カメムシの生息地の変化がスマホでわかる!?データ収集と調査研究の新しいカタチ! | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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カメムシの生息地の変化がスマホでわかる!?データ収集と調査研究の新しいカタチ!

         

「見たことのない外来種のカメムシが自宅に来る?」

そんな話題が先日ニュースになっていました。虫嫌いの人にとってはバッドニュースですが、これはとあるスマホアプリによる調査で明らかになったもの。そのアプリの名は『Biome(バイオーム‪)-いきものAI図鑑』と言い、生き物をスマホで撮影すれば、AIによってその生き物の名前を返してくれる優れものです。このアプリを用いて行われた実証実験が、生き物の生息地から地球温暖化の影響を調べる「気候変動いきもの大調査」。のべ1万7000人超のユーザーが参加しました。

この調査結果では、もともと東南アジアを中心に生息する外来種「キマダラカメムシ」が、なんと関東北部まで北上していることが明らかになりました。このままだと東北地方にも広がる可能性も高いそうです。地球温暖化の影響もこんなところまで来ているのか、と実感させられるニュースです。

このスマホアプリのように、遊びながらできる”参加型企画”によって、新たなデータが集積されていく。それが、昨今のデータ収集のトレンドになってきています。

マンホール収集ゲームがもたらした”副産物”

以前、渋谷で行われた「マンホール聖戦@渋谷」。

アプリに映し出された地図上のマンホールをスマホで撮影、それをアップすることで個人や団体でポイントを競うゲームです。ただのゲームと思いきや、思わぬ副産物を生みます。それがマンホールの位置の把握です。競争に駆り立てられた参加者たちにより、東京都の下水道台帳に載っていないマンホールが多数発見されたのです。

マンホールの耐用年数は車道では15年、歩道では30年だそうで、劣化したマンホールは新しいものに交換する必要があるため、都としては全てのマンホールの位置を正確に把握しておく必要があるものの、調査にはかなりの時間と費用がかかる、ということで、ゲームとして多くの人に参加してもらうことでデータを集める、という画期的なアイデアが生まれたのだそうです。

アプリ参加者は、知らず知らずのうちにマンホールを監視し、そのコストを大幅に減らしたのでした。余談ですが、世の中にはマンホーラーと呼ばれるマンホール愛好家の方が結構いらっしゃるようで、マンホールサミットなるイベントも開催されているそうです。

雲の写真の投稿募集をはじめたNASA

この動きは、なんとあのNASA(アメリカ航空宇宙局)でも。

NASAは、スマホで撮影した雲の写真を一般人から広く募集する企画を行いました。これは「Citizen Science Cloud Observation Challenge」という企画で(現在は終了)、単にテレビの天気予報の一企画ではなく、ちゃんとした目的があって開催されています。NASAは、「雲及び地球放射エネルギー観測装置(CERES)」という機器を用いて雲を観察しています。しかし、CERESだけですべての雲の種類を認識することは難しいため、一般の方に写真を送信してもらい、CERESでとらえた衛星画像と地上から撮影した一般人の画像を一致させてCERESの精度向上に努めているとのこと。精度が上がれば、より正確な気象情報が期待できそうですね。

この雲のプロジェクトは「GLOBE」と呼ばれるプログラムの一環。雲の観察のほかにも、水質や土壌などあらゆる分野の調査に導入されているといいます。特に2017年には、ジカ熱やテング熱などを媒介する蚊についての研究に導入されました。蚊の生息地などのデータを世界で一斉に集めることで、研究者では限界があった世界レベルでのデータ収集を可能にしています。これにより、世界各地の衛生状況改善に活用されています。

あの『ポケモンGO』が、災害時に大活躍!?

位置情報を使って一大ブームを巻き起こしたのが、『ポケモンGO』。読者の多くの方も、一度はプレイしたことがあるのではないでしょうか。このスマホゲームは、ポケストップと呼ばれるランドマークを観光地などに設置させることで、人の移動を活発化させることに成功しました。しかし、単なる町おこしだけがこのゲームの有効性ではないのです。実は、自治体にとっても好都合な理由がありました。

自治体は、災害用の地図などを個別に作っています。しかし実際のところ、そのような地図には統一感がなく、自治体ごとにバラバラになっています。その結果、自治体をまたいで避難する人にとっては非常にわかりづらいものになってしまっています。もし1つの地図を複数の自治体が共有できれば、避難者に優しい地図になるはずです。そこで『ポケモンGO』が大活躍します。同ゲームでは基本的に1つの地図上を移動するため、災害時用の統一マップとしての側面を持つことも考えられるのです。ゲームと侮るべからず。将来的には人々を救うかもしれないプラットフォームなのです。

まとめ:ちょっとした工夫が大事

以上、遊びながら気が付けば調査研究の一助となっている事例をいくつか取り上げてみました。

プレイヤーが多ければ多いほどより精密なデータが出るため、運営側もより面白いゲームにする必要はありそう。しかし、従来の研究者だけでは成し得なかったところまで明らかになるのはメリットしかないですね。マンホール集めの例のように、必要なのはちょっとした工夫。四角い頭を丸くして、仕掛けていく必要がありそうです。

【参考記事】
・外来種カメムシが北上中…あなたの家に来ちゃうかも?1万個超のマンホール撮影を3日でクリア。「マンホール聖戦@渋谷」が目指すすごい未来とはデジタル:えっ、NASAが雲の写真を募集中? スマホから送るだけで解析に協力できる(GetNavi web)自治体が伝えたいことが、ポケモンGOならうまく伝わる

(安齋慎平)

 
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