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四半世紀続く「山形エクセレントデザイン」、 激アツ!長野県塩尻市、エフェクチュエーション、 バズワードは「てへぺろ」ぐらいが丁度いい –データのじかん週報2023/2/24付

「2023年2月24日付データのじかん週報」では、四半世紀続く「山形エクセレントデザイン」やデータのじかんの中で、数々に話題にあがる激アツな長野県塩尻市について、起業家注目の意思決定の理論「エフェクチュエーション」や バズワードへの向き合い方などについてもやりとりしています。

         

データのじかん週報では、データのじかんの編集部内で会話されるこばなしを週1度程度、速報的にお届けいたします。

こばなし1:四半世紀続く「山形エクセレントデザイン」

大川:山形県内の企業のサービスや商品などのデザイン志向的な取り組みを表彰する「山形エクセレントデザイン」を知っていますか? 一見、ありがちなんですが実は25年近く続いているのが「面白い」。デザインがDXのようなバズワードとしてもてはやされたのは、20世紀の終り頃で今では多くの人や企業が辞めたはずなのに、続けているのは素直に「すごい」と思います。しかも、公設試験研究機関(公設試)の「山形県工業技術センター」が主体でやっているのが、さらにたまらなく面白いんですよ!


■公設試験研究機関(公設試)
国もしくは地方公共団体が設置している試験所、研究所、始動所のこと。工業系、農林水産系、環境系、保健衛生系に大別され、地場産業の育成を目的に活動している。公設試のなかには1900年に設立された組織もあり、規模、組織形態などが多種多様である。さらに詳しくはWikipedia

大川:公設試の認知度は高くありませんが、明治時代以降の日本の産業の発展を支え続けてきた機関です。ただ、80年代、90年代になるとその存在意義が薄まりはじめました。一般的な工業技術センターも例に漏れず、備えている各種計測機器などを用いて要素技術の試験を行うなど一見「地味」なことをやっているのが多い。そのような機関がデザイン志向の取り組みを25年近くも続けられているのは極めて珍しくて素晴らしい。ただ「見栄えが良い」とかいうレベルではなく、相当な「骨太」で、公設試の職員と直接話をしましたが、ユーザー中心やダイバーシティを本質して理解しているデザインに落とし込んでいることをビシビシと感じました。若い県の職員の方が25年かけて培ったデザイン志向を理解しているのが、たまらなくエモいですよね。

山形県デザイン振興指針概要 山形県デザインHPより

■Information1

データのじかん主筆の大川がDX共創ラボin九州コミュニティ主催「福岡地域DXシンポジウム」に登壇します。本コミュニティはITベンダー中心で3月末までは経済産業省の事業として遂行しているそう。4月以降の取り組みについてとても興味深いのでしっかり見てこようと思います。

こばなし2:激アツ! 長野県塩尻市

大川:「塩尻激アツ問題!」は私的にはかなり注目しているトピックスですね。同市が宅就業支援などを行う「KADO」、シビック・イノベーション拠点「スナバ」、図書館や会議室などの「えんぱーく」の3拠点を塩尻市が意図的に集積させているのが面白く、複数の文脈で耳に入ってきています。また、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が展開する「長野県よろず支援拠点 塩尻サテライト(塩尻市立図書館内)」が、想定以上に機能しているのも面白いですね。

例えば、同拠点の相談実績は2021年度で45万8,440件を突破。2014年以降、常に右肩上がりなのはこれまでの支援事業と比べても珍しい。ここ数年の伸びは顕著ですよ。地場の実務経験が豊富な人が登録しているのが大きな要因だと思います。資格や知名度、キャリアに関わらず本当の実力者を揃えている「ここまでできるんだ」というのが驚きです。もっとポジティブに注目して欲しいです。

出典:よろず支援拠点の相談対応件数の推移 よろず支援拠点のHPより

こばなし3:エフェクチュエーション ワークショップ

野島:早稲田大学ビジネススクール准教授樋原伸彦氏のワークショップに参加してきました。テーマは「エフェクチュエーション」です。このワークショップでの「気付き」は、細かな手法ではなくむしろ「誰がやるか」という点ですね。参加者のなかには「参加したけれど決済権がない」とか「やりたいけれど他の業務があってできない」といった声も聞かれました。私としては、むしろ「やるしかない」とか「コントローラブルな立場や意識」の有無が重要なのだと感じました。

大川:野島さんの感想は、まさしく「仕事なのか、趣味なのか」という言葉に通じると思います。仕事として業務を行っている人は、少なからず総じて「エフェクチュエーション」に倣った行動をします。そこには起業家、経営者もサラリーマンも関係ありません。
ただ、趣味や惰性で時間を過ごしている人は決してそうはならないし、「新しいことをやってはいけない」と思います。ただオペレーショナルな「作業」をするのが正解です。個人的な感覚だとどの組織でも8割は趣味的な人。そしていくら教育したからといって、他人に仕事をエフェクチュエーションとして捉えさせることは難しいんです。ただ、逆に言うとどの組織にいっても2割はエフェクチュエーション的な思考を持っている人はいます。そういう人たちとわちゃわちゃと仕事をするのは楽しいですね。

野島:その示唆を踏まえて、大川さんが新しいチームを組むときの勘所ってありますか?

大川:プロジェクトによって変わりますね。私が関わるのは「新しいことをやりたい」とか「何かを変えたい」というプロジェクトが多い、そのケースだとオペレーションの人をチームに入れたらいかんのですよ。ただ、職位などを基準にすると「8割の人」を選んでしまいがち。ミスなくオペレーションをしてきた人をトップにした時点で、そのプロジェクトは失敗します。

野島:イノベーションとか新規事業ってファッショナブルでかっこよく見えるので、肩書がある人とかを入れてしまいがちですからね。

大川:実際はもっとプレーンな観点で人選すればいいんです。ちょっとした変化に抵抗してしまう人、二言目に「できない理由」を言ってしまう人は「8割の人」なのでプロジェクトに入れてはいけないのです。一方、「口うるさい人」とか「うっとうしい」、「決めたことをやらない」など煙たがられてしまう人のなかには、明らかに「コト」として捉えると一気に動く人もいます。

■Information2


2023年3月5日に開催|参加無料

エフェクチュエーションの提唱者サラス・サラスバシー教授を招聘し、行われるEffectuation for Everyone! (Effectuation Conference 2023)が3月5日に行われます。

こばなし3:バズワードは「てへぺろ」ぐらいが丁度いい

野島:今までの話を聞くとバズワードも「平易な言葉」で言い表せられるんですね。「エフェクチュエーション」というワードを持ってきたのを少し反省しました(笑)。

大川:いえいえ!(笑) アンテナを張っておくのは我々の「仕事」ですよ。それに私はバズワードは全く悪いと思っていなくて、むしろ「作って周知する」という意味ではすごく重要だと考えていますよ。ただ、バズワードに最後まで踊らされるのは間違っていると思いますね。バズワードを口に出すときは「てへぺろ感」を意識すると、丁度良い照れを持てるからおすすめですよ。

野島:てへぺろ感! なるほど、分かるような分からないような(笑)。

大川:野島さんはバズワードを盲信するタイプではなく、いつも半信半疑で捉えているじゃないですか。「NFTやDAOとか言ってますけどー」っていう感覚ですよ。一方、バズワードを正面から捉えて、心酔したうえ旗振り役になってしまうと大怪我をしてしまいかねません。

 

野島 光太郎(のじま・こうたろう)
データのじかん編集長
広告代理店にて高級宝飾ブランド/腕時計メーカー/カルチャー雑誌などのデザイン・アートディレクション・マーケティングを担当。その後、一部上場企業/外資系IT企業での事業開発を経て現職。静岡県浜松市生まれ、名古屋大学経済学部卒業。
大川 真史(おおかわ・まさし)
データのじかん主筆
IT企業を経て三菱総合研究所に約12年在籍し2018年から現職。専門はデジタル化による産業・企業構造転換、製造業のデジタルサービス事業、中小企業のデジタル化。(一社)エッジプラットフォームコンソーシアム理事、東京商工会議所学識委員兼専門家WG座長、内閣府SIP My-IoT PF、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会 中堅中小AG、明治大学サービス創新研究所客員研究員、イノベーション・ラボラトリ(i.lab)、リアクタージャパン、Garage Sumida研究所、Factory Art Museum TOYAMAを兼務。官公庁・自治体・経済団体等での講演、新聞・雑誌の寄稿多数。直近の出版物は「アイデアをカタチにする!M5Stack入門&実践ガイド」(大川真史編、技術評論社)
聞き手:藤冨 啓之(ふじとみ・ひろゆき)データのじかん編集
経済週刊誌の編集記者として活動後、Webコンテンツのディレクターに転身。2020年に独立してWEBコンテンツ制作会社、もっとグッドを設立。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。BtoB分野を中心にオウンドメディアのSEO、取材、ブランディングまであらゆるコンテンツ制作を行うほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動中。データのじかんでは編集・ライターとして企画立案から取材まで担う。1990年生まれ、広島県出身。

(TEXT・編集:藤冨啓之)

 

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