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いまさら聞けないIT用語:次世代インターネットの主役「IoT(モノのインターネット)」とは?

         

劇的に効率化したIoT活用事例とは?

IoTの導入によって改善される分野は多岐にわたります。

まず、スマートデバイス、スマートハウス、スマートシティーなど「ものそのものの機能性」を改善するものがあります。また、医療・ヘルスケア分野、製造業分野、農業分野などの「行為の効率性」を改善するものもあるのです。ここで紹介するのは、産業分野での劇的な効率化が見られた例です。経済を語るときに「IT投資」という言葉が出てくるように、IT関連を充実させるにはデバイスやシステムへの大きな投資が必要であると一般的には考えられています。IoTに関しても同じようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、アイデア次第では非常にコストパフォーマンスの高い仕組みが構築できるのです。

愛知県碧南市にある自動車部品等を製造する中小企業である旭鉄工は、IoT化によって設備投資で4億円、労務管理費で1億円の削減に成功しています。しかし、既存のIT企業が提供する高額なIoTサービスパッケージを使ったわけではありません。中小企業でIoTを導入するときには、設備投資コストが問題になります。旭鉄工でも、当初IT企業が提供するIoTシステムの導入を検討したのですが、コスト的に難しいという結論になったようです。そこで、秋葉原の電子部品ショップに通って電子パーツを調達し、自前でシステムを構築するという「手作りIoT」戦略をとったのです。管理すべき項目は、製造ラインが正常に動いているかどうかでした。

工場の製造ラインが正常に動く割合は「可動率」と呼ばれます。可動率が高ければ、時間に対しての製品が作られる割合が高くなり、製造コストが低下して収益向上に貢献するのです。旭鉄工では、可動率のデータを収集するために、秋葉原で購入した部品を使って、機械が正常な動作をしているかどうかモニターしています。その部品には、1個50円の光センサーや1個250円の磁気センサーという、非常にコストパフォーマンスに優れた汎用部品を使っているのです。収集されたデータは、従業員のスマートフォンや社内モニターに転送されて業務改善に活かされているのです。このIoTシステムでは、0.1秒単位の正確な作業時間データが収集できるため、それを0.1秒単位で効率化する改善活動が行われています。たとえば、ある部品の製造では、改善前は可動率66%で1個あたりの制作時間が5.1秒でした。これを、IoT化による改善で、可動率80%で1個あたり3.9秒まで短縮し、時間あたりの製造個数を465個から738個まで向上させています。全工場にこのような「手作りIoT」を導入し、改善に活かすことによって設備投資で4億円、労務管理費で1億円の削減という効率化を達成したのです。

IoTで生まれる3つの可能性

IoTによって3つのことが可能になるといわれています。


1つ目は、IoTでモノを遠隔操作することです。


たとえば、スマートハウスなどでは生活する際に利用する、照明・空調・上下水道などが外出先からコントロールできるようになります。


2つ目は、IoTで遠くに離れたモノの状態をリアルタイムで知ることです。


モノの状態とは、具体的には、工場内の機械の稼働状況、植物の生育状態、また、ペットの健康状態などがあります。これらの状態について、センサーを使ってモニタリングすれば、故障を未然に防いだり、適切な収穫時期がわかったり、医療サービスを受けるべきかどうかの判断が、監視コストを抑えながら可能になるのです。


3つ目は、離れたモノ同士のあいだでデータのやり取りが可能です。


これまでは、センサーを搭載したデバイスで収集した情報は、サーバーなどに集められ集中管理されるのが一般的でした。IoTデバイスになると、サーバーを経由せずに、デバイス同士で情報を共有し、自律的な制御が可能になるのです。

IoTで問題になる3つの課題

IoTデバイスが世の中に大量に溢れ出したときに問題となる3つの課題が指摘されています。

1つ目は、データの所有権の問題です。

センサーを搭載したさまざまなデバイスから収集された情報は、おそらくクラウドサーバー上に集積されます。このとき、データの所有権は誰にあり、利用上の許認可権は誰が持っているのかが問われるのです。

2つ目は、既存の法律との関係です。

新しい技術を使って、新しいコンセプトで展開するのがIoTデバイスとその産業です。これには、法整備が追いつかず、場合によっては足かせになることも考えられます。

たとえば、タクシーのワイパーに付けられたIoTデバイスで降雨情報を収集・活用しようとしたところ、天気情報を独占的に扱う法的権利を持つ気象庁からクレームが出たことがあります。

3つ目は、責任分界点の問題です。

IoTデバイスを使って収集した情報は、だれがどこまで責任をもつのか不明確なところがあります。センサーのついたデバイスの所有者なのか、それを活用する事業者なのか、センサーメーカーなのか、責任の所在は明確になっていません。法整備などの制度的対応が期待されるところです。

 

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