オンライン決済サービスを展開する「ペイパル」をご存知でしょうか?2019年10月現在、世界で2億5000万人以上のユーザーを保有する世界最大級の決済サービスです。
日本でもキャッシュレス決済でのポイント還元などの取り組みが進む中で、今後さらに普及していくであろうサービスの一つと言えるでしょう。
一方で、ペイパルの“凄さ”はサービスのみに止まりません。ペイパルの共同創業者でトランプ大統領陣営の技術顧問を務めるピーター・ティール、ユーチューブの共同創業者のチャド・ハーリーにスペースXやテスラを手がけるイーロン・マスクなど、ペイパルが輩出する起業家、投資家も凄腕ばかり!
ペイパルが輩出した名うての起業家、投資家たちはその繋がり強さからペイパル・マフィアと命名され、シリコンバレーを中心にその影響力を発揮しています。
そこで、今回は、ペイパル・マフィアについて、そしてペイパル・マフィアがなぜこれほどまでに強大な存在になれたのか、その秘密に迫ります。
ペイパル・マフィアを語る際に欠かせない存在が、ペイパルの共同創業者であるピーター・ティールです。彼は、2002年にペイパルがイーベイに売却されたタイミングでペイパルを去りましたが、その後も起業家、投資家としての実力を発揮。特に、生まれたてのフェイスブックに約50万ドル(約5億円)を投資、その結果、10億ドル(約1000億円)のリターンを手にしたことでも知られています。
また、2016年の大統領選で、シリコンバレーで圧倒的に不人気だったトランプの支持を表明し、当選後は技術顧問として暗躍、一部では、「影の大統領」とまで呼ばれているのです。
圧倒的な先見の明と独自のリーダーシップを持つ彼を、人々はペイパル・マフィアのドン、と呼びます。
さらに、ペイパルが産んだ起業家は両手で数えきれないほどいますが、その中でも特に有名なのが、ユニコーン企業となる8社を創業した人々。彼らは、ペイパル・マフィアの重鎮として今なお強い繋がりを持っています。
ユニコーン企業とは、創業10年以内で未上場、さらに企業評価額が10億ドル(約1000億円)を超えるテック企業のことで、空想上の生き物、ユニコーン並みに珍しい、ということでついた名称です。そんな「ユニコーン」を8社も生んだ…、これだけでペイパル・マフィアの凄さが垣間見れたと思います。
ここで、数々のユニコーン企業の立役者となったペイパル・マフィアたちを紹介します。なお時価総額は2019年10月時点の価格です。
ピーター・ティールが哲学者のアレックス・カープとともに立ち上げたシリコンバレーでもっともミステリアスなスタートアップ、 パランティア・テクノロジーズ。ビックデータを駆使したデータ解析を専門とし、あのCIAも顧客となっているほど高い技術力を持っていますが、その内情は謎に包まれています。
2004年にペイパルの共同創業者の一人であるイーロン・マスクは、もともとペイパルの前身であるコンフィニティの同業他社であるX.comの共同創業者として、ティールにとってライバル的存在でした。しかし、業界をより成長させるため、コンフィニティと合流し、ペイパル・マフィアに仲間入りしました。
「テスラ」は電気自動車や関連商品、自律型自動運転車、ソーラーパネルなどの開発を行うテック企業として知られており、他方の「スペースX」は宇宙開発事業を行なっています。
日本では、スペースXが主導する民間の月旅行に前ZOZOの社長で、スタートトゥデイの創業者・社長の前澤友作が名乗りを上げ話題を呼びました。
ペイパル開発の最初期から事業に加わり、共同創業者として、CTOとして長年サービスを支えてきたマックス・レヴチンが2012年に創業したのが、キャッシュレスで後払い(分割払い)できるフィンテックサービスのアファームです。キャッシュレスサービスが注目を集める中とはいえ、創業から5年足らずの2017年にユニコーン入りとはさすがの実力と言えるでしょう。
ティールのスタンフォード大学時代からの旧友でペイパルの共同創業者の一人であるリード・ホフマンは、2002年にビジネス特化型のSNS「リンクトイン」を創業しました。また、エンジェル投資家としても活躍し、シリコンバレーでもっとも成功した投資家の一人として挙げられています。
言わずと知れた動画投稿プラットフォームのユーチューブ。創業からわずか18ヶ月で行われた10億ドル円規模の買収劇にシリコンバレーを震撼させましたが、今やその評価をはるかに凌駕する結果を見せてくれています。また、買収されたとはいえ、グーグルブランドに飲み込まれることなくユーチューブという名前を押し出す姿勢を保ち続けています。創業者の三人はいずれも元ペイパルの従業員。チャド・ハーリーはペイパルのロゴ設計にも関わりました。
ローカルビジネスの口コミサービス、イェルプの創業者のジェレミー・ストップルマンは、早々にSNSの可能性に着目。フェイスブックができた半年後にイェルプを立ち上げました。立ち上げにあたりペイパル時代の上司、マックス・レヴチンも投資家として支援したそう。その後、グーグルやヤフーといったIT界の巨人たちからの買収に「NO」を突きつけ、2012年にはIPO(新規株式公開)を果たし、若き成功者の一人となりました。
企業版Twitterとして呼び声の高かった企業内SNSツールのヤマー。創業者は、ペイパルでCOOを勤めていたデビッド・ザックスです。2008年9月にミニブログサービスとしてローンチされ、着実にユーザーを増やし、創業から4年目に米マイクロソフト社によって10億ドル規模の買収を受けました。現在はOffice 365の機能の一環として多くの企業で活用されています。
初期のペイパルの社員は、ヘッドハンターを介さず初期からサービスに携わったピーター・ティールやマックス・レヴチンの友人や、彼らが卒業した大学の関係者から集めた人材ばかりだったそう。現に、当時について、 ピーター・ティールは以下のように語っています。
「僕らがペイパルを立ち上げたとき、マックスとこんな会話を交わしたことを覚えています。会社に何があっても壊れない友情で結ばれた、メンバー全員がよい友人である会社をつくりたいってね。僕らが雇ったのは、もともとの友人たちだけではありません。よい友人になると信じられる人を雇っていったんです」
(トーマス・ラッポルト『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』)
そして、社員としての雇用条件として「友情」を重視したことが、結果的に、それぞれの成功へと繋りました。
固い友情を築いた彼らは、時に投資家として、時に技術者として、時に経営ブレーンとして、互いに支え合うことで、着実に事業を成長させることができたのです。
ペイパルがイーベイに買収されてから20年近くが経った今も、ペイパル・マフィアの勢いは衰えることはありません。
様々な成長事業を運営する彼らが今後どんな新しい世界を作り上げていくのか、今後ともぜひ、注目してみてください!
【参考サイト・文献】 ・長距離ランナーの瞬発力 ジェレミー・ストップルマン ・LinkedIn - Wikipedia ・マックス・レヴチン - Wikipedia ・チャド・ハーリー - Wikipedia ・ペイパルマフィアが創業の決済企業「Affirm」が新ユニコーンに ・PayPal創業者率いるフィンテックAffirmに約1600億円の増資観測 ・Yelp - Wikipedia ・マスク氏のスペースX、5億ドル調達へ 評価額は305億ドル - WSJ ・【電子版】米テスラのマスクCEO、非上場化を検討 実現なら過去最大のLBOに ・時価総額4兆円級! CIAも頼る“謎”のメガベンチャー:日経ビジネス ・未公開テック企業、企業価値ランキング トップ26 ・YouTube買収額決定の経緯とグーグルの意図---明かされた10億ドルの上乗せ ・Microsoft、企業内TwitterのYammer買収を確認―価格は12億ドル ・David O. Sacks - Wikipedia ・トーマス・ラッポルト『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』
(大藤ヨシヲ)
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