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次回は2021年に大発生。 氷河期を生き延びた「素数ゼミ」の驚きの生存戦略

         

それ自身と1以外で割れない数字、素数。2、3、5、7、11、13、17、19、23…と続き、最大では2000万桁以上のものも発見されています。数学者の世界では、素数の研究をしている人はスター級の数学者である、なんて話も耳にしたことがあります。2016年には2233万8618桁の素数が新たに発見されたそうです。

今回はそんな魅力あふるる素数の世界のお話です。素数の年 ――具体的には13年と17年に一度の周期で大発生する「素数ゼミ」と呼ばれるセミがいるのをご存知でしょうか?(周期セミと呼ばれることもあります。)

日本の数理生物学者である吉村仁教授(静岡大学)が発見した、素数ゼミの驚きの生存戦略をご紹介します。

 氷河期を生き残るために土の中で過ごす時間が長くなったセミ

地球上にセミが登場したのは、なんと2億年以上前と言われています。多様な生物が存在し、恐竜も闊歩していた頃です。

比較的温暖な気候だったこの頃は問題なかったのですが、それから何度かの氷河期を経た200万年前にはセミが土中にいる時間がとても長くなっていったと見られています。

氷河期で多くの生物が絶滅するなか、北米のある地域では暖流や地形の影響であまり気温が下がらないところがあり、セミたちはその土地で10年以上かけてゆっくりと成長し、成虫になっていったそうです。

しかし、長い年月を経てようやく地上に出ても周囲に交尾可能な異性がいなければ意味がありません。生息範囲が狭い範囲に限られているのならなおさらです。バラバラの年に少数のセミが地上に出ても繁殖できずに結局、絶滅してしまうのです。

さらに、セミが土中にいる期間は種によってさまざまですが、それらが交雑するとせっかく合っていた周期が乱れて次世代が後尾の機会を得にくくなってしまうのです。

素数ゼミが繁栄したポイントは「最小公倍数の大きさ」

たとえば、14年ゼミと15年ゼミが交雑すると、その子どもが土中にいる期間は15年になるかもしれませんし、14年になるかもしれません。結果として、長い時間をかけて交雑が続き、種が絶滅してしまいます。

そこで素数ゼミの登場です。

たとえば、12年と18年のセミはその最小公倍数である36年に1度、同じ年に地上にでて交雑してしまいます。素数ゼミはその問題を解決しているのです。

 実際に計算してみましょう。 

データのじかん編集部作成

12年〜18年の周期で地上に出てくるセミが何年周期で交雑することになるかを表にしました。

この表では、13年と17年が素数、つまり素数ゼミです。

緑色になっているセルを見ると、素数ゼミは交雑の周期が他と比べて長いことがわかると思います。

さきほど、18年ゼミと12年ゼミは36年単位で交雑すると書きましたが、18年ゼミと17年ゼミ(素数ゼミ)ではなんと306年に1度しか交雑しません。もっとも周期の短い13年ゼミ(素数ゼミ)と12年ゼミでも、156年に1度だけです。

これは、複数の数字に素数が含まれると最小公倍数が大きくなるという特性によるものです。偶然か意図的にか、この特性を利用して素数ゼミは交雑を避け、13年と17年に1度、いっせいに地上に出て同じ種と交わって子孫を残すことで繁栄してきたのです。

数字のマジックを巧みに利用する素数ゼミ

寒さの影響で土中で過ごす時間が長くなり、しかも狭い範囲でしか繁殖できなかった氷河期を、素数ゼミは数字のマジックを利用して生き残りました。いまでも13年と17年に一度、北米で大量発生してニュースになっています。

この素数ゼミの特性は、冒頭で紹介した吉村教授が解明するまでは「謎」とされていました。しかし、教授は丹念な研究と計算によってその理由を読み解いたのです。

 私たちが日常的に接するウェブのアクセス数などの数字にも、必ず理由があります。素数ゼミの謎が解明されたように、丁寧な分析で原因を究明することが問題解決の糸口になることでしょう。

【参考記事】
 https://tenki.jp/suppl/romisan/2016/08/18/14811.html
 http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/omr/vol65/mathematical/

(塚岡雄太)

 

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