藤本:賛成です。「全員経営」みたいな考え方もありますけど、経営者には経営者の、エンジニアにはエンジニアの役割があるので、それでいいんじゃないかと。ひとりでできないことをチームでやるから会社として成り立つし、大きな目標を達成できるわけですから。
森下:私が大事にしてるのは、その人のキャパシティとやりたいことに合わせてロールを提供するということです。エンジニアはテクノロジーが好きでやってきてるので、経営のことまで分かる必要はないと思っています。それでも、経営を透明化することは意識しています。経営の情報は全部見えるようにして、興味ある人は見られる状態を作っているということが、大事だと考えています。
吉田:以前は社員のエンゲージメントとかモチベーションと言われていたことが、今はハピネスというもっと人間の本能に近いものに定義し直されている印象があります。幸せ度って、どうデータ化できるんでしょうね?
藤本:すでに日立さんが、ハピネスの計測をやっていますね。3年前にはピンとこなかった研究が今はすごく脚光を浴びていて、時代の流れを感じます。ただ、日立さんのハピネスの定義にはまらない人もいるので、一般化するのは難しいです。一番大事なのは、「そもそも、なぜ働くんだっけ?」「何をしたいんだっけ?」という自分の基準をどれだけ持てるかだと思うんです。どうしても同じ指標で測りたくなりがちですけど、「幸せなんて人それぞれ違うんだよね」と認識することが、次に必要なことかもしれません。
森下:それこそデータでできると思いますよ。私は脳を解析したいんです。セロトニンの量なんかで物質的に研究ができるはずだし、そこがデータ化されると本当に世の中が分かってくるでしょう。ディープラーニングで解析していくと、「あなたは今この会社にいない方がいいよ」とか「意外と投資銀行が合っている」とか、そういう最適なマッチングができそうじゃないですか。
意味解析までしなくとも、脳波を見れば色々わかります。私も持っていますが、脳波計測のツールでかなり手軽にアルファ波やガンマ波なんかが測れるんですよ。そういうことが、5〜10年経ったら当たり前になってくるんじゃないですか。
吉田:どういう働き方をするとベストパフォーマンスを出せるか、見える化できますね。
森下:IoTも使えば、この人とこの人が近くにいるときはすごく脳波が出ている……とかも分かりますよ(笑)
藤本:面白い(笑)。それで相性のいいチームを作ったりできそうですね。例えば今までは「ストレングスファインダー」みたいなテストで相性を考えていたところが、他のデータの掛け合わせでもっと明確にわかるようになるというのは、ありそうですね。
吉田:僕は、会社が幸せやエンゲージメントが上がる働き方を提示できれば、社員が自発的に動いて勝手に成果を積み上げてくれるものだと思っているんです。だけど、今の日本の会社のほとんどは「朝ちゃんと起きて、夕方までオフィスで働く」というやり方が刷り込まれているからなかなか変えられないんですよね。その点、森下さんのところは最初から全然違うやり方で始めていますね。
森下:我々の会社にトライアルで入って、かなり苦しむ人もいるんです。自由すぎてどうしたらいいか分からなくなっちゃう。色々な人がいるので、多くの人は「刷り込まれた働き方」の方がいいんだと思いますよ。無理に変える必要はないので。
吉田:柵がある中で放牧されているくらいの方がラクなんでしょうね。
森下:それぞれのキャパの問題なんですよ。キャパが地球規模になっちゃうと、自由すぎてわけが分からなくなるんです。我々の会社でロールを割り当てるときも、その人のキャパに合わせてアサインして、そのロールの中で自律的に動いてください、という形にしています。もちろんロールを飛び越えて思考、行動するのも自由ですが。
藤本:そのキャパは、教育でいくらでも変わると思うんです。環境が人を作ると考えると、自由な世界を経験していない人のキャパが狭いのは仕方がないですよね。Everforthのような会社が増えてくると、変われる人も増えてくるはずです。
森下:だから、この会社は社会実験だと思ってやってます。
藤本:私が会社員として働きながら社団法人をやるのも社会実験です。やってみないとわからないことがあるし、その実験が誰かのための事例になると思うからやっているんです。こういう社員がいると、人事の人は大変だと思いますけどね(笑)。
吉田:副業や複業を始めると、社員の帰属意識も変わってきますよね。
藤本:私はむしろ、帰属意識は高まると思いますよ。海外に行ったら日本が好きになった、みたいなことと一緒で。もともと組織にコミットしていなかったような人は、副業しなくても遅かれ早かれ出ていくと思うので。
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