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東京のホテルがとにかく高い!「都内」と「隣県」の穴場をデータで考察

「東京のホテルがとにかく高い」、このような悲鳴が全国を席巻している。と言っても、昨年あたりから、ずっと続いている印象だ。実際、2024年の中旬には「ホテル代を浮かせられるのではないか?」と寝台特急と東京のホテル代と実際の過ごしやすさを検証してみた。

この記事を執筆する半年前ほどであるが、事態はますます深刻化しテレビニュースでも取り上げられる頻度が増えているように感じられる。安く泊まれるエリアを探している視聴者は輪をかけて増えているのではないだろうか。しかし、テレビニュースでは宿泊費の高騰に関しては詳しく解説するものの、安く泊まれるエリアはざっくりとした解説で終わってしまう。そこで、安く泊まれるエリアを確かめるべく独自調査を敢行した。

東京の宿泊費は高すぎる!寝台特急「サンライズエクスプレス」は東京旅行・ビジネス滞在費節約の救世主になり得るか–生情報取材班 vol.01

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「ホテル代高騰」は本当?実情を示すデータとは

まず、現状を確認しておきたい。

2024年11月15日、東京ホテル会は加盟約260軒の10月のホテル客室3指標を発表した。ホテル客室3指標とは客室稼働率(OCC)、ADR、RevPARの総称だ。

このうち、ADRとは客室平均単価を指し、売上の「合計金額÷販売された客室数」で求められる。RevPAR(レヴパー)はRevenue Per Available Roomの略で、販売可能な客室1室あたりの収益を表す値だ。RevPARは客室稼働率×ADRで求められる。

■客室3指標

①客室稼働率(OCC)=宿泊利用された客室数÷販売可能な客室数
②客室平均単価(ADR)=売り上げ合計額÷販売客室数
③RevPAR=客室稼働率(OCC)×客室平均単価(ADR)

気になる10月の結果だが、稼働率は91.2%、平均単価18,965円、RevPARは17,228円であった。同年7月の稼働率は87.4%、ADRは17,184円、RevPARは14,940円だったことを考慮すると、この数値は極めて良好で右肩上がりだといえるだろう。東京ホテル会は「このまま調子が続いてほしい」とコメントしている。

主因はテレビニュースでも報じられているとおり、インバウンド客の増加が大きい。東京ホテル会も認めている。このままインバウンド客が推移する限り、少なくとも東京のホテルの価格はしばらくは大きく下がることはないだろう。

都内で安いホテルはあるのか。主要区の最安値を調査

ホテルの価格を調査するにはメトロエンジン社の分析ツールを使うのが1番だが、当然のことながら有料なので手が出にくい。そこで、ホテル予約サイト「Booking.com」を用いて、都内のエリア別にホテルの価格を調査することにした。

調査日は2024年11月21日とし、宿泊日は2025年1月21日の1泊2日とする。部屋はユニットバス・トイレ付きのシングルルームとした。ホステルやカプセルホテルは排除している。結果はエリア別に、シングルルーム1室あたりの最安値を出した。なお、エリアはBooking.comを参考にしている。

結果は以下の通りだった。

■都内主要区の最安値

新宿7,695円、渋谷区8,075円、港区8,721円、千代田区8,642円、浅草7,849円、上野7,849円、日本橋6,925円、両国6,541円、品川9,277円、北区7,600円、江戸川区7,011円、葛飾区7,315円、大田区7,800円、豊島区6,500円

宿泊費は季節等によって大きく変動するので、あくまでも参考値として考えて頂きたい。ただし、調査日から2カ月先のオフシーズンが対象であることを考慮すると、この宿泊費より大幅に下がることは考えにくいのではないだろうか。

さて、上記のデータから考察してみよう。まず、東京23区では東側に比較的安価なホテルが多数存在することがわかる。つまり、台東区、葛飾区、墨田区、江戸川区のエリアだ。この中で、興味深いのは「両国」だ。1月21日は両国国技館で大相撲が開催されているが、高単価ではない。なお、両国エリアの最安値のホテルの最寄駅はJR浅草橋駅だ。大相撲の開催により、宿泊費が上がるエリアの範囲は思いの外、狭いのかもしれない。

東側エリア以外では、北区、豊島区、大田区が目にとまる。大田区でホテルが多いエリアは蒲田だ。蒲田は羽田空港からも東海道新幹線品川駅からも近い。東海道新幹線近くのホテルを探す際、ついつい品川駅周辺を調べてしまうが、蒲田も視野に入れると良い。

ここで注目したいのが日本橋だ。日本橋エリアにある最安値のホテルは東日本橋にある。東日本橋は都営浅草線、都営新宿線、JR総武快速線が乗り入れ、羽田空港、新宿へ1本でアクセス可能だ。筆者も過去に東日本橋で宿泊したことがあるが、交通至便で、安価な飲食店も多く大変助かった。個人的には日本橋・東日本橋エリアが安価に泊まれるエリアとして、ビジネスパーソン・旅行客ともにもっと注目されるべきだと考える。

結論! 穴場は東武東上線

前章では東京都心の安価なホテルを見てきた。しかし、直前になると、価格も上がり、そもそも安価なホテルは予約が取れないことも珍しくはない。展示会のための連泊であれば、なおさらだ。

そんなときに選択肢として浮上するのが、神奈川県、埼玉県、千葉県といった東京都に隣接する県だ。テレビニュースだと「これら3県も視野に」と言いつつも、具体的にどのエリアが空きがあり、どのエリアが利便性に優れているか、といったことは教えてくれない。

そこで、独自に調査してみた。今度は東横インのサイトを使い、11月29日に1泊(11月22日調査)という想定で調査した。まずは神奈川県からはじめよう。神奈川県の6000~7500円の東横イン最寄駅は藤沢、平塚、本厚木、淵野辺、橋本、相模原だ。

■神奈川県の東京近辺「東横イン」最安値

藤沢~新宿間は約60分(小田急江ノ島線・小田原線)、平塚~品川間は約50分(JR東海道本線)、本厚木~新宿間は約50分(小田急小田原線)、淵野辺~新宿間は約50分(JR横浜線・小田急小田原線)、橋本~新宿間は約45分(京王線・京王相模原線)、相模原~新宿間は約55分(JR横浜線・京王線・京王相模原線)

埼玉県は志木、浦和美園になる。

■埼玉県の東京近辺「東横イン」最安値

志木~池袋間は約20分(東武東上線)、志木~新宿三丁目間は約30分(東武東上線、東京メトロ副都心線)だ。浦和美園~四ツ谷間は約45分(埼玉高速鉄道・東京メトロ南北線)

千葉県は柏、印旛日本医大、千葉みなと、松戸だ。なお、利便性から成田空港は外した。また、東横イン千葉幕張は6000~7500円台に該当するが、明確な最寄駅が存在しない。JR京葉線稲毛海岸駅から送迎バスがある。

■柏~上野間は約30分(JR常磐線)

印旛日本医大~日本橋は約50分(京成成田スカイアクセス線・押上線、都営浅草線)、千葉みなと~東京間は約40分(JR京葉線)となる。

上記の結果から何が見えてくるだろうか。

神奈川県であれば、都心に近い川崎が候補にあがると思うが、1週間前の予約では満席になっているのだ。だいたい、都心まで30分以上を要するホテルが安価でかつ空席がある。その中で、注目したいのが志木だ。志木は東武東上線にあり、急行停車駅だ。また、新宿へは東京メトロ副都心線乗り入れ列車に乗れば、1本でアクセス可能だ。

ちなみに、東武東上線沿線に東横インは比較的多く、志木周辺だと北朝霞、和光市にもある。北朝霞、和光市も1泊8000円前後であり、東武東上線は穴場といった感じだろう。

なお、先述した埼玉県のリストでは東横イン浦和美園駅東口店が最安値となり、1泊7,100円だ。ただし、都心までの交通費が高い。浦和美園~四ツ谷間は732円(交通系ICカード利用)だ。一方、志木~池袋間は324円、志木~新宿三丁目間は430円となる。

このように、電車移動の場合は宿泊費だけでなく、都心までの交通費も決め手となる。一般的に埼玉高速鉄道やつくばエクスプレスといった新興路線は運賃が高い。できれば、JR線や大手私鉄沿線を狙いたいところだ。

今まで、ホテルサイトを中心に宿泊費を調査したが、やはり限界があるのも事実だ。最後は出張者同士の口コミが頼りになりそうだ。とはいえ、だいたいの傾向は見えてきたので、大阪や京都といった他都市でも独自調査をしていきたい。

著者:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 

参照元

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