About us データのじかんとは?
発動機・農機・建機・小型船舶メーカーのヤンマーは、2013年4月にヤンマーホールディングス株式会社(以下ヤンマーHD)を母体とした持株会社制に移行した。創業110周年を迎える2022年度には、2025年度までの中期戦略「Change & Challenge MTP2025」を策定。もちろんDXも推進中で「DXに対応する次世代経営基盤」は25年度に向けた5つの戦略課題の1つにも挙げられている。2022年7月にはDXの旗振り役となる「デジタル戦略推進部 」も立ち上がった。
この日行われた「ヤンマーデータ活用ユーザー会」は、デジタル戦略推進部 DX推進グループが主催する社内イベントで「ヤンマーグループ内におけるデータ活用の促進」が目的。冒頭、この日の進行役を務めたDX推進グループ・山根寛司氏が開会のあいさつを行った。
「今年7月に発足したDX推進グループでは『クイックウィン』『ローコードツール活用』『データ活用』の3つをメイン領域とし、各機能部門でDXを推進しやすい環境・仕組みづくりを行っていきます。これまでは(グループ内の)横横で連携する機会になかなか恵まれなかったと思いますが、今回第1回目を迎えるユーザー会からは部門・事業を横串しで見て、同じ課題に直面する仲間を見つけてほしい。組織をつなぎ合わせ、情報共有することで、ヤンマーグループが1つとなって取り組む文化をつくっていきたい」(山根氏)
続いて登壇したのは、奥山博史氏。同氏は住友商事、Interacid Trading S.A.(スイス)、ボストン コンサルティング グループを経て、2015年ヤンマーHDに入社。経営企画部長、マーケティング部長を歴任した後、2018年にヤンマー建機の専務、翌2019年に同社社長に就任。2022年6月からはヤンマーHD取締役CDO(最高デジタル責任者)として、ヤンマーグループ全体のデジタル化・DXの指揮を執っている。
「デジタルでなければ達成できない、あるいはお届けできない付加価値をつくり出し、それを通じてお客様に貢献する。それがヤンマーグループとしてのデジタル戦略の考え方です。データ分析・データ活用にはいろいろな側面がありますが、特に製造業においては、GAFAMのようなプラットフォーマーでも、現場にある情報をデジタル化するところはまだまだ浸透の余地があるように思います。現場にある暗黙知、あるいはすりあわせ技術みたいなものを見える化・デジタル化すれば、それは日本の製造業全体の強みになるでしょう。その意味で皆さんは日本の国際競争力を向上させる牽引者の1人。重要な取り組みをしている認識を持ち、進めてほしいと思います。今日のユーザー会では、グループ会社からベストプラクティスのシェアリングもします。内容を良く理解頂き、自分が取り組むデータ分析・データ活用に生かしていくとともに、周りを巻き込みながら活動していってください」(奥山氏)
第1回目となる今回は、ヤンマー建機株式会社(略称・YCE、以下同)、ヤンマーグローバルCS株式会社(YGCS)、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社(YTP)の3社が、データ活用事例を共有した。各社の取り組みを順に見ていこう。
YCEチームの発表者は、ヤンマー建機株式会社 戦略部 DX推進グループ 兼 品質保証部 品質企画グループ 課長の田中重信氏だ。
Manufacturing efficiency(生産の効率化)、Decision-making speed and refine(意思決定のスピードと洗練)、Automation of operation and efficiency of operation(運用の自動化・効率化)を「DXの三本柱」に据えるヤンマー建機は、ウイングアーク1st「Dr.Sum Connect」を活用し自社に散在する様々なシステムなどから大量のデータを統合。さらには「MotionBoard」「MotionBoard Cloud」も併用し収集したデータのビジュアライズ化も実現している。
2022年度の主な活動には、カメラ連携・IoT連携、データウエアハウス(DWH)によるデータ活用、テレマティックスデータの活用、さらには勉強会・WG活動、ITインフラ改善を挙げた。生産現場の映像を時系列で追うことができるビデオカメラ連携の取り組みのトライアルは、先般開催された「updataDX22」(2022年10月)でも共有されたが、この日はさらにバージョンアップした最新版デモが公開された。
次に、戦略部DX推進グループの沼田慎平氏が、業務自動化コミュニケーションツール「dejiren」の活用事例を紹介した。
dejirenはあらゆるクラウドサービスと連携しコミュニケーションから意思決定までの全てをパソコンやスマートフォン、タブレットのチャットシステムから行えるようにするデジタルツールだ。同社では、製造部の塗装工程での不具合集計作業において同ツールの活用を検討開始した。
これまで行われていた一連の作業フローは「不具合発見→紙の不具合記入表に記入→1日の終わりに不具合記入表を回収→翌日Excelへ転記→集計して改善活動に活用」というものだった。同フローを見直すと「手作業での転記が発生」「ヒューマンエラーが置きやすい」「情報反映に時間がかかる」などの課題が見つかった。そこで「記入→回収→転記・集計」の部分をdejirenで自動化。上記のいずれの課題も解決され、効果はてきめんだったという。
今後は現場での実証を行い、他部門の業務への展開も検討していく予定。この日は実際にdejirenを操作したデモも共有された。
続いて登場した品質保証部 品質保証Gの副枝直氏は、マシンダウン短縮化による業務改善について報告した。
品質保証部の任務は、市場で発生した品質にまつわる問題をいち早く捉え原因の追究・是正を行うこと。製品不具合が発生した場合は、不具合情報が市場品質情報システム(SEAQ)に登録され、それを品質保証部が確認し、回答フィードバック、重要度判定、調査依頼などを行うフローとしている。
品質保証部は同フローの短縮化のため「MotionBoard」「Dr.Sum」を導入。不具合情報が同一システム内に統合され、自動集計や帳票出力まで即座に行えるようになったことで、大幅な業務短縮化が進んだ。
YGCSチームの発表者は、ヤンマーグローバルCS株式会社 企画部 IT改革PJ室の荒居誠氏と安井聖哉氏。
同社は2020年4月、3社統合により設立。荒居氏と安井氏の両名はそのときヤンマー情報システムサービス株式会社(YISS)から同社へ出向した。同社は2011年に正式ローンチしたグローバル販売管理分析システムであるGPMS(Global Parts Management System)に「Dr.Sum」「Dr.Sum EA Visualizer/MotionChart/for Web」を採用しそれを長らく活用してきた。
しかし10年近くの使用を経て、CPU使用率の過大、対象法人数の増加、サーバー老朽化などの課題があり、システム刷新を決意。「Dr.Sum EA Visualizer」などはすでにサービスが終了しているため、新たなGPMS構築に当たっては複数の競合との中で製品の検討を進めた。
その結果、「Dr.Sum/MotionBoard」を選択した。荒居氏は選定理由として「今まで蓄積してきたデータを活用できる」「グループ会社でも利用が可能だった」点を挙げた。
新たに生まれ変わった「新・GPMS」はユーザー会でも公開された。
さらに同チームは「Dr.Sum/MotionBoardをGPMSだけで使用していてはもったいない」と、社内の他シーンでの活用の検討を進め、その結果、YGCSでのオーナーとなるシステムや他の月次データなども全てDr.Sumへ一元化する方針を打ち出した。
特に最近は、各部門の担当者がさまざまなシステムで資料作成を行っているため、「同じ指標(例:ドルの為替レート)を使っていても、担当者や資料により数字の変化が生まれる」「資料作成することが仕事の目的になってしまっている」などの問題が発生していた。社内の情報一元化・特定情報の収集・分析を全てDr.Sumが担い、同時にMotionBoardによるダッシュボード化が実現したことで、「データ活用の明るい未来へ導くことができた」と安井氏は話した。
個別発表の最後となるYPTチームの発表者は、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社 小形事業部 企画管理部の岸山悟氏です。
前職では中堅小売会社の社内SEだった岸山氏は、2016年8月ヤンマーパワーテクノロジーへ中途入社。入社後は「営業部の受発注システム全体の改善」をミッションに活動してきた。しかし、いざシステム改善提案を作成しようとすると課題が山積。「予算がない・情報がない・浸透していない」という状況下で、システム改善の検討を重ねたという。最終的にたどり着いた結論は、「データ利活用によって、現状業務が画期的に改革・改善されるという共通認識を持ってもらう必要がある」ということだった。
そんな折の2017年ごろ「自分自身も関わり、調整作業が苦行のように発生していた」というエンジン内示数集計の作業フローに業務課題を抱いた岸山氏は「足がかりをつくるチャンス到来」とばかりに情報の一元化を提案、新たな内示数集約システムを開発した。
岸山氏は以降も業務上の課題を1つずつ精査し、その都度新ツールの導入・システムの刷新・改善などを繰り返した。データ活用ができるようになっていくたび、社内には「最近業務が楽になってきた」との意見が広まり、当初の思惑通り「データ活用の理解」が深まってきたという。
岸山氏は2021年7月営業部から企画管理部に異動。現在は営業部で実施してきたデータ利活用を小形事業部全体に展開中だ。なお同部データ利活用基盤として、2022年度から新たにDr.Sumも選ばれた。
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