ガリガリ君は“やり手ビジネスマン”? その成長の背景にある巧みなマーケティング戦略を紹介 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
会員ページへmember

About us データのじかんとは?

ガリガリ君は“やり手ビジネスマン”? その成長の背景にある巧みなマーケティング戦略を紹介

         

暑い夏、食べたくなるのはアイス。その中でも大勢に愛されているロングセラー商品と言えば赤城乳業の「ガリガリ君」ですよね。2022年に41周年を迎えたガリガリ君ですが、その成長の背景にはデータを活用した、巧みなマーケティング戦略がありました。

本記事では、ガリガリ君にまつわるデータを紹介するとともに、その秘密の一端をご紹介します!

売り上げ4億本! 人気ランキング2位! ガリガリ君は“やり手ビジネスマン”

みなさんはガリガリ君にどんなイメージを持っているでしょうか?

「子どものころ好きだった!」「安くて手ごろなイメージ」などが大勢を占めるのではないでしょうか。しかし、ガリガリ君にはそのパブリックイメージとは異なる顔も存在します。

──それは、“やり手ビジネスマン”としての顔。

以下の、「ガリガリ君販売本数推移」のグラフをご覧ください!

ガリガリ君販売本数推移(単位=万本)

引用元:ガリガリ君が40歳 “永遠の小学生”戦略でロングセラーに┃日経XTREND

1993年に5,000万本を割り込んでいた販売本数は順調に拡大を進め、2012年に4億本を突破。2013年にピークを迎えるものの、2020年時点で4億円規模を堅調に維持しています。

さらに人気もすさまじいのがガリガリくん。2021年、CCCマーケティンググループが全国15~69歳、7,000万人のT会員を対象に行った『アイスの男女人気総合ランキング』でガリガリ君の順位は堂々2位(ちなみに一位は「明治 エッセル スーパーカップ」)でした。


アイスの男女人気総合ランキング


引用元:【1歳刻み!7,000万人の購買商品ランキング】「アイス」男女総合ランキング!堂々の1位は明治「エッセル スーパーカップ」~「ハーゲンダッツ」と「パピコ」はライフステージの変化でランキングが2回入れ替わる?~┃PRTIMES

イガグリ頭に大きな口、といかにも小学生男子が好きそうな見た目のガリガリ君ですが、その実態は老若男女問わず誰しもに愛される超ヒット商品なのです。

ガリガリ君成長の背景にあるマーケティング戦略とは?


なぜ、ガリガリ君はこのような高成長を達成することができたのでしょうか?

その背景には巧みかつ時代の先を行く「マーケティング戦略」があります。

そもそもガリガリ君が誕生したのは1981年のこと。その背景にあったのは1979年のオイルショックだといいます。原料高に押されて各社がアイスクリームの値上げを実行。かき氷商品「練乳しぐれ」を主力商品としていた赤城乳業も50円の値上げに踏み切った結果、売り上げが伸び悩み、大きな危機に陥ってしまいました。

そこで起死回生の新商品として生み出されたのが「ガリガリ君」なのです。ここで特筆したいのが、まだアイスは町の駄菓子屋さんで買うのが当たり前の時代に、販売チャネルとしてコンビニエンスストアにいち早く着目したということです。

その理由として最も大きかったのが“コンビニからは一般小売店からは得られないPOS情報、販売データが入手可能”ということ。この時点から“ガリガリ君”はデータ活用を見据えた販売戦略に取り組んでいたのですね。

消費者に受け入れられたガリガリ君は2000年には販売本数1億本を突破します。

そこから4億円突破までの大躍進の立役者が、同社のマーケティングをたった一人からはじめ、牽引し続けてきたマーケティング部長の萩原史雄氏です。そもそもガリガリ君の販売戦略に不満を持ち、勝手に販促活動に取り組んでもいたという萩原氏。

営業からマーケターに主軸を移した2004年から、萩原氏によるガリガリ君の“楽しい”ブランディング戦略がはじまります。

その例は、以下の通り。

・ソーダ、コーラ、グレープフルーツなど色とりどりの商品ラインナップを並べた「ガリガリ君レインボー売り場」
・仮想の部活動(ファンクラブ)「ガリガリ部」の立ち上げ、そこでの新パッケージ募集
・アイスが売れない冬限定商品、ガリガリ君の妹「ガリ子ちゃん」発売
・『コーンポタージュ味』『クレアおばさんのシチュー味』『ナポリタン味』など変わり味の販売
・10円の値上げに対するお詫びCMの放映

マーケティングジャーナル掲載の論文にて、その取り組みの特徴は以下の3つのフレーズで表現されています。

1.多量性
2.多面性
3.継続性

上記にとどまらない、数多くのマーケティングアイディアを大量に形にし、さらにその対象は新商品発売や売り場づくりのようにスタンダードなものから、“値上げ”を逆手に取った話題作りまで多面。さらに、毎年のように新たな取り組みが継続して行われています。

萩原氏自身、2004年~2009年までの急速な伸びの原因について、不発に終わった企画を改良して翌年に再チャレンジしブレイクスルーを達成するなど継続した取り組みが行えたからだと自身の講演にて発言しています。

販売数や顧客の反応に関するデータは、マーケティングの継続性を担保するためのカギとなります。また、萩原氏の販促のアイディアの源泉にも「旧キャラクターへの印象調査結果」「学生時代と社会人の間に“ガリガリ君離れ”が起こってしまうことを示すデータ」などがあり、当初から重視されていた“データの力”が今に至るまで存分に生かされてきたことが推察されます。

アイスの男女人気総合ランキングトップ10に見る、ガリガリ君の“低カロリー”ぶり

ガリガリ君のマーケティングにおける秀逸さについてここまで見てきました。
加えてご紹介したいのが、その“カロリー面”における秀逸さです。

先ほどCCCマーケティンググループによるアイスの人気ランキングをご紹介しました。そのトップ10のカロリー、分量、1mlあたりのカロリーをまとめたのが以下の表です。

アイスの男女人気総合ランキングトップ10のカロリー表


※各メーカーの公式サイトとFatSecretの情報をもとに筆者作成。

ご覧の通り、ガリガリ君ソーダの1本当たりのカロリーは64kcal1mlあたりに換算すると約0.61kcal/ml。さすがに“かちわり氷”の商品であるアイスボックスには負けますが、同様にかき氷商品にあたるサクレレモンよりも1mlあたりのカロリーが低いというのは驚きではないでしょうか。

もちろん、ほかのバニラやチョコを使った商品とは大差をつけて、その低カロリーぶりを誇示していますね。

「ガリガリ君自身は決して“ガリガリ”ではない体型だよなー」と以前から思っていたのですが、ガリガリ君は食べる人を“ガリガリ”にするのを助けると考えれば、まさに名は体を表していますね(※)!

※実際は、かき氷を食べる際の「ガリガリ」という音から名づけられたそうです。

終わりに

ぜひ見習いたい、ガリガリ君の意外な一面についてご紹介してまいりました。

もはやガリガリ君はイチ食品にとどまらず、キャラクター商品として多数展開されており、IP(知的財産)としても立派に独り立ちしています。

先の見えないVUCAの状況下で、固定観念にとらわれないその姿勢を見習って、自社の取り扱う商品やブランドを育てていきたいものですね!

【参考資料】
・【1歳刻み!7,000万人の購買商品ランキング】「アイス」男女総合ランキング!堂々の1位は明治「エッセル スーパーカップ」~「ハーゲンダッツ」と「パピコ」はライフステージの変化でランキングが2回入れ替わる?~┃PRTIMES
・岩井 琢磨、牧口 松二『4 億本を売り上げる,赤城乳業の『ガリガリ君』マーケティング』┃Japan Marketing Academy
・ガリガリ君のカロリーの低さは異常┃life hacker
・ガリガリ君が40歳 “永遠の小学生”戦略でロングセラーに┃日経XTREND
・赤城乳業株式会社 営業本部 営業統括部マーケティング室 次長ガリガリ君プロダクション プロデューサー 萩原史雄 特別記念講演「ガリガリ君物語 ―1981 年誕生から現在まで、大切にしているコト―」┃大阪商業大学
・赤城乳業公式HP

宮田文机

 
データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

データのじかん会員なら、
全てのコンテンツが
見放題・ダウンロードし放題
データのじかん会員でできること
  • 会員限定資料がすべてダウンロードできる
  • セミナー開催を優先告知
  • 厳選情報をメルマガで確認
会員登録する
データのじかん会員について詳しく知りたい方
close close