About us データのじかんとは?
著者・木下悠氏は、株式会社リクルートで企画営業に従事し、2万人の中から年間10人に選ばれましたそうです。その後、マクロミルで営業として大手食品・飲料メーカーのマーケティング支援に携わり、homie株式会社の執行役員を歴任。
技術革新や商品開発に対する企業努力のおかげで、商品力に差がつきにくい時代になりました。そのため、これからは営業力で差がつく時代になると筆者は言います。
そんな著者の過去の経験と知識をふんだんに盛り込まれたのが「営業とは再現性のある科学」(日本実業出版社 2023)です。営業とは、属人的な能力で成果が出るものではなく、どんな時でも成果を出し続けられる法則が存在し、その法則を詳しく解説する書籍となっています。
企業の優位性とは、取り扱う商品力とその商品の良さをプレゼンする営業力を掛け合わせた物だと著者は言います。そして、その商品力にそれほどの差を出しづらくなってきたのが現代です。洗剤一つとっても、どの商品を選んでも特に不満のない程度に衣類の汚れは落ちますし、どのメーカーのテレビでも番組を見るのに支障はありません。
そんな時代だからこそ、消費者は各社の営業力によって商品を選ぶ確率が増大していきます。極端に言えば、営業力のみで商品を選ぶことも多々あるでしょう。そして、その営業力にはだれでもいつでも使える科学的な法則があるというのです。
営業力というと、営業マンの個人的な能力だとよく思われていますが、本書ではそこに疑問を呈しています。個人的な能力に自信がない人でも営業力を発揮できる法則を学び、全ての営業職がその仕事に自信と誇りをもてることを目指しています。
営業に力を入れる企業は多くあり、日本で営業職に従事する人は800万人以上いるといいます。これは、労働人口の1割を越える人数です。これだけ多くの営業職が存在することこそ、やはり営業がすべての企業において重要だと言うことの証しです。
本書では、あらゆる企業が重要視している営業力をマーケティングスキルとリサーチスキルの2本柱で詳しく解説していきます。誰でもいつでも使える営業の法則があると解説していますが、それは決してテクニックのようなうわべの物ではなく、マーケティングとリサーチの真の意味をしっかりと理解し、実践する必要があるというのが本書の考えです。そして、そのやり方を誰でも理解できる表現にかみ砕き、誰でも実践できる内容で解説してくれます。
著者の経歴を見ると、一見華々しい営業マンのような印象を受けますが、実は著者が社会人になったすぐの頃には、「テクニックを身につけることが売れる方法」だと勘違いをしていて、リクルートでは「クビ宣告」を突きつけられているそうです。
しかし、それから営業についてしっかりと考えを改め、今までの間違っていた要因を突き詰めていきます。そんな著者の経験があったからこそ、本書の誰にでも活用できる営業の法則がわかりやすく、心に響くのではないでしょうか。中には、ドラえもんがのび太くんに対して徹底的なリサーチをおこなっているという面白い例が出てきます。誰もが知っているアニメの登場人物を使って解説してくれる部分では、より理解の深まりを得られます。決して、成功ばかりではない、特別な人間ではない著者だからこそ、書けた本だと感じました。
本書で解説している営業力は、営業職に限った法則ではなく、他の分野でも応用が利く内容がたくさんあります。
例えば、リサーチの本質は「幸せにしたい人=お客様」の頭と心の中を深く理解することという章があります。ここではスティーブ・ジョブズ氏の言葉が紹介されています。
美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?そう思った時点で君の負けだ。その女性が何を望んでいるのか、見極めることが重要なんだ。
When you want to have a date with a girl, are you going to send her 15 roses if you know that your rival is sending her 10 roses? If you would think so, you will be defeated on that moment. Whatever your rival does, is not what matters. What does that girl really want?
「人生を変えるスティーブ・ジョブズ スピーチ」 国際文化研究室(編)、ゴマブックス
リサーチの本質はこの言葉に凝縮されていると言っても過言ではありません。相手への理解を深めることこそが営業力の重要な要素であり、そのためにリサーチスキルというのが必要になるのです。
そして、このことは営業に限らずあらゆる分野で真理であるといえるかもしれません。
本書の締めくくりには、「目の前のお客様を幸せにする方法を真剣に考えること」が営業でやるべきことだとあります。営業力を身につければ、最終的にはお客様を幸せにすることができます。
そして、その営業力を駆使すれば、お客様だけでなくどんな人でも幸せにすることができるでしょう。そう言う意味では、人を幸せにしたいと考える人誰もが学びを得られる「営業とは再現性のある科学」(日本実業出版社 2023)は気づきと教訓をくれるはず。
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