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ベルリン・ロンドン・パリ・ニューヨーク、そして東京。データで見る世界の大都市の賃貸事情(と一般市民の悲鳴)

         

筆者が現在住んでいるベルリンは、基本的に住環境のいい街です。緑が多く、首都だから交通の便がいい。人口密度も高くない。

しかし、こうした好条件を台無しにする大きな問題が……。

それはアンバランスすぎる賃貸市場。現時点でベルリン中心部の賃貸アパートの入居率は98%と、超貸し手市場です。それなのに人口は年間5万人ペースで増えていきます。結果、ひとつの物件の公開内見に100人以上の人が来ることもザラ

ベルリンに長年住む人たちが口を揃えて言うのは、「7~8年前は誰でも簡単に家を借りられた」ということ。ヨーロッパの経済危機からの移民急増、スタートアップ企業の隆盛、不動産バブルといった要因が絡みあって、短期間のうちに空前の住居不足に陥りました。

実は筆者も今月末に現住居を退居予定で、長いあいだ家探しをしていたのですが、先日ようやく契約までこぎつけました。かかった期間、丸2ヶ月

しかし、世界各地の大都市に住む友人たちによると、これでもベルリンはまだマシな方だとか。そこで世界の大都市の住宅事情を比較してみました。

ロンドン


ロンドン33区のうち都心に当たるInner Londonの13区は、世界中の投資家のターゲットになり、土地や建物の買収が進んでいます。中でもウェストミンスター区とケンジントン・チェルシー区は1ベッドルームの価格が1億円を超えるそう。こういった物件には一般市民が住むことはなく、資産として取引されるのみです。

結果ロンドンの都心(地下鉄のゾーン1~3)には投資対象の空き家コンドミニアムが溢れ、コミュニティの空洞化が進んでいると言います。

イギリス人の友人アリスは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の博士課程に在籍中。大学キャンパスはロンドン中心部のブルームズベリーにありますが、アリスはゾーン4にあるシェアアパートに住んでいます。親がよほど裕福でない限り、学生の身分でゾーン1~3に住むのは不可能に近いとのこと。それでも月の家賃は600ポンド(約8万2千円)。

「博士号を取ったらすぐどこかに移住する」とアリス。「ロンドンは生活コストが高すぎて息苦しい」。

パリ

パリのアパルトマンの特徴は、その小ささ。特にサンジェルマンやオペラなどの中心部となると、15㎡以下のアパルトマンもざらです。(シェアアパートの1部屋ではなく、アパートです)それほど小さくても家賃は800ユーロ/月が相場という高騰ぶり。

ロンドンと違うのは、まだ都心に一般市民が住んでいる点。低収入世帯が郊外に押しやられている状況は同じですが、投資家による買い占めが進んでいるわけではありません。高収入でないと住めないだけです。

また街全体が美術館と言われるパリでは、景観保護の理由からひたすら古い建物を修理して使い続けています。そのため特に水回りのトラブルが多いというのは有名な話。

パリから電車で40分ほどの郊外にある実家で暮らす友人のジョランは、パリでシェアアパートに住んでいた時期もありましたが、家賃の高さに音をあげて実家に帰ったそう。一度彼がベルリンに遊びに来た際、著者の当時の37㎡のアパートを見て「パリなら3人で住む広さ」と言われ驚きました。

ニューヨーク

世界中の才能と野心家が集まるニューヨーク。アメリカの光と影が凝縮された街です。成功者がマンハッタンの億ションに住む一方、一般人は上昇し続ける家賃に悲鳴を上げています。

ニューヨークには、こうした借家人を保護するための「家賃規制法(Rent control)」という法律があります。家賃規制の対象となった地区や建物では、家主は好き勝手に家賃を値上げできません。

ただしこの制度には大きな抜け穴がいくつかあります。例えば現在のテナントが退去すれば、家賃を20%まで値上げできるというVacancy control。もちろんこの制度を濫用しようと、現在のテナントに難癖をつけて追い出す家主が後をたちません。

ニューヨークのマンハッタンの家賃規制のあるアパートに住む友人、エドワードによると、現在ニューヨークの家賃規制法は大きな過渡期を迎えているそうです。

「これまでは州議会の上院で共和党が大勢を占めていたから、下院で民主党が通した借家人保護法が上院で繰り返し棄却されていたんだ。でもこのあいだの選挙で両院とも民主党が優勢になったから、今が家賃規制法を改正するチャンスだよ」

もちろん貸主たちは猛反発。2019年6月に現在の家賃規制法が失効したあと、テナントに有利な法改正が制定されるのか、ニューヨーク中の注目を集めています。

そして、われらが東京

過去23年間連続で人口が増え続け、現在の常住人口は約1385万人の東京都。増加傾向は2025年まで続く見込みです。

しかし面白いのが、都心の空き家率の高さ。港区12.9%、新宿区12.2%、渋谷区12.1%と、全国平均の13.3%とそれほど変わりません。

こうした人気の居住エリアで空き家率が目立つのには、他の地域とは違う特殊な事情があります。新築マンションの建設ラッシュの一方で、老朽化した賃貸物件に借り手がつかず、長期間空き家と化すケースが多いのです。

東京23区の家賃は一時的な下げはあれど、全体的には緩やかな上昇を見せています。

新築マンションが家賃を押し上げる反面、空き家率が高いという矛盾を見せる東京都心。2025年以降都内人口は減少に転じる見込みですが、それが不動産や家賃相場の下落に繋がるのか見ものです。

新興国にも住宅難が?

今後はアジア・アフリカを中心に都市部への人口集中が進み、2050年には世界の人口の7割が都市部に住むようになるという国連報告があります。

現在首都圏人口1位は東京の3700万人ですが、2028年にはニューデリーに抜かれる見込みだとか。今回は先進国の各都市の住宅事情を比較しましたが、今後は新興国での住宅事情に注目が集まっていくのかもしれません。

【参考リンク】
Tenants May Get More Protections in New York City, After Decades of Battles. Here’s Why. 
全国で深刻化する空き家問題 東京都心で空き家が放置される理由

佐藤ちひろ

 
データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

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