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2021年8月、ネットやテレビなどでも活躍するメンタリストのDaiGo氏が自身のYouTubeにおいて、ホームレスの人への差別発言をし、炎上しました。
動画の中で、DaiGo氏は「自分にとって必要の無い命は僕にとって軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい。いない方が良くない? 邪魔だしさ。プラスになんないしさ、臭いしさ。治安悪くなるしさ。もともと人間は自分たちの群れにそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きている。犯罪者を殺すのだって同じ」と発言したそうです。
この発言にはSNSで「優生思想である」、「非人道的」、「差別を助長する」など、さまざまな批判が寄せられ、生活困窮者支援4団体が緊急声明を出すなど大きな話題になりました。一方で、一連の批判に対し、DaiGo氏は「発言しただけで実際に何かした訳ではない」という意見も噴出。
今回は、権力や資本などを持つ人々が貧困や差別などに苦しむ社会的に弱い人々をただ「どうでもいい」と思うことの何が悪いのか、そしてそれがどのような結果を生むのか、を「構造的暴力」というキーワードをもとに読み解いていきます。
1923年以来、白人による黒人の殺害は1件もないということだった。彼らは、ここは平和な国だと言った。私が、「お言葉ですが、人口の4%しかいない白人が96%の黒人を支配している。良い土地は全部白人のもので、黒人はすべて奪われている。平均寿命も黒人は白人の半分しかない」と反論すると、彼らは「それはそうだが、この国は平和だ」と言った
――ヨハン・ガルトゥング、御立 英史 (訳)『日本人のための平和論』
「構造的暴力」は不作為(主体なき行為)によって、間接的・潜在的にふりかかる暴力の形態のことを指します。
例えば、貧困やジェンダー、人種、性的指向や生まれなどによる、抑圧、差別なども「構造的暴力」の該当します。
「構造的暴力」はノルウェー人の平和研究者ヨハン・ガルトゥングが論文「暴力・平和・平和研究」において提唱したものです。
暴力は、狭義の意味では、直接的に加えられるものであり、特定の属性の人が貧困や差別といったさまざまな抑圧を受けることを含みませんでした。
ガルトゥングがこの概念に思い至ったのは1965年にイギリスの植民地だった南ローデシア(現在のジンバブエ)を来訪した時のこと。
この土地を支配していた白人の人々は「この国は平和だ」と胸を張って紹介するが、実際は、国の富のほとんどを白人が所有し、もともとこの土地にいた黒人の人々は貧困に喘いでおり、平均寿命も白人の半分程度しかなかったといいます。
白人の支配によって、騒乱や暴力沙汰といった直接的な暴力は未然に防がれていたとしても、この支配は決して「平和」とはいえない、と感じたガルトゥングはさまざまな問題の予防や解消のためにできるのに、それを行わず、さらには、そうした他者の苦しみにも問題にも気づくことすらできない、という構造自体に暴力があるのでは、と気づいたのです。
黒人の村が2つあっても、白人が作る道路は村から遠く離れたところを通る。おまけに、白人は2つの村のあいだにたくさんの木を植えて深い森を作る。黒人同士を分断し、道路を使わせようとしない。そもそも私たちが移動に使える自動車を持っていないことを、だれも気にとめていない。黒人は貧しく孤立した村に住み、白人は結託して黒人社会の上に君臨している
――ヨハン・ガルトゥング、御立 英史 (訳)『日本人のための平和論』
「構造的暴力」について学ぶとき、少なくない人がこのような疑問持つのではないでしょうか?
この世界に生きている限り不公平はついて回るというのに、「資本や権力をただ人より多く持っている人」は直接誰かから何かを奪わずとも、弱者に無関心なだけでそれが暴力になるなんであんまりにも酷いではないか。
しかし、「構造的暴力」を「不公平(inequality)」と言い換えることに対し、ガルトゥングは不適切だと指摘しています。
なぜなら、「構造的暴力」は「あなたは私より多く持ち、私はあなたより少ししか持っていない」という不公平を指すのではなく、「あなたが多く持っているから、私は少ししか持てない。私が少ししか持っていないから、あなたは多く持てる。あなたは私のものを構造化された手段と方法で奪い、搾取している」という「不均衡(inequity)」を指しているからだと言います。
そして不公平はあくまでこの不均衡の結果であり、構造的に搾取されているという背景を無視して不公平にだけ焦点をあててしまうと「仕方がない」「どうしようもない」という結論にいたってしまいます。
だからこそ、「自分は直接誰かから何を奪っている訳ではないし、関係ないからどうでもいい」と開き直る前に資本・権力が自分自身の元に集まる過程で構造的な搾取や収奪がないのか、注意深く考える必要があるのです。
残念なことに現在、世界中で権力のトップにいる人々は、構造的暴力を容認する傾向にある。構造的暴力が何であるかを知っているのは、貧しい国の人々であり、非白人、女性、貧困層、失業者たちである。
――ヨハン・ガルトゥング、御立 英史 (訳)『日本人のための平和論』
「構造的暴力」の特徴として、構造的に搾取する側の人々からは、その構造自体がなかなか見えません。
一方で搾取される側の人々は構造的な搾取、収奪をよく理解しています。したがって、構造的に搾取する側の人々は自分から見えている視点で何かを語る前に、まず、今この社会で「構造的暴力」に悩み苦しむ人々に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。そして構造的暴力が起きているかどうかを客観的に判断するために、我々はもっと積極的にデータの力を活用をしていくべきなのではないでしょうか。
(大藤ヨシヲ)
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