味方も実績も「外部」でつくるのが手っ取り早い?
組織シニシズム対策も適材適所
–データのじかん週報2023/3/02付

「2023年3月2日付データのじかん週報」は、組織改革、新規事業の立ち上げ、データ活用の浸透……。なぜ、先頭に立つ人の多くが社内で「孤独」を感じてしまうのでしょうか。なかなか社内に理解してもらえないなら、いっそのこと外部からの評価で覆すのがむしろ「王道」なのかもしれません。今回は、そんな小話です。

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データのじかん週報では、データのじかんの編集部内で会話されるこばなしを週1度程度、速報的にお届けいたします。

こばなし1:味方も実績も「外部」でつくるのが手っ取り早い?

大川:先週、DX共創ラボin九州コミュニティ主催「福岡 地域DXシンポジウム」で講演をさせていただきました。そのときに一人の方と出会い「ぜひ今後、改めて取材したい」と感じました。その方は同シンポジウムの事例発表した福岡運輸株式会社の情報システム部門の方で、物流情報プラットフォーム「TUNAGU」のプロジェクトを立ち上げから1人で担っていました。

■企業の垣根を越えて物流情報をシェアできる物流情報プラットフォーム「TSUNAGU」
物流業界の現場起点、つながる・つなげる、変化への対応をキーワードにユーザー中心のプロトタイピングアプローチで開発を続けている。今後同業者への外販も図るとしている。

大川:新規のプロダクトを担当者が1人で担っており、外販を見込めるほどのステージまで持って行ったのは素晴らしいと思います。ただ、それよりも個人的に印象に残っているのが、少しその方と話したときに「孤独を感じていた」と零していたことです。福岡運輸の事例は「熱狂的な人が一人いれば、事業が立ち上がる」という可能性を感じるとともに、「『一人目』が社内からの理解を得るのは困難」というケースも体言しているのではないか。とも考えましたね。

野島:確かに、さまざまな越境者の方を取材するときはもちろん、データのじかんの読者の皆様、SNSでのデジノグラフィから「社内から理解されない」という声は聞きますね。孤独を感じるきっかけは人それぞれだと思いますが、今回の事例だと経済産業省地域未来DX投資促進事業に関わる事例として紹介されるほどなのに、自社のコーポレートサイトでの発信が少ないのも担当者としては寂しさを感じるポイントかもしれませんね。

大川:そうですね。他のメディアでの取り上げられ方と比較すると熱量の差は感じます。ただ、会社や組織が悪いというつもりはなくて、私は「だいたいそんなもの」と捉えています。前回の週報で組織の8割はオペレーションの人という話をしました。結局、多くの企業においては所属する8割の人に「新しいことをやる」ということを理解を求めるのが難しいんですよね。

とはいえ、社内にいる残りの2割の人が積極的に応援してくれる立場や職位とは限りません。むしろ決裁権を持っている人の方が少ないケースが多いと感じています。だからこそ、社内よりも2割の人の絶対数が圧倒的に多い「外部の評価」や「応援してくれる人」を見つける方が早いし合理的じゃないでしょうか。今回の事例もそのケースにハマっていると考えています。

野島:国の事業で事例として紹介されるのは、確かに分かりやすい「外部の評価」ですね。補助金の申請が認められれば、取り組みそのものが認められたとも捉えられますし。福岡運輸さんの場合、メディア露出以外にも色々な手法で外部評価を受けていると見えますね。そして外部からの評価が高まると……。

大川:社内の8割の人が手のひらを返すケースが多いと(笑)。もちろん、対内的なアプローチが無策ではいけませんが、結局は「社内の理解は最後」と考えていた方が、担当者にとっては気持ち的には楽かもしれませんね。デジタルで成功している人たちと接すると「会社は反対はしないが、なにもしない。お金は出ないからなんとかする」という暗黙の共通認識を感じることがありますし(笑)

野島:今回のTSUNAGUのケースはある意味「王道パターン」なのかもしれませんね。取り組み方はそれぞれですが、よくあることと捉えることが逆に次のアプローチにつながるのかもしれません。

こばなし2:組織シニシズム対策も適材適所

野島:最近、某人材開発系のシンクタンクの方とお話する機会がありました。その企業がエンジニアを擁する企業に対して警鐘を鳴らしていたのが「組織シニシズム」です。

■組織シニシズム
組織内におけるシニシズム(冷笑主義)のこと。個々人が組織に対する「疑念」や「負の感情」、「批判的な考え」を持ち、冷ややかな対応になることを指す。

松田与理子・石川利江, 2011,組織コミュニケーションおよび組織と従業員の社会的交換関係が組織シニシズムにもたらす影響,心理学研究 第2号,p56

野島:組織シニシズムに毒されると、クリエイティブな思考はなかなか生まれにくいのは想像がたやすいですよね。あとは物理的に離職したりしないものの、静かな退職(Quiet Quitting)、積極的に業務に取り組んだりするわけでもないのに「働きやすさ」や「給料」だけを目的に会社に居続ける社員が増加するリスクが高まりますよね。いわばクリエイティブ・コンフィデンスの対極とも言えます。テレワークで企業への帰属意識が薄れているのも、組織シニシズムが加速する要因になり得ると思いますし、確かに取り組むべき課題だと感じました。

大川:確かにエンジニアのようなある意味「自分を売る仕事」では、組織シニシズムは発生しやすいでしょうね。エースエンジニアが抜けると会社にとっては大きな痛手になりますし、自分に自信がある人ほど、冷ややかになりやすいと思います。ただ、会社に所属するすべての従業員にシニシズムの対策が必要かというと、私は「そうではない」と思います。

野島:新鮮な意見です! というと?

大川:極論、会社にとって外部化や代替が利くリソースであれば、組織シニシズム対策を行う必要性は低いのではないかぁと。個々人がプロフェッショナル感を持てないのは、会社のせいではないと思います。そこをどう捉えるかで対応は分かれるでしょうね。

野島:なるほど……。例えば、最近テレビで某旅客業の清掃スタッフが詰所で密なコミュニケーションを図って「身体知」から「暗黙知を形式知」、そして「集合知」を高める映像を見ました。サービス業のオペレーターに対して「組織シニシズム」の対策は必要だと考えますか?

大川:あくまで私の考えですがサービスマネジメントのオペレーショナルな戦術では、現場や組織が家族のように振る舞い「価値を共有」することについてはよく語られています。組織について理解を深める際は、色々な要素がごちゃごちゃになりやすいので一度、しっかりと整理する必要がありますよね。そこでぜひ、みなさんにおすすめなのがレオナルド・ベリーという人の「成功企業のサービス戦略」という本です。

書籍によると、価値主導のリーダーシップを中心に周りの8つの要因に則った活動をすると従業員の生産性が向上するらしいです。昨今盛んになされているチームビルディングとかモチベーションあたりの議論は大体この1枚に収れんされるなぁと思って眺めています。

野島:その本、めちゃくちゃ興味あります!古い本なんですね。 現時点ではAmazonで買えるので要チェックですね。

大川:それぞれの内容については別途改めて雑談しましょう!

データのじかん編集長 野島 光太郎(のじま・こうたろう)  
広告代理店にて高級宝飾ブランド/腕時計メーカー/カルチャー雑誌などのデザイン・アートディレクション・マーケティングを担当。その後、一部上場企業/外資系IT企業での事業開発を経て現職。静岡県浜松市生まれ、名古屋大学経済学部卒業。


データのじかん主筆 大川 真史(おおかわ・まさし)  
IT企業を経て三菱総合研究所に約12年在籍し2018年から現職。専門はデジタル化による産業・企業構造転換、製造業のデジタルサービス事業、中小企業のデジタル化。(一社)エッジプラットフォームコンソーシアム理事、東京商工会議所学識委員兼専門家WG座長、内閣府SIP My-IoT PF、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会 中堅中小AG、明治大学サービス創新研究所客員研究員、イノベーション・ラボラトリ(i.lab)、リアクタージャパン、Garage Sumida研究所、Factory Art Museum TOYAMAを兼務。官公庁・自治体・経済団体等での講演、新聞・雑誌の寄稿多数。直近の出版物は「アイデアをカタチにする!M5Stack入門&実践ガイド」(大川真史編、技術評論社)


データのじかん編集 藤冨 啓之(ふじとみ・ひろゆき)  
経済週刊誌の編集記者として活動後、Webコンテンツのディレクターに転身。2020年に独立してWEBコンテンツ制作会社、もっとグッドを設立。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。BtoB分野を中心にオウンドメディアのSEO、取材、ブランディングまであらゆるコンテンツ制作を行うほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動中。データのじかんでは編集・ライターとして企画立案から取材まで担う。1990年生まれ、広島県出身。


(TEXT・編集:藤冨啓之)

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