岸田 – とはいえ、どうしても好きなことが変わらない場合もあると思います。資質がある人を見て、羨ましいなと思うこともあるかもしれません。自分の好きなことに資質がなかった場合、そのコンプレックスとどのように向き合うべきでしょうか?
松本 – 仕事ではなく、趣味として割り切るというのが一番だと思います。本当に仕事に昇華したいということであれば、本書でも述べていますが、他の資質を組み合わせてオリジナルを作り出すということではないでしょうか。
他にも、自分に足りない資質を持っている人とチームを組むという手もあります。どうしても好きなことを仕事にしたいのであれば、チームを組み、その中で自分の資質にあったポジションを見つけるということが大切です。
ここで重要なのは、割り切ることを恐れないことです。得意なことは時間をかけずに習得できますが、苦手なことというのは、時間をかけても少ししか伸びません。しかし、時間をかけると少しは伸びてしまうものです。すると、人間はそれを捨てることを恐れます。その結果、自分に向いていることにシフトできず、ずるずると時間が経ってしまいます。
岸田 – 確かに、仕事はチームや組織で行うことも多いですから、自分の関わり方を変えれば良いということですね。
岸田 – 自分の資質を見つけるコツはあるのでしょうか?
松本 – 無意識にできることは人間、気づきにくいものです。そして、自分の資質というのは、この「無意識にできること」に隠されている場合が多いです。よって、自分の資質に気づくためには、第三者の意見を取り入れる必要があります。具体的な方法は書籍に説明を譲りますが、他人の「ありがとう」の声を集めることで、自分が何に向いているか、ということに気づくことができます。また、巷にはストレングスファインダーなど資質を見つけるための診断ツールも数多くありますので、それらを利用してみるのもいいかもしれませんね。
岸田 – 近年、何かにのめり込む、いわゆる「オタク」がクローズアップされていますが、専門性を高めるということについてはどうお考えでしょうか?
松本 – これからはAIの時代ですから、自分が磨き上げたスキルが、ある日突然役に立たなくなってしまうということも起こり得ます。しかし、ある領域に特化して「突き抜ける」という経験は、非常に意味のあることだと思います。これは好きなことと、向いていることが一致した時にできる経験であり、この感覚は一度は経験したほうがいいと思います。なぜなら、この「突き抜ける」という経験は、自分の自信につながり、他の分野を学び直す時にも活かすことができるものだからです。様々な人を見てきましたが、自分に自信を持っている人というのは、新しい分野に挑戦するときも成功する可能性が非常に高いように思います。
岸田 – 確かにこの感覚は、教育業界に身を投じている私も感じています。例えば小学生など、運動が得意な子は勉強ができない、勉強が得意な子は運動ができないという固定観念がありますが、実は部活などで選抜に選ばれている子の方が、同じ勉強期間で比較した時に、学力の伸びが大きいということが多々あります。逆に、(受験期は別ですが)勉強時間確保のために部活をやめてしまう子は、思ったより伸びないなと感じることが多いですね。
岸田 – 書籍の中で、リーダーは大きな失敗をしているということが書いてありましたが、狙って失敗をするこということは難しいですよね。
松本 – 最近は大きなチャレンジを避ける傾向にあるというのが、大きな失敗をしない原因の一つだと思います。もちろん、生死に関わることは別ですが、最近の子供たちは、なるべく大きな失敗をしないように育てられています。また、大人も大きな失敗をしないように管理されています。その一例が、目標管理です。目標管理は組織運営において、時にいい方向にも働くかもしれないが、下手をするとチャレンジを避けるものになり下がります。失敗を前提としたチャレンジなど、誰も働く際の目標として設定しません(目標達成できず、査定が下がるため)。大きなチャレンジをしなければ、大きな失敗は生まれないので、これでは失敗のしようがありません。
また、失敗は時に、自分のやめ時を示してくれます。例えばスポーツ選手がやめどきを失ってしまうと、本当は指導者としての資質があったかもしれないのに、その時間を現役選手としての時間に費やしてしまうということも起こり得ます。常にチャレンジし、失敗することで、自分の資質に合った新たな生き方が発見できることもあるのです。
岸田 – 教育において資質をどのように捉え、考えれば良いでしょうか?
松本 – 学生でも社会人でも、教える対象者の資質を考えて教育することが望ましいと思います。私は学生を教えていないので、社会人の例で言いますが、会社で起こりがちなのが、資質が異なる上司が部下を育成する時のすれ違いです。この場合、特に上司はプロの教育者というわけではないので、部下を育成する際に、自分の成功体験を教えようとしがちです。上司と部下の資質があっていれば問題ないのですが、合っていない場合はすれ違いが起こります。例えば、足で稼ぐタイプの営業の上司が、理屈タイプの営業の部下に対して自分のやり方を教えた場合、部下からすると「そんなやり方もある」ということはわかりますが、実践するには向いていないということです。
これが長期間にわたると、先ほど申し上げたとおり、少しだけそのスキルが伸びてしまいます。そうすると、そのやり方を捨てることがもったいないと思うようになり、伸び悩むということもあるかもしれません。
好きなことをするか、向いていることをするかということは、教育業界のなかでも大きなテーマとなっています。
特に、自分の資質を言語化するという試みは、漠然と「やらなければならない」とは思いつつも、時間がなかったり、具体的な方法が分からなかったりで、今まで行ってこなかった人達がほとんどではないでしょうか。日本においては、このような資質を言語化する、好きを言語化するという機会は、就職活動ではじめて経験するという方が多いと思いますが、日々の生活の中で、都度自分の資質について考えることを習慣づけることも必要だと感じました。
著者:松本 利明
定価: 1,512円(本体1,400円+税)
発売日:2019年04月27日 判型:四六判
商品形態:単行本 ページ数:272 ISBN:9784046041890
市場価値に左右されない、「自分の価値」の組み立て方を解説した話題書!
著者は、PwC、マーサー、アクセンチュアといった世界的な外資系コンサルティング会社で5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6500人を超えるリーダー、幹部社員を選抜してきた「人の目利き」
「いつでも転職できる」という武器を持っていれば、仕事は今よりずっと楽しく、ラクになる!
転職のテクニックだけでは先はありません。「会社」「時代」「人」に左右されず、大企業、ベンチャー、副業、自由自在に、自分らしく稼ぎ、活躍できるようになる1冊。(KADOKAWA HPより抜粋)
【経歴】
2011 年 東京大学工学部卒
2011 年 インフラ企業に就職
2015 年 同社退社
2015 年 エスカルチャー株式会社設立 代表取締役兼学習塾 ESCA 塾長
【概要】
東京大学卒業後、サラリーマン経験を経て、2015 年にエスカルチャー株式会社を設立。「受験勉強では終わらない、社会で生きる力を養う」という理念で、学習塾の運営と、海外インターン/海外留学コンサルティング事業、就活支援事業を展開している。 学習塾の運営においては、自らも教壇に立ち、サラリーマン時代の経験を活かして、「学問の体系化」「理論と現実」「回答の見せ方」「問題文を読む意味」「学習における知識と思考のマネジメント」など、勉強が社会にどのようにつながっているのかを教えている。
【ウェブサイト】
【経歴】
2011 年 東京大学工学部卒
2011 年 インフラ企業に就職
2015 年 同社退社
2015 年 エスカルチャー株式会社設立 代表取締役兼学習塾 ESCA 塾長
【概要】
東京大学卒業後、サラリーマン経験を経て、2015 年にエスカルチャー株式会社を設立。「受験勉強では終わらない、社会で生きる力を養う」という理念で、学習塾の運営と、海外インターン/海外留学コンサルティング事業、就活支援事業を展開している。 学習塾の運営においては、自らも教壇に立ち、サラリーマン時代の経験を活かして、「学問の体系化」「理論と現実」「回答の見せ方」「問題文を読む意味」「学習における知識と思考のマネジメント」など、勉強が社会にどのようにつながっているのかを教えている。
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