1990年あたりから2000年代前半までは、Web1.0(テキストコンテンツメイン、一方向コミュニケーション、一部の企業がリードする中央集権型などを主な特徴とする)の時代でした。
2000年代後半から2020年あたりまでは、Web2.0(画像・動画コンテンツ増加、双方向コミュニケーション、GAFAがリードする中央集権型などを主な特徴とする)の時代でした。
そして現代は、Web3の時代です。ブロックチェーン技術を基盤とした非中央集権型インターネット環境の概念が徐々に浸透しつつあります。
そんな中、Web3のさらに先である「Web4.0」というワードを見聞きする機会も増えてきました。Web4.0のキーワードは、「人間と機械の共生」「メタバース」です。
本記事では、Web4.0とはどのような概念なのか、それによってどのような世界が実現するのか、Web3.0など他の概念とどう違うのか、について解説していきます。
Web4.0とは、欧州委員会(欧州連合の政策執行機関)が提唱する概念です。
人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)など、これら多様な技術を駆使して、人間と機械が共生するインターネット環境の構築を目指し、その中でも「メタバース」を推進していくとしています。
メタバースとは、「超越」を意味する「メタ(Meta)」と「宇宙」を意味する「ユニバース(Universe)」を組み合わせた造語で、インターネット上に構築される多人数参加型の三次元仮想世界のことです。
ユーザーは、世界中のどこにいても、VRデバイスを通してその世界に入ることができます。アバターと呼ばれる自分の分身のような存在を介して、自由に動き回ったり、他者と交流したり、様々なサービスを受けたりすることができます。
Web4.0は、あくまで欧州委員会が提唱した概念ですが、遅かれ早かれ、あらゆる国家や企業が同様の取り組みを行っていくでしょう。
例えば、2021年10月、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、「Facebook」の会社名を「Meta」に変更し、その上で「メタバース事業に積極的に投資していく」と発表しました。
Web4.0により、ビジネスモデルはどのように変わるのでしょうか。
次のようなあらゆることがメタバース上で行えるようになります。
現時点ではあまり考えられない世界かもしれません。しかし、いずれはメタバース上で1日のほとんどを過ごす人、メタバース上のみで生計を立てる人なども出てくると予想されています。
また、Web4.0の世界では、これまでにないパーソナライゼーション(個々のニーズに合わせること)が実現すると考えられています。
パーソナライゼーションで重要な技術としてAIやIotなどが挙げられますが、AIやIotはまだまだ発展していく余地があります。
これまでのパーソナライゼーションは、ユーザーの属性や行動履歴などをもとに行われていました。しかし、Web4.0では、AIやIotの発展により、人の感情や場の状況などあらゆる情報を読み取る仕組みが一段と進化します。それだけ、よりきめ細かいパーソナライゼーションが可能となります。
Web4.0の実現にも、いくつかの課題が存在します。
まず、通信インフラ面です。
Web4.0では、メタバースを活用したサービスが主流となると考えられていますが、そこで扱う情報量はかつてないほど膨大な量となるでしょう。それだけ高速かつ大容量の通信能力・処理能力が求められることになります。
次に、セキュリティ面です。
あらゆる情報を深く読み取ることでよりきめ細かいパーソナライゼーションを実現するわけですが、そこにはプライバシーの問題も関わってきます。自分の感情が読み取られることに抵抗を感じる方は少なくありません。プライバシーを守るための仕組みやルールの確立が求められるでしょう。
そもそも「Web●●」とは何でしょうか。Web●●は、インターネット環境における世代を表す言葉です。概念としては、現時点でWeb1.0からWeb5.0まで存在します。ここで、それぞれの概要をみてみましょう。
[Web1.0]
インターネットが普及しはじめた1990年あたりから2000年代前半までは、Web1.0の時代でした。Web1.0は情報の閲覧が中心です。一部の企業やパソコンに詳しい個人がWebサイトを作成し、閲覧者はコンテンツを見るだけの一方通行のコミュニケーションです。また、当時はインターネットの通信速度が遅かったこともあり、コンテンツはテキストコンテンツが主体でした。
[Web2.0]
2000年代後半から2020年あたりまでは、Web2.0の時代でした。
これらの普及により、誰もが気軽に情報を発信できるようになり、さらには情報の発信者と閲覧者の双方向なコミュニケーションも可能となりました。また、インターネットの通信速度が向上し、画像・動画コンテンツも増えました。
一方で、GAFAなど特定の企業が個人データや権力を独占する、過度な中央集権型が問題視されることもありました。
※GAFA:Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Appleの総称
[Web3.0]
Web1.0、Web2.0の次の概念が「Web3.0」です。2020年あたりからは、Web3.0の時代とされています(2023年現在は、Web2.0からWeb3.0への移行期)。Web3.0としばしば同一の語られる用語に「Web3」がありますが、厳密には両者は別の意味なのでそれぞれの違いをしっかりと理解しておきましょう。
Web3.0は、Web関連技術企画標準団体「W3C」のティム・バーナーズ・リー氏が提唱した情報についての情報を付加する「セマンティックWeb」からきた構想からきた概念です。一方、Web3は仮想通貨イーサリアム(Ethereum)創設者の一人、キャビン・ウッド(Gavin Wood)氏によって提唱された概念です。過度な中央集権型のインターネット環境から脱却すべく、ブロックチェーン技術を基盤とした非中央集権型のインターネット環境の構築を目指しています。両者の違いは以下のページで分かりやすく解説しているので、チェックしてみましょう。
[Web4.0]
Web4.0は近年になってから聞くようになったワードです。繰り返しになりますが、Web4.0は欧州委員会によって提唱された概念です。Web3.0を踏襲した上で、AIやIoT、VR、ARなどの多様な技術を駆使して、人間と機械が共生するインターネット環境の構築を目指し、その中でもメタバースを推進していくとしています。
[Web5.0]
Web5.0も近年になってから聞くようになったワードです。Web5.0は、Twitter創設者の一人、ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏がCEOを務める決済サービス会社「Block」の一部門「TBD」が提唱した概念です。Web3.0のコンセプトを引き継ぎながらも、個々のユーザーが個人データを自己管理できる仕組みの構築を目指しています。このWeb5.0についても、後ほど詳しく解説します。
名称 |
目的 |
概要 |
Web1.0 |
属性上、なし |
・一部の企業がリードする中央集権型 ・テキストコンテンツがメイン ・一方向コミュニケーション |
Web2.0 |
属性上、なし |
・GAFAがリードする過度な中央集権型 ・画像・動画コンテンツが増えた ・双方向コミュニケーション |
Web3.0 |
コンピューターによる自律的な情報収集や加工などを可能にする。 |
・ティム・パーナーズ・リー氏が関連人物 ・セマンティックWebの 概念に通ずる ・情報についての情報を付加する |
Web4.0 |
AIやIoT、VR・ARなどの多様な技術を駆使して、人間と機械が共生するインターネット環境の構築を目指し、その上でメタバースを推進していく |
・欧州委員会が提唱 ・AIやIoT、VR・AR技術を活用 ・非中央集権型 ・双方向コミュニケーション |
Web5.0 |
Web3.0のコンセプトを引き継ぎながらも、個々のユーザーが個人データを自己管理できる仕組みの構築を目指す |
・ジャック・ドーシー氏率いるTBDが提唱 ・非中央集権型 ・双方向コミュニケーション |
Web1.0からWeb5.0まで、その概要を解説してきました。
ビジネスパーソンは、これら「Web●●」について一通り押さえておくと何かと便利です。「どのようなスキルを習得すべきか」「どのような商品を開発すべきか」「どのような事業戦略を打ち出すべきか」など、今後のことを考えやすくなるでしょう。
繰り返しになりますが、Web3とWeb3.0の意味は異なります。今回は広く認知されているWeb3について詳細を解説しましょう。Web3はイーサリアム創設者の一人、キャビン・ウッド氏によって提唱された概念です。
Web3では、過度な中央集権型のインターネット環境から脱却すべく、ブロックチェーン技術を基盤として非中央集権型のインターネット環境の構築を目指します。
もちろん、これだけではイメージが湧かないでしょう。以後、背景から詳しく解説していきます。
Web2.0では、GAFAなど特定の企業が個人データや権力を独占している中央集権型でした。
これらサービスを利用するためにはアカウントを作成する必要がありますよね。しかし、そこには次のようなリスクが伴います。
これは、いわば「特定の企業に全てを握られている状態」です。
Web3では、ブロックチェーン技術を用いて、この問題の解決を目指します。
ブロックチェーン技術とは、データベース技術のひとつです。データをブロックと呼ばれる単位で分割し、それを鎖(チェーン)のように連結してデータを保管します。
このブロックチェーン技術は、近年話題となることが多い仮想通貨で使用されている技術であるため、ご存知の方も多いでしょう。
このブロックチェーン技術を基盤としてサービスを作ると、その参加者同士でサービス運営に必要なデータを分散管理できるようになります。これは、特定の管理者がいなくても、参加者同士で様々な取引が可能になるということです。
「仮想通貨は明確な管理者がいなくても問題なく取り引きができる」。このような話を聞いたことはないでしょうか。これはブロックチェーン技術を基盤としているからこそ実現できることです。
また、ブロックチェーン技術によって保管されたデータは、仕組み上、不正や改ざんが非常に困難です。それだけ透明性の高いサービス運営が可能となります。
データを特定の企業に管理されるのがWeb2.0で、データを自分達で管理するのがWeb3というわけです。Web3の実現によって、特定の企業の方針に左右されない民主的な取り組みができるようになるでしょう。
Web3により、ビジネスモデルはどのように変わるのでしょうか。
解説したように、ブロックチェーン技術を基盤としてサービスを作ると、特定の管理者が存在しなくても、透明性の高い取引を行えるようになります。
それゆえ、Web3では、次のような「直接的なつながり・やりとり」が増えていくと考えられます。
Web3とWeb4.0には、どのような違いがあるのでしょうか。
基本的にWeb4.0はWeb3を踏襲しています。Web4.0は、Web3によって作られる非中央集権型のインターネット環境を基盤としてメタバースを推進していくイメージです。
Web3.0とWeb4.0は「ブロックチェーン技術を活用している」「非中央集権型」という点では同じですが、Web4.0ではさらに新しい世界の構築を目指します。
[Web4とWeb3で注目があつまる「仮想通貨」]
ブロックチェーン技術が活躍するWeb3の世界では、仮想通貨が通貨の主流になっていくと考えられています。そして、Web4.0はそのWeb3を踏襲しています。これから来るWeb3およびWeb4.0の世界では、より仮想通貨が重要な要素となるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、Web5.0は、Twitter創設者の一人、ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏がCEOを務める決済サービス会社「Block」の一部門「TBD」が提唱した概念です。
Web5.0というと、「Web3、Web4.0の次」を表すような言葉にも思えますが、実際のところ、Web3.0と同じく、ブロックチェーン技術を活用して非中央集権型のインターネット環境の構築を目指しています。
しかし、Web5.0では、「真の非中央集権型」を目指すとしています。具体的には、Web3.0のコンセプトを引き継ぎながらも、個々のユーザーが個人データを自己管理できる仕組みの構築を目指すとしています。
もちろん、これだけではイメージが湧かないでしょう。以後、背景から詳しく解説していきます。
ブロックチェーン技術を基盤として作られたサービスでは、トークンと呼ばれるものが発行されるのが一般的です。
トークンとは、価値交換ツールの一種で、貨幣と似たような性質を持ちます。商品の購入、イベント参加、特典受け取り、お礼といった価値交換はトークンによって行われます。
このトークン、通常は個人データと紐づいて運用されていているのですが、これが問題視されています。
Web3.0では、非中央集権型のインターネット環境の構築を目指すわけですが、実際には各サービスの利用には専門知識が必要で、個人がそこへ参入することは難しいところがあります。
結局のところ、専門知識のあるものが影響力を持つようになり、その影響力を持つ者がトークンや個人データを支配するような形になると考えられています。これは別の意味合いでの中央集権です。
そこで、ジャック・ドーシー氏率いるTBDが提唱するのが、個人データの自己管理化です。個人データとトークンが紐付かないような仕組みがあれば問題はありません。TBDは、正にその仕組みの構築に取り組んでいます。
Web5.0により、ビジネスモデルはどのように変わるのでしょうか。
基本的には、前述したWeb3の場合と同様です。解説したように、Web5.0は実際にはWeb3のことを指しております。
個人データの自己管理化が実現すれば、非中央集権型のインターネット環境の中で、快適な取引が行えるようになるでしょう。
Web5.0とWeb4.0には、どのような違いがあるのでしょうか。
解説したように、Web5.0は実際にはWeb3のことで、Web4.0はWeb3を踏襲しています。
Web4.0は、Web3・Web5.0によって作られる非中央集権型のインターネット環境を基盤としてメタバースを推進していくイメージです。
本記事のテーマはWeb4.0でしたが、他のWeb1.0、Web2.0、Web4.0、Web5.0についても押さえておくと何かと役立つでしょう。
簡単にまとめると次のようになります。
インターネット環境の進化は、我々の生活をより便利で豊かにしてくれる可能性を秘めています。これからの変化に注目したいところです。
著者:松下一輝
大学院修了後、大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムや統合運用管理ツールなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、さらに「わかりにくいITをわかりやすく伝える役割の人が社会には必要」と考え、ITライターに転身。Webメディア記事を中心に執筆している。
(TEXT:松下一輝 編集:藤冨啓之)
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