それでは、キャッシュレスのメリットについて考えてみましょう。
1つ目はなんと言っても、小銭を扱う煩雑さがなくなる、ということ。それにより、利用者側も楽になりますが、お店側も楽になり、コストも下がります。実際に現金によるコストを経済産業省の依頼による野村総研の試算によると、現金の直接コストは年間1兆円以上、お店でのレジ締めの作業だけでも人件費が5,000億円とかなり負担が大きいことがわかります。5兆円かかっているという別の銀行による試算もあります。低い方を取っても、最低でも年間1兆円は現金社会維持のためのコストがかかっていることになります。このコストは日本銀行による紙幣製造や貨幣の運搬など、税金に混ざっている金額です。さらには、レジ待ちによる経済的損失などがこれに上乗せされます。とある調査によると、人は1分以上レジ待ちをしているとイライラするそうです。
過去にキャッシュレスの導入が成功したケースで、ETCの普及があります。ETCが出来立ての頃、明らかにETCを使用した方が早いにも関わらず使っていた人は少数でした。ほとんどの人はレーンに並び、現金で支払いをしていました。現在では95%の人がETCを使用しています。ETCは16%から33%、とある年に急激に伸びていますが、普及するかどうかの谷、いわゆるキャズムと言われるものは16%を超えるかどうかで決まるそうです。日本のキャッシュレス比率は現在18%くらいですから、今から急激に伸びる局面に来ている、と考えられます。一度キャッシュレスに慣れてしまえば、例えば、SUICAやPASMOをすでに使っている人がある日使用をやめ、また切符を毎回買うようになる、のは現実的に考えにくいのと同じで、定着すると考えられます。
ETCの普及にもトリガーとなる政策がありましたが、キャッシュレスに対しても「消費税増税時、キャッシュレス決済に対して2%分ポイント還元」や「政府によるカード手数料の値下げ要請」「デジタルマネーによる給与支払い、19年にも解禁」などの普及トリガーが提案されています。
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