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近年、リモートデスクトップの利用例が増えています。
リモートデスクトップとは、簡単に言えば、コンピュータ端末を遠隔操作する仕組みのことです。手元にあるコンピュータ端末から、ネットワークを介して対象となるコンピュータ端末にアクセスし、操作を行います。
ここでいうコンピュータ端末とは、具体的にはパソコンやサーバー、スマートフォン、タブレットなどを指しています。
リモートデスクトップにおいて、手元のコンピュータ端末のモニターに表示されるのは、アクセス先のコンピュータ端末の画面です。その画面では、アプリケーション実行や設定変更などの作業も通常と同じように行うことができます。作成・編集したデータは、そのままアクセス先のコンピュータ端末に保存されます。
つまりは、手元にあるコンピュータ端末が、アクセス先のコンピュータ端末と同じ作業環境を提供してくれるわけです。
情報処理を担うのはアクセス先のコンピュータ端末で、手元のコンピュータ端末はイータフェースのみを担う。このようなイメージです。
なお、一般的に、手元のコンピュータ端末のことを「クライアント端末」といい、アクセス先のコンピュータ端末のことを「ホスト端末」といいます。本記事も、これに倣うこととします。
リモートデスクトップは、どのようなシーンで活用されているのでしょうか。主に次の4つのシーンが挙げられます。
一つ目に挙げられるのが、オフィス外業務です。
リモートデスクトップを実現する上で必要となるのは、基本的にネットワーク環境とコンピュータ端末のみです。これさえあれば、営業先や出張先、カフェ、図書館、自宅など、どのような場所にいても、オフィス内にいる場合と同様の業務環境を得ることができます。
もちろん、リモートデスクトップは、働き方改革などの影響により近年急速に普及しつつあるテレワークとも相性が良いでしょう。
二つ目に挙げられるのが「ソフトウェアの共有」です。リモートデスクトップを活用すると、他のコンピュータ端末にインストールされているソフトウェアを借りることができます。
例えば、「画像編集作業を行いたいが、自分のパソコンには適当なソフトがない」というケースで便利です。リモートデスクトップを活用すれば、知人のパソコンや会社のパソコンなど、他のパソコンにインストールされている動画編集ソフトを借りることができます。
三つ目に挙げられるのが、処理能力の共有です。リモートデスクトップを活用すると、他のコンピュータ端末の処理能力を借りることができます。
例えば、「負荷の大きいプログラム処理を実行したいが、自分のパソコンでは処理能力が足らない」というケースで便利です。リモートデスクトップを活用すれば、処理能力の高いパソコンの力を借りることができます。
四つ目に挙げられるのが、知人のトラブルシューティングです。リモートデスクトップを活用すれば、家族や友人など、知人のトラブルシューティングを格段に行いやすくなります。
例えば、一人暮らしをしている祖母がパソコンの設定で困っているとき、リモートデスクトップを活用すれば、代わりにその設定作業を行うことができます。
解説してきたように大変便利なリモートデスクトップですが、次のような注意点があります。
リモートデスクトップを利用する場合、ホスト端末の電源は常にオンになっていなければなりません。
OSの自動アップデートや停電など、何らかの事情により電源がオフになってしまうと、リモートデスクトップが利用できなくなります。また、電源を常にオンにしておくとなれば、それだけ電気代がかさむことにもなります。
リモートデスクトップは、ネットワーク接続が必須であるがゆえに、ネットワーク回線の影響を受けてしまいます。
回線が不安定だったり回線速度が遅かったりすると、作業の生産性が低下してしまうでしょう。また、災害や事故などで通信障害が発生すれば、予定していた作業ができなくなってしまうこともあります。
リモートデスクトップは、ネットワーク接続が必要であるがゆえに、サイバー攻撃のリスクに晒されます。リモートデスクトップを狙ったサイバー攻撃手法も報告されています。
サイバー攻撃のリスクを低減するためには、セキュリティ対策を行うことです。
■セキュリティ対策の例:
・セキュリティソフトの更新を怠らない
・VPNなど安全な回線を使用する
・データを暗号化する
・使用するIPアドレスを制限する
・認証方式を二段階認証にする
・セキュリティ強度の高いパスワードを使用する
・ログインの試行回数を制限する
ここまでで、リモートデスクトップの基本的知識を解説してきました。
ここで、リモートデスクトップを実現できる代表的なツールを、無料版と有料版にわけて紹介していきます。
まずは、無料のリモートデスクトップツールから紹介していきます。
・Windowsのリモートデスクトップ機能
Windows(Windows10以降)では、標準装備されている機能を使ってリモートデスクトップを実現することができます。ただし、ホスト端末として利用できるエディションは、「Professional」「Enterprise」「Education」に限られます。「Home」をホスト端末として利用することはできません。
・macOSの画面共有機能
macOSでも、標準装備されている「画面共有」という機能を使ってリモートデスクトップを実現することができます。ただし、ローカルネットワーク内での利用に限られます。
・Chromeリモートデスクトップ
WebブラウザChromeでは、拡張機能(アドオン)を使ってリモートデスクトップを実現することができます。OSの自由度は高いです。WindowsやMac、Linuxなど、Chromeが使えるOSであれば利用することができます。ただし、利用する上で常にChromeを起動しておく必要があるため、メモリ消費量の増加など、コンピュータ端末への負荷は大きいです。
続いて、有料のリモートデスクトップツールを紹介していきます。
・TeamViewer(チームビューアー)
TeamViewerは、ドイツのTeamViewer社が提供するリモートデスクトップツールです。 接続のしやすさや通信の安定性が強みです。 また、リモートデスクトップの他に、オンライン会議やWebセミナー、ファイル転送などの機能が備わっています。 セキュリティ面も業界最高水準です。
・Splashtop(スプラッシュトップ)
Splashtopは、アメリカのSplashtop社が提供するリモートデスクトップツールです。 高速描写に強みを持ち、1秒あたり30フレームという圧倒的なパフォーマンスを実現しています。 また、シンプルかつ直感的に使える仕様・デザインも大きな特徴です。 セキュリティ面も業界最高水準です。
リモートデスクトップツールを無料版と有料版に分けて紹介しました。無料版と有料版のうち、やはりはじめやすいのは無料版でしょう。
ここでは、参考までに、先に紹介した3つの無料リモートデスクトップツールの設定方法を解説します。なお、いずれも「ホスト端末の設定手順」→「クライアント端末の設定手順」という順で解説していきます。
まず、Windowsのリモートデスクトップ機能の設定方法から解説します。
[ホスト端末の設定手順]
・[スタート] をクリックして、メニューから [設定] をクリックします。
・[システム]をクリックして、メニューから[リモートデスクトップ]をクリックします。
・[リモートデスクトップを有効にする]スイッチをオンにします。
・「リモートデスクトップを有効にしますか?」と表示されますので、[確認]をクリックします。
・[PC名]に表示されているコンピュータ名をメモに控えます。
[クライアント端末の設定手順]
・タスクバーにある検索ボックス(虫眼鏡のアイコン)をクリックします。
・検索窓に「リモート」と入力します。
・検索結果として出てきた[リモートデスクトップ接続]をクリックします。
・出てくるウィンドウの[コンピューター]欄に、接続するコンピュータ名(あるいはIPアドレス)を入力し、[接続]をクリックします。
続いて、macOSの画面共有機能の設定方法を解説します。
[ホスト端末の設定手順]
・アップルアイコンをクリックし、メニューから[システム設定]をクリックし、サイドメニューから[一般]をクリックします。
・[画面共有]スイッチをオンにします。※[画面共有]スイッチと[リモートマネージメント]スイッチの両方を同時にオンにすることはできないため、[リモートマネージメント]スイッチがオンになっている場合は、オフにします。
・[画面共有]スイッチの右にあるアイコンをクリックし、表示されているサーバーアドレスをメモに控えます。
[クライアント端末の設定手順]
・Finderを立ち上げ、[移動]メニューから[サーバへ接続]をクリックします。
・出てくるウィンドウで、接続するコンピュータのサーバアドレスを入力して、[接続]をクリックします。
・出てくるウィンドウで、ホスト端末のユーザ名とパスワードを入力し、[サインイン]をクリックします。
続いて、Chromeリモートデスクトップの設定方法を解説します。
[ホスト端末の設定手順]
・Chromeを立ち上げます。
・アドレスバーに「remotedesktop.google.com/access」と入力し、Enterキーを押します。
・出てくるウィンドウで[ダウンロード]マークをクリックします。
・出てくるウィンドウで[Chromeに追加]をクリックします。
・出てくるウィンドウで[同意してインストール]をクリックします。
・インストールが完了したら、任意のユーザー名とPINコードを決め、入力します。
[クライアント端末の設定手順]
・ブラウザChromeを立ち上げます。
・Chromeのアドレスバーに「remotedesktop.google.com/access」と入力し、Enterキーを押します。
・出てくるウィンドウで、ホスト端末を選択あるいは入力して、[次へ]をクリックします。
・決めたユーザー名とPINコードを入力し、[起動]をクリックします。
リモートデスクトップでは正しい手順で設定を行っても、接続エラーとなってしまうケースがあります。ここでは、よくある接続エラーと対処方法について解説します。
ホスト端末の電源がオフになっている場合、接続エラーとなります。
その場合、しっかりと電源をオンにしましょう。自身がホスト端末の近くにいない場合は、ホスト端末の近くにいる人に依頼しましょう。
なお、リモートデスクトップツールの中には、ネットワークを介してホスト端末の電源を操作できるものもあります。
ホスト端末がスリープ状態になっている場合、接続エラーとなります。
その場合、スリープ状態を解除しましょう。自身がホスト端末の近くにいない場合は、ホスト端末の近くにいる人に依頼しましょう。
もちろん、そもそもスリープ状態にならないよう設定を見直すことも大事です。
クライアント端末から入力するホスト端末情報(コンピュータ名、サーバーアドレスなど)が間違っている場合、接続エラーとなります。
その場合、まず入力内容が正しいか確認しましょう。大文字と小文字の違いには注意してください。また、例えば「数字の1と英小文字のl」「数字の6と英小文字のb」「英小文字のuと英小文字のv」など、見間違えやすい文字にも注意してください。
それでも接続エラーとなる場合、ホスト端末情報を改めて確認し、改めて入力しましょう。
ホスト端末側のファイアウォールの設定内容によっては、接続エラーとなるケースもあります。
ファイアウォールとは、外部ネットワークからのアクセスを監視しながら、通信の許可・拒否を決めるセキュリティシステムのことです。
ホスト端末側のファイアウォール設定にて、外部からのリモート接続を拒否する設定になっていないか、確認しましょう。
リモートデスクトップツールには、無料版と有料版がありますが、「どちらを選ぶべきか」と悩んでしまうこともあるでしょう。
無料版と有料版の大きな違いは、主にセキュリティ面とサポート面です。
有料版の中には、いくつものセキュリティ対策が施されているツールが多いです。セキュリティ対策とは、具体的には、暗号化通信、デバイス認証、二段階認証、ログイン試行回数制限などを指します。
また、有料版の中には、サポート体制が整っているツールが多いです。インストール方法や操作方法がわからないときや、接続エラーを解消できないとき、サポート窓口に連絡すれば適宜に対応してくれます。
有料版がおすすめなのは、主に次のようなケースです。
・リモートデスクトップを仕事で利用する
・リモートデスクトップを頻繁に利用する
・リモートデスクトップで機密性の高いデータを扱う
・コンピュータスキルに自信がない
もちろん、「まずはお試しで利用してみたい」という場合は、無料版からでもよいでしょう。
本記事では、リモートデスクトップにフォーカスし、その基本的知識や実現方法などを解説してきました。
リモートデスクトップとは、コンピュータ端末を遠隔操作する仕組みのことです。手元にあるコンピュータ端末から、ネットワークを介して対象となるコンピュータ端末にアクセスし、操作を行います。
リモートデスクトップは、主に次のようなシーンで活用されます。
・オフィス外業務
・ソフトウェア共有
・処理能力共有
・知人のトラブルシューティング
リモートデスクトップは非常に便利な仕組みです。導入することで、できることの幅が一気に広がるでしょう。
なお、リモートデスクトップを実現する方法は複数ありますので、ご自身あるいは自社の環境にあった方法を選択するようにしてください。
リモートデスクトップの活用を検討されている方にとって、本記事の内容が少しでもお役に立てますと幸いです。
著者:松下一輝
大学院修了後、大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムや統合運用管理ツールなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、さらに「わかりにくいITをわかりやすく伝える役割の人が社会には必要」と考え、ITライターに転身。Webメディア記事を中心に執筆している。
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