About us データのじかんとは?
「植物に明るい声で話しかけると、植物は元気に育つ」なんてことを聞いたことがある人も多いと思います。しかし、もし嫌な言葉を植物に浴びせ続けたら、植物はどうなるでしょうか?
アラブ首長国連邦にある学校で、次のような実験が行われました。2つの植物を用意し、一方の植物には優しい言葉(「そのままでいいよ」「君はとても美しい」…etc)を、もう一方の植物には否定的な言葉(「誰もあなたのことを好きじゃない」「あなたがいるのは間違い」…etc)を話しかけました。言葉以外はまったく同じ環境にしてあります。
30日後、褒められ続けた植物は元気ハツラツと育ったのに対し、否定的な言葉をかけられ続けた植物は元気がなく、今にも枯れてしまいそう。この結果を見た少女は「否定的な言葉が植物にも影響を与えるのだから、人間にも悪影響を与えるかもしれないわ」という感想を話しています。
実際、私たち人間は、周囲から明るい声をかけられたり、褒められたりすると、元気をもらうことができます。反対に、嫌な言葉をかけられ続けると、元気をなくしてしまいます。もちろん怒られて伸びるタイプの人もいるとは思いますが、30日間ずっと嫌な言葉を言われ続けることに耐えられる人は少数派なのではないでしょうか?(30日間嫌な言葉を言われ続けるというのは、もはやパワハラではないかと思われます)
私もかつていじめを目撃したことがあります。小学生時代と社会人時代です。小学生時代は物が盗まれたり噂話を流したりするような、直接的な攻撃が多かった記憶があります。体型が太っていたり痩せていたり、性格が暗かったりクラスで浮いていたりするような、少し特徴のある子がいじめられていました。対して、社会人時代には「無視」するようないじめが多く見られました。飲み会に誘われなかったり仕事をまったく振られなかったりするなど、直接的な攻撃はないものの、無視することによってその存在を否定するのです。
実は、具体的に攻撃されたり嫌がらせをされたりするよりも無視されるほうが、ダメージが大きいことがわかっています。
カナダにあるブリティッシュコロンビア大学を中心とする研究チームは、職場での「仲間はずれ」と「無視」に関する調査を実施。(1)多くの人たちは「無視」することはいじめよりも有害ではなく、罪は低いと考えている。(2)「仲間はずれ」にされるよりも「無視」されるほうが職場への帰属意識・責任感が低下しており、後者のほうが会社を辞めやすい、ということがわかりました。研究チームのひとりであるサンドラ・ロビンソン教授は「職場や学校でのいじめ対策は間違いなく取られていますが、必ずしもいじめ問題が表面化しているとは限りません。現状は、いじめに遭っている人に発言権はないのです」と話しています(Ostracism more damaging than bullying in the workplace)。
「愛の対義語は憎しみではなく無関心だ」という言葉があります。これは、ホロコースト生還者であるエリ・ヴィーゼル(Elie Wiesel)氏の言葉です。強制収容所での経験を自伝的に記し、ノーベル平和賞を受賞しました。ナチス・ドイツによって約600万人のユダヤ人が犠牲になったと言われていますが、その虐殺には多くの民衆の「無関心」があったことを忘れてはなりません。全権委任法によってアドルフ・ヒトラーに強大な権力が与えられた背景には、独裁を許した多くの民意があったのです。
職場や学校のような閉じられた場所では、いじめの直接的な加害者は少なく、いじめ自体に「無関心」になる間接的な加害者が多数を占めます。自分も加害者になっていないか、一度立ち止まって考えてみる必要があります。
そして、もしいじめられている人がいたら、ぜひIKEAの動画のような、優しい声を掛けてあげてください。
(安齋慎平)
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