーマーの増加は当然、市場の拡大にも直結している。2024年12月、経済産業省が作成した「業界の現状及びアクションプラン(案)について【ゲーム】」によると、2021年時点での世界のゲーム市場規模は1930億ドルに達している。2022年には下がってしまったものの、CAGR(年間平均成長率)が2011年から平均して10%も伸長している。コロナ後は成長率が落ちているものの、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)によると2028年までは5%程度で成長すると予測されている。その時点で、現状はコンテンツ産業のトップであるアニメを抜くことも示されているのだ。
ゲーム市場規模の拡大に伴いの理由は、国内のインディーゲームの大作タイトルも続々と誕生している。そのなかでも特に有名なミリオンセラー作品を以下でまとめた。
タイトル | 売上本数 | 開発者・チーム名 | パブリッシャー |
NEEDY GIRL OVERDOSE | 200万本以上 | WSS playground | WSS playground Alliance Arts |
8番出口 | 180万本以上 | KOTAKE CREATE氏 | PLAYISM |
天穂のサクナヒメ | 150万本以上 | えーでるわいす | マーベラス |
PICO PARK | 100万本以上 | 三宅俊輔氏 | TECOPARK |
AAAタイトルと比べるとさすがに数自体は多くないものの、8番出口は映画化、天穂のサクナヒメはアニメ化、PICO PARKは続編発売、さらにNEEDY GIRL OVERDOSEは中国市場を中心に人気を博して200万本以上を売り上げるなど、展開や特徴も多種多様だ。
また、ビジネスの観点からインディーゲームの創作活動に着目すると、開発を進めるとともにいわゆる広告宣伝やマーケティング、販路拡大のための施策とそれに付随する雑務にも対応しなくてはならない。だからこそ、販売元となる「パブリッシャー」との契約を図る開発元も少なくない。実際、東京ゲームダンジョンの出展者においても、出口戦略は千差万別で「パブリッシャーへのPRの場」を期待している人もいた。会社に縛られないからこそ、クリエイターが独創的な作品を生み出しつつ、野心的な活動にも自由に挑戦できる。それがビジネスチャンスという観点で見たインディーゲームの魅力だろう。
※筆者撮影:「NEXUS CODE」の試遊ブース
そんな野心も感じられた出展者も紹介しよう。ゲームのディレクターやデザイナーたちによる開発チーム「Iolite Games(アイオライト ゲームズ)」によるプログラミングバトルゲーム「NEXUS CODE」だ。同ゲームはプログラミングとバトルの2フェーズに分かれており、まずは移動・攻撃・必殺技などの行動を直感的にプログラムする。その後、半自動のバトルフェーズ(必殺技のみ任意で実行可能)に移行して、ライバルと戦闘する。制限時間が設けられているなかでプログラミングし、負けると敵の行動をチェックして再度プログラムする……。フル3Dで迫力のあるバトル画面とも相まって何度でも挑戦したいという中毒性がある。
ゲーム産業は、国の産業としても注目されている。例えば、経済産業省は2023年10月に「ゲーム産業は依然高水準!」というレポートを公開している。また、市販のゲームだけではなく、近年、インディーゲームも「国策」としても重要視されているのだ。経済産業省は、令和6年度の補正事業として、インディーゲームアクセラレーションプログラム「創風」をスタートした。実施期間は2025年7月~2026年2月。月1~2回の専門講義やワークショップ、海外展開支援、メンターによる開発伴走支援、国内外へのイベント出展支援を通して、採択されたゲームクリエイターの「スタジオとしての独立」を軸に「海外展開を視野に入れた取り組み」も見据えて継続的な実施するとされている。
※出典:経済産業省「創風」
最初に紹介したいのが、塩惺瑛氏による異色の「自撮り視点」探索アドベンチャーだ。自撮り視点で操作するという斬新さや個人制作環境、さらになつかしさを感じるローポリへのこだわりなど、まさに筆者がイメージしていたインディーゲームを体現しているとお話を伺いながら感じた。
※筆者撮影:会場は多くの人でにぎわっていた
また、塩惺瑛氏は現在大学生で、中学生の頃から一人で地道にゲームを自主制作していたという。今回、東京ゲームダンジョン9に出展したきっかけは、同じ大学に通う友人に勧められたからだ。二人で試遊希望の来場者に対して不慣れながらも、自分の作品を紹介している姿は、様々なコンテンツに対して「売れる」とか「評価される」という商業的な観点から入ってしまいがちな筆者にとっては、ものづくりの原点と青春感を感じた。
前述した「創風」のようにクリエイターを第三者が支援する制度は多々あるが、ゼロから萌芽する土壌があるからこそ、コンテンツの市場は拡がっていくのではないだろうか。
取材・撮影・執筆:藤冨啓之
経済週刊誌の編集記者として活動後、Webコンテンツのディレクターに転身。2020年に独立してWEBコンテンツ制作会社、もっとグッドを設立。BtoB分野を中心にオウンドメディアのSEO、取材、ブランディングまであらゆるコンテンツ制作を行うほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動中。データのじかんでは編集・ライターとして企画立案から取材まで担う。1990年生まれ、広島県出身。
(TEXT:藤冨啓之、編集:野島光太郎)
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