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「アフォーダンス理論」とは?具体例や3つの活用例まで徹底解説!

アフォーダンス理論を活用したデザインは、昨今では身近にある多くのものに活用されています。本記事では、アフォーダンス理論について、具体例や3つの活用例を用いて解説しています。

         

少しだけ考えてみてください。

なぜあなたは、初めて目にした椅子に正しく座ることができるのでしょうか?

なぜあなたは、はじめてアクセスしたウェブサイトを快適に閲覧できるのでしょうか?

それは、そのモノ(環境)があなたに意味を与えてくれているからです。

「え? どういうこと?」と戸惑う方も少なくないかもしれません。そこで理解のために知るべきなのが「アフォーダンス」という概念です。

デザイン思考やデザインによる問題解決の重要性が広まるにしたがって注目を高めるアフォーダンス。シグニファイアとの違いなども含め、本記事で分かりやすく解説します!

アフォーダンス理論とは

アフォーダンス理論とは

 

アフォーダンスは、“周囲の環境が我々に提供(afford)する意味や価値といった情報”を指します。アメリカの知覚心理学者J.J.ギブソン(1904-1979)によって、人間や動物が周囲をどう知覚し体を動かしているのかを研究する過程で、1970年代に提唱されました。

アフォーダンス理論のポイントは、知覚が網膜といった感覚器官への刺激によって発生するものではなく、環境から与えられるものだと発想した点にあります。

昨今、経営や顧客満足度にデザインの力が大きな影響を与えることが広く知られるにつれ、アフォーダンスの注目も高まってきています。

知覚のアフォーダンス理論とは

知覚のアフォーダンス理論とは、1988年、アメリカの認知科学者・認知工学者のドナルド・アーサー・ノーマンによって生み出された、アフォーダンスの考えをデザインに応用し、“アフォーダンスによって我々が身の回りの製品の使い方を左右される”という概念です。

例えば、ドアノブを回すことでドアを開けられることを知っている方は多いと思います。このように、知覚している環境やものは説明がなくても使い方がわかることが知覚のアフォーダンス理論です。ノーマンは“人を特定の行動に誘導するためのヒント”として用いられる知覚のアフォーダンス理論を、元来のアフォーダンスとは区別して「シグニファイア」と表現しています。知覚のアフォーダンス理論は、

アフォーダンス理論とシグニファイアの違い

アフォーダンス理論はギブソンによって提唱された理論でしたが、ノーマンによって提唱された知覚のアフォーダンス理論のことをアフォーダンス理論だという誤った解釈が広まってしまいました。

そこで、知覚のアフォーダンス理論のことをシグニファイアという言葉に置き換えました。つまり、アフォーダンス理論とシグニファイアの違いとは、”周囲の環境が我々に提供する意味や価値といった情報”がアフォーダンス理論であり、このアフォーダンス理論をデザインに応用したものがシグニファイアであるといえます。

アフォーダンスをビジネスで生かす UI/UXデザインの発想法

アフォーダンス、シグニファイアの概念はUI/UXデザインを考える際に大いに生かされます。

UIとはユーザー・インターフェースの略で、製品・サービスにおいて、ユーザー(User)の目に触れるインターフェース(Interface:接点)のこと。また、UXはユーザー・エクスペリエンスの略で、ユーザーがサービスを利用することで得られる体験(Experience)を指します。

冒頭に問いかけたように、人があるサイトのコンテンツを正しく閲覧できるのは正しいUI設計がなされているからです。例えば本サイト上部の「データのじかん」ロゴが大きく表示されており、そこをクリックすればホーム画面に戻れるという意味を受け取っているため、私たちは迷うことなくサイト内を回遊することができるわけです。もしもロゴを押してもホーム画面にたどり着かず、全く別のサイトへ飛ばされてしまうとなったら我々は戸惑ってしまうでしょう。

Webデザインに限らず、例えば駅のごみ箱はかん・びん・ペットボトル用の投入口は丸く、新聞・雑誌用の投入口は平たく設計されています。こうすることで、我々は「どこに捨てるべきか」と意識下で判断する必要すらなく、分別してごみを捨てられるようシグニファイアによって誘導されているというわけです。

ビジネスでアフォーダンスの考えを応用するならば、このように「正しいシグニファイアを与えられているか?」という観点を持つことが最初の一歩となるでしょう。アフォーダンスは視覚のみに限定されるものではありません。人は聴覚・嗅覚・触覚・味覚も活用して周囲の環境を捉えています。

ある感覚という切り口で考えた場合、ユーザーはどのようなアフォーダンスを受け取りうるか? という発想は、製品企画などで画期的な発想を生み出そうとするときにも役立つかもしれません。

アフォーダンスの具体例“「ルンバ」の設計につながった?”

アフォーダンス理論が現実の製品として結実している例として、お掃除ロボット「ルンバ」が挙げられます。

ルンバはそもそも、火星における鉱物探索用ロボット「クリーチャー」の研究成果を生かして、オーストラリア出身のロボット研究者ロドニー・アレン・ブルックスらによって開発されました。障害物や段差、床の肌理(きめ)の違いを乗り越え、床掃除を行い、最後には充電器へと帰っていくルンバ。今では当たり前のように定着していますが、ロボットが一定でない環境に対応して、人間のように臨機応変に動くには「サブサンプション・アーキテクチャ」という発想が必要でした。

これは条件反射的な単純なモジュールを積み上げて階層構造を作り、上位の知的なふるまいを実現するという方法で、ブルックスが昆虫の動きを研究する中で構築されたといいます。
そして、周囲の環境を知覚し、判断してから変化に対応するのではなく、環境に出会い、その都度反応することで目標を達成するという点で、アフォーダンス理論に基づいています。

この環境への反応を積み上げて知的な作業を行うという発想は、豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授の岡田美智男氏が開発した弱いロボット「トーキング・ボーンズ」のようなコミュニケーションロボットにも用いられました。

 

その他のアフォーダンスの3つの身近な活用例

ルンバ以外にも、アフォーダンス理論やシグニファイアが活用されている身近なものがあります。

今回は、アフォーダンスの3つの身近な活用例として以下の3つを紹介します。

  • 駅名標
  • 信号・交通標識
  • 操作ボタン・接続端子

それぞれの活用例から、アフォーダンスについての理解を深めましょう。

駅名標

駅のホームには現在の駅名と、両隣の駅名がわかる駅名標が設置されています。

駅名標ではアフォーダンスやシグニファイアを活用したデザインが用いられており、「前の駅→現在の駅→後の駅」のように駅の順番がわかりやすいように、矢印のようなデザインが駅名標に組み込まれています。このようなデザインによって、電車の進行方向を間違えることなく、電車の利用が可能です。

信号・交通標識

信号や交通標識のデザインでは、アフォーダンスやシグニファイアを活用しています。

例えば、多くの人が信号を見たときに、「青=進め」「黄・赤=止まれ」だと判断できますよね。これは、アフォーダンスやシグニファイアが活用されているからだといえます。また、交通標識でも、駐車禁止であればバツのマークが用いられており、右折禁止であれば矢印に斜め線のマークが用いられているような、見た人が説明なしでもわかりやすいデザインとなっています。

操作ボタン・接続端子

テレビやラジオなどの電子機器の操作ボタンや接続端子も、アフォーダンスやシグニファイアが活用されている事例の1つです。

再生ボタンは三角、停止ボタンには四角の記号が用いられていたり、早送りや巻き戻しのボタンには三角を組み合わせたようなデザインになっていたります。色で分かれている接続端子を見たことがある方は多いと思います。これもアフォーダンスやシグニファイアを活用したデザインです。

終わりに

アフォーダンスは私たちがこの世界を捉え、反応するにあたって、どのようなシステムが働いているかを説明する概念です。「なぜプロの卓球選手は高速で飛んでくるボールを正確に打ち返すことができるのか?」「ソムリエは微細なワインの味や香りの違いを区別することができるのか?」といった謎の解明にもアフォーダンスの考えは関わります。

複雑な概念に思われるかもしれませんが、まさに私たち自身に深くかかわる重要な思想として、押さえておきましょう。

(宮田文机)

 

参照元

・佐々木 正人『新版 アフォーダンス (岩波科学ライブラリー) Kindle版』、岩波書店、2015
ギブソンの生態学的心理学の書誌情報ページ┃勁草書房
研究紹介ー知能ロボットの巧みな動き┃川副研究室
ルンバの動きは“ランダム”か?――実は“臨機応変”タイプだった┃IT media NEWS
数理的発想法④「弱い」ロボットが新しい「人間観」を切り開く┃HITACHI
具体例から考えるアフォーダンスとシグニファイアの違い┃SEVEN DEX POST
アフォーダンス┃ferret
助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと┃リクルート
弱い一歩 自由な地平へ歩き出す┃リベル

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