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インドの世界最大のスタートアップキャンパス「T-Hub」–世界の一次情報からDXの光を照らす「World DX Journal vol.16」

「データのじかん」の新特集、「World DX Journal」へようこそ!世界各地で進行するデジタル変革(DX)のリアルな声を、まるで現場にいるかのようにお届けします。報道のバイアスを排除し、一次情報を基に、日本から世界のDX動向をリアルタイムでキャッチ。読者の皆さんも、各地のデジタル最前線から、世界がどのように変貌しているのかを目の当たりにしませんか?単なる情報共有を超えて、世界を「読む」ことで、これからを生き抜くヒントを一緒に見つけましょう。この冒険に、ぜひご参加ください。

第16弾では、インドの世界最大のスタートアップインキュベーション施設「T-Hub」を訪れたデータのじかんFRIENDの美谷広海さんが現地からレポートします。

         

起業家を海外に派遣する経産省のJ-Star Xインドコースに採択され、インドのバンガロールとハイデラバードを訪問してきました。筆者はインドは今まで、8回ほど訪問していますが、バンガロールの訪問はコロナ禍直前の2019年に続き、2回目、そしてハイデラバードは初の訪問となりました。

世界最大級のハイデラバードのスタートアップキャンパスを中心にインドのスタートアップシーンをご紹介したいと思います。

インドのスタートアップシーンの盛り上がり

インドのスタートアップシーンは近年、目覚ましい成長を遂げています。2016年に開始された政府の「スタートアップ・インディア」イニシアチブの下、2023年6月にはスタートアップ数が10万社を超え、ユニコーン企業の数も米国、中国に次いで世界第3位となっています。

India@75: Startups & The Age Of Tech(Inc42)より著者作成

筆者が今回の前に訪れたのは、2019年の秋のバンガロールで開催されたTech Sparksというスタートアップイベントへ出展するためでしたが、バンガロールでのスタートアップのインキュベーション施設の充実度合いや、近年の経済成長も含めてコロナ禍を経て、この5年で更に勢いを増しているのを実感させられました。

バンガロール中心部のWeWorkは、中央が4階分吹き抜けのイベントステージとなっています。

世界最大級のスタートアップキャンパス「T-Hub」の全貌

特に、テランガナ州の州都ハイデラバードに位置するインキュベーションセンター「T-Hub」は、州政府、教育機関、多国籍企業、投資家などと連携し、スタートアップ企業への支援を行っています。2022年6月には新施設「T-Hub2.0」が開所され、2,000社以上のスタートアップ企業がこの施設を利用しています。

大きすぎて、全貌がうまく捉えられていません。

T-Hub2.0は10階建ての巨大なビル。ですが、周りにある建物も、ラスベガスの巨大ホテル郡と同じ用に、かなり大きなため、あまりスケール感が伝わってこない気がします。実際には、近づくと、低層フロアー部分だけでもかなり大きな施設であることがわかってきます。

中に入ってみると、世界最大のイノベーションキャンパス、という文言が誇らしげに掲げられていました。

確かに、大きな施設ですが、世界最大というのは少し誇張なのではないか。有名なパリのStation Fなどと比較してみて、そこまで大きいのか、と思い、後で、グーグルマップで比較してみた図がこちらです。左上が、ハイデラバードのT-hub、右上が、パリのStation F、左下が日本最大のインキュベーション施設である名古屋のStation Ai、そして右下が、フランス、リールにあるEura Technologiesのインキュベーションキャンパスです。それぞれ同尺で画像を並べてみました。

T-Hubの敷地の右側に建っているのが、10階建てのビルである、T-Hub2.0。中央が駐車場となっており、左上にはT-WORKSという後に紹介するこれも巨大なメイカースペースがあります。建物単一の長さ、大きさということでは、確かにパリのStation Fはとても巨大なのですが、旧駅舎を改築したこの建物の中央部分の多くは吹き抜けとなっているため、確かに床面積ということでいえば、T-Hubが最大といえるかもしれません。

吹き抜け空間が大きい、長いパリStation Fの内部。

ハイデラバードT-Hubの建物の内部もポップで、今どきのスタートアップ関連施設という感じです。

ビルの5階部分が少し括れた形になっていて、建物をぐるっと囲むテラススペースになっています。

こちらのテラス席で、ランチをいただきました。ハイデラバードはインド人にとっても辛いといわれるビリヤニが名物ののこと。非常に美味しかったです。そして、以前は、インドでは初訪問の人はお腹を壊すと言われていて、私自身、学生時代にインドに初めていったときはお腹を壊し、1週間トイレから離れられなくなりましたが、今回は一緒にインドを訪問した10数社のスタートアップのメンバーの中で、お腹を壊した人は一人もいませんでした。インドの衛生環境も急速に良くなってきているのかもしれません。

このテラス席から、駐車場越しに見えているのが、T-Worksという工作機械やデジタルツールを使って試作・開発・製作を行える共有の作業スペース、いわゆるメイカースペースです。これもかなり大きいですね。日本では、ひとつのビルまるごとメイカースペースというのはないんじゃないでしょうか。

4階建て、吹き抜けのかなり巨大なメイカースペースです。

CNCルーターや、レーザーカッター、3Dプリンタなどの設備が充実しているはもちろん、予約システムや部屋での掲示の仕方なども非常に良くできていました。日本で、これだけ設備もシステムも充実しているところはみたことがないです…。

唯一、古き良きインドらしいと感じるところがあったのは、この消火用の砂パケツくらいでした。

こうした施設から、今後、どんなスタートアップや、プロダクトが生まれてくるのか興味がつきないですし、私自身、今後、インド進出や、この施設へ再訪する機会をつくることができたら、と強く感じました。

最後、夕方になりT-Hubを失礼させていただくときに、ビルの外装がLEDで光っているのに気がつきました。イノベーションといえば、これまでは米国が世界を強く牽引してきましたが、人件費を含めた固定費がかなり上昇してしまっているので、今後はインドなどの新興国がイノベーションの台風の目になっていくと感じています。

データのじかんFRIEND:美谷 広海FutuRocket CEO & Founder
株式会社Cerevoにて2015年1月からSenior VP, Gobal Sales & Marketingとして、世界各国で展示活動、営業活動に従事。CES(3年連続)、MWC、SXSWを始め、海外30以上のイベントで展示を行う。
 
 

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