2018年12月17日、世界経済フォーラム(WEF)が、ジェンダー・ギャップ指数2018を発表しました。ジェンダーギャップ指数とは、世界各国においてこの1年間で生じた男女間格差を測った指数です。
日本は昨年より4位順位を上げたものの、149カ国中110位、先進国首脳会議(G7)の中では最下位、という結果に終わりました。
国際的にジェンダーギャップ後進国と言える日本。なぜ日本はこんなにも男女格差が激しいのしょうか?データを見ながら考えていきたいと思います。
指数の計測にあたり、14項目の集計には、項目ごとの偏りを考慮し、重み付けしてあります。全てのスコアにおいて、値が1に近づくほど男女平等に、値が0に近づくほど男女格差が大きくなる、と判断されます。
分野 |
項目 |
経済参加 |
経済参加率 |
同一職での賃金格差 |
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収入格差 |
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管理職の男女比 |
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専門職や技術職の男女比 |
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教育 |
識字率 |
初等教育(小学校)進学率 |
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中等教育(中学・高校)進学率 |
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高等教育(大学、大学院)進学率 |
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保健 |
出生時の男女比 |
健康寿命 |
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政治参加 |
国会議員の男女比 |
閣僚の男女比 |
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過去50年間の首相の男女比 |
そして、次が、G7に中国を加えた計8カ国のジェンダーギャップ指数を分野別にグラフ化したものです。
日本は「教育」、「保健分野」で高いスコアを出す一方で、「経済参加」、「政治参加」のスコアが著しく低い、ということがわかります。
それでは、「経済参加」、「政治参加」の2分野について各項目のスコアを見て見ましょう。
「経済参加」の項目のうち、「経済参加率(世界79位)」、「同一職での賃金格差(世界45位)」、「収入格差(世界103位)」の値は世界平均を上回っています。一方で、「管理職の男女比(世界129位)」や「専門職や技術職の男女比(世界108位)」は平均を下回り、特に「管理職の男女比」のスコアは平均を大きく割る結果となりました。
続く、「政治参加」の項目では、「国会議員の男女比(世界130位)」、「閣僚の男女比(世界89位)」、「過去50年間の首相の男女比(世界71位)」全ての項目で日本は世界平均を下回っており、女性の政治参加が著しく遅れていることがわかります。
この状態は、日本で女性として育った筆者の肌感とも一致していました。
実際に、筆者の記憶の中で、強烈な男女差別を受けた、という記憶はほとんどありません。
その一方で、様々な選択の中で、家庭や学校において「女の子だからピンクを選ぶでしょ?」や、「女だからそんなにいい大学に入らなくてもいいんじゃない?」といった雰囲気を感じた経験は数え切れません。
「いい大学に進学し、収入が高く、ご飯を奢る」は男らしい。「外に働きに出ず、家事、育児をこなす」は女らしい。
日本社会で普通に生きていたら身についてしまった「男らしさ・女らしさ」という価値観に気がついたら、飲み込まれてしまい、「男/女らしい」選択をしてしまった。そんな経験があるのは筆者だけではないはず。
では、そんな行動には何が関係しているか、を考えた時、筆者が思いついたのは、「日本が非常にハイコンテクスト文化である」、ということです。
ハイコンテクスト文化とはコミュニケーションにおいて、共有された感覚、知識、価値観を前提とした文脈(コンテクスト)が重視される文化を指します。
この概念は、文化人類学者のエドワード.T.ホール(Edward Twitchell Hall, Jr.)氏が、著書である「文化を超えて」(原題:Beyond Culture)の中で、コミュニティごとのコミュケーションスタイルを識別するために提唱したものです。対照的な概念として言語依存的なコミュニケーションを主体としたローコンテクスト文化があります。
日本はハイコンテクスト文化である、ということは、つまり「空気を読む」ことや「察する」ということが求められる、ということです。
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の傾向をまとめると以下のようになります。
ハイコンテクスト文化 |
ローコンテクスト文化 |
文脈重視 |
言語重視 |
間接的、曖昧 |
直接的、正確 |
論理的飛躍が許される |
論理的飛躍を好まない |
多く話さない |
寡黙であることを評価しない |
凝った表現を好む |
言語に対し高い価値と積極的な姿勢 |
ここで、先ほどのジェンダーギャップ指数でも取り上げた日本、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、アメリカ、中国のコミュニケーション環境の分布を見てみましょう。
さらに、この分布にジェンダーギャップを当てはめてみます。
すると、見事に右肩上がりの図になりました。この図を見ると、コミュニケーション環境とジェンダーギャップに何らかの関係がある可能性を感じます。
世界各国で問題になっている男女格差の要因にはコミュニケーション環境だけでなく、様々な要素が含まれています。
また、「ハイコンテクスト文化、ローコンテクスト文化」の両環境の間に優劣はありませんし、ハイコンテクストなコミュニケーションが良い結果を生むこともあります。
しかし、今回の結果を見てみると、重要な選択をする際には、コンテキスト(文脈)に依存しすぎず、はっきりと自分の希望や意見を言語化する、ということが男女格差改善の道しるべになるのではないでしょうか?
【出典】 『文化を超えて』エドワード・T・ホール著、岩田慶治、谷泰訳 The Grobal Gender Gap Report 2018、世界経済フォーラム(WEF) https://www.weforum.org/reports/the-global-gender-gap-report-2018
(大藤ヨシヲ)
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