まいどどうも、みなさん、こんにちは。
わたくし世界が誇るハイスペックウサギであり、かのメソポ田宮商事の日本支社長、ウサギ社長であります。春のうららかな日差しに誘われて、先日わたくしが湖のほとりをホートランランラと散歩しておりましたところ、これまでに見たことのない生命体に遭遇しまして、腰が抜けるほど驚いたという事件がありました。今週はその遭遇事件とそこから見えてきた世界についてお話ししてみたいと思います。
さて、わたくしに衝撃を与えたその生命体は見たところあきらかに鳥類の特徴に一致する風貌でありまして、白鳥と呼ばれる渡り鳥の一種のようにも見えました。白鳥であれば、わたくしも目撃したことが幾度となくありますので、それほど驚くことはありません。しかし、驚くべきことにこの白鳥のように思われる鳥の色はなんと黒だったのです。美しい黒の羽毛に包まれたその鳥のクチバシはこれまた優美な赤い色をしており、黒と赤のコントラストが見事な美しさでありました。満開に咲き誇る桜の花びらの下に佇む白鳥のそれに勝るとも劣らぬその美貌はこの世のものとはにわかに信じがたい強烈なオーラを周囲に撒き散らしておりました。まさかこれは、黒い白鳥!?とさっきまでホートランランラ状態だったわたくしの認知能力は瞬時にバグってしまい、バグったウサギなのでなんならBugってバニー状態に陥ってしまったわけです。白鳥というのはみなさまもご存知の通り、そして読んで字の如し「白い鳥」であります。ですから、この黒い白鳥のように見える鳥がもしも実際に黒い白鳥であれば、たった二つのシンプルな単語をつなぎ合わせるだけで疑う余地のない完璧な矛盾状態を醸し出していることになります。名作アニメBugってハニーを生み出した高橋名人もビックリです。これは人類史上もっとも効率的な矛盾の生み出し方かも知れません。
湖のほとりを闊歩する黒い白鳥のような生命体の近影 (ウサギ社長撮影)
この生命体について深掘りする必要性を感じたわたくしはすぐさまはこの生命体の写真を持っていたiPhone13を使って撮影し、日頃から熊の研究などに余念がない動物に詳しい友人に送信し、この鳥は一体何?とLINEメッセージを送り尋ねてみました。するとすぐに返信があり、「それはブラックスワンである」との回答を頂きました。ブラックスワンとは、つまり黒い白鳥のことであり、日本語では「黒鳥」と呼ばれるそうなのです。このような鳥がこの世界に存在していることを知らなかったわたくしは突然の遭遇に思わず言葉を失ってしまったほどです。白いカラスの存在については認知していましたが、黒い白鳥との邂逅はまさに不意打ち、晴天の霹靂、寝耳に水、驚天動地、まさに足元から鳥が立つような出来事でありました。
そして、未知との遭遇に衝撃を受けたわたくしは帰宅するやいなや、ブラックスワンについて調べ始めました。わたくしが調査したところによると、このブラックスワンは、カモ目カモ科ハクチョウ属に分類される鳥類であり、オーストラリアのほぼ全土に生息する固有種なのだそうです。オオハクチョウのような渡り鳥とは異なり、大陸間を移動することはなく、季節や環境の変化に合わせて近距離の移動を行う漂鳥と呼ばれる種類の鳥なのだそうです。
さらに調査を続けていくと、英語には「黒い白鳥を探すようなものだ」という喩えがあり、これは「無駄な努力」を意味する言葉だった、ということを知りました。長い間、ヨーロッパでは白鳥は白いものであり、黒い白鳥など存在するわけがない、と考えられていたわけです。しかし、1697年にオーストラリアでブラックスワンがヨーロッパ人によって発見されたちまち大騒ぎとなったそうです。わたくしもにわかにパニック状態に陥りましたので、これは容易に想像できます。これにより、ブラックスワンの意味は無駄な努力、ではなく、常識だとされていたことが間違っていた、などのような、いわゆる常識を覆すような想定外の事態を意味するようになりました。2025年を生きているわたくしもびっくり仰天したくらいですので、300年以上前の方々はさぞかし驚きになったことでしょう。
そこから、ブラックスワンという言葉は過去の経験や統計、常識からは予測できないような極めて稀で大きな影響を及ぼす出来事を示す比喩として金融業界や世界情勢を表す言葉としても使われるようになりました。そして、認識論学者ナシーム・ニコラス・タレブ氏が、常識を覆すような出来事やその影響の大きさを説明する「ブラックスワン理論」を提唱しました。ブラックスワン理論は「事前予測が極めて困難である」「発生すると社会や経済などに極めて多大な影響や衝撃を与える」「事後的に、実は前兆があり予測可能だったのではないか?と解釈されがちである」という特徴を有しているのだそうです。ブラックスワン理論の例としては、2008年のリーマンショック、COVID-19のパンデミックなどが代表的ですが、経済や金融以外でも自然災害や政治的出来事にも前例のないことが起きた時に使われることが増えてきています。トランプ氏が再び大統領選に勝利したこともブラックスワン理論の「事前予測が極めて困難な事象」の例として挙げられます。それに紐づいた現在のトランプ関税ショックもそういう意味ではそのブラックスワンの副産物と言えるでしょう。
ブラックスワン理論が指す「過去の経験や統計からは予測できないが、発生すると極めて大きな衝撃をもたらす出来事」というのはつまり過去のデータだけでは説明し得ないことが未来には起こる、ということであり、データは役に立つものではあれど決して全てではない、というデータのじかんが立ち上げ当初から発信してきたメッセージと相違ないものであるわけであります。このVUCAと呼ばれる予測不可能な世界を生き抜くわたくしたちは、事前予測ができないことが起こることについて、予測はできないにせよ、覚悟をすることはできるわけです。このブラックスワン理論から学ぶべきは「具体的な事象を予言することに時間を割くのではなく、そのような事象が起きた時のダメージを最小化する『強靭性(ロバストネス)』を組織やシステム、あるいは社会に持たせることが必要不可欠である」ということです。レジリエンスなどの考え方にも共通していると思いますが、重要なのは攻撃を受けないようにすることではなく、攻撃を受けることを前提としたシステムをあらかじめ構築しておくことです。タレブ氏曰く、「壊れるべきものは壊すことで全体が強くなる」わけですので、常日頃からリスクを分散するために多角的な戦略を練っておいたり、随所にバックアップルートを用意しておくことがいざという時の明暗を分けることになるわけであります。
つまり、今回のわたくしのように湖のほとりをホートランランラと歩いているとブラックスワンに遭遇するというのも予測不可能だったことであり、それを起点としてブラックスワン理論についてこのように論じることになる、というのも予測不可能だったことであり、まさに犬も歩けば棒に当たる、ウサギが歩けば黒い白鳥に出逢う、というようなことはそこいらじゅうにあるわけですので、みなさまに置かれましても、気負うことなくなるべく不用意に、特に深く考えることなく湖のほとりなどをホートランランラと歩いてみられることをオススメしたいと思います。そんなわけで今週はブラックスワンについて、そしてブラックスワン理論について取り上げてみました。ちなみに、ホートランランラの表記は「おおブレネリ」の歌詞によると、正しくはホトゥラララ、なのだそうです。そして、本当かどうか確信は持てませんが、おおブレネリの曲はスイスではなんとほとんど知られていないそうです(笑)。
そんなわけでそれでは、また来週お会いしましょう。ちょびっとラビットのまとめ読みはこちらからどうぞ!それでは、アデュー、エブリワン!
(ウサギ社長)
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