みなさんはESG投資をご存知でしょうか?
データのじかんでは、以前にもESG投資に関する記事を公開しましたが、実はESG投資には7つの形態があり、それぞれ特徴のある投資方法となっています。ここでは、国際団体の発表資料を引用しつつ、さらにESG投資に迫ってみることにしましょう。
世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)。2年に1度、ESG投資の統計報告書であるGSIR(Global Sustainable Investment Review)を発表していますが、GSIAはESG投資を以下の7つに分類しています※1。
あらかじめ特定の社会的または環境に対する基準を設け、それを満たさない企業を排除すること。武器製造企業、原子力発電企業、児童就労を強いる企業などに適用されます。アルコールやたばこ、ギャンブル製品の製造企業の銘柄は「罪ある株式」とも呼ばれ、これらを排除する投資信託も流通しています※2。
従業員政策、環境保護、人権などの社会問題や環境問題でリーダーシップを発揮している企業に投資すること。環境汚染や職場慣行、ダイバーシティ、製品の安全性など、複雑な問題の分析が必要となります※2。
ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する方法。国際基準とは、例えば1999年にアナン事務総長(当時)が提唱し、2000年に発足した「国連グローバル・コンパクト」が挙げられます※3。
投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする手法。ここでの非財務情報とは、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のことを指します※3。
サステナビリティ(持続可能性)を全面に謳ったファンドへの投資。特に再生可能エネルギー、持続可能な農業等に関する投資が有名※1。
社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業に対して行う投資。インパクト投資に注目したポートフォリオには、社会的に望ましい成果をもたらす製品やサービスを提供する企業の銘柄が集まっています※2。
株主として企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法。上記6つとは異なり、投資(候補)先企業に対しエンゲージメント(関係構築)や議決権行使を積極的に行う、いわゆる「アクティビスト(物言う株主)」型の戦略です※1。
上記の7つの投資の種類別の投資額を比較してみましょう。下図は2016年のGSIRから引用しています。
これによると、7つの投資の中で一番多いのは「ネガティブスクリーニング」。そのあとに「ESGインテグレーション」「エンゲージメント・議決権行使型」と続きます。もっとも少ないのが「サステナビリティテーマ投資型」となっています。
2014年と2016年を比較すると、7つのESG投資すべてが伸びています。世界的にESG投資額が増えていることの表れです。
実は生活に密着している!?なぜ今「ESG投資」が注目されているのか?| データのじかん
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの単語の頭文字を取った言葉です。
ESG投資拡大の背景には、以下の3つがあると考えられます※4。
資源の枯渇、気候変動の深刻化などにより、世界では様々な規制が強化されました。また労働者の人権問題への関心も高まってきており、投資家にとってESG課題が投資リターンを考える上で看過できないとの認識が浸透しています。
2010年に各国で制定されたスチュワードシップ・コード(参考記事)。こちらでは、投資先企業の企業価値を向上し、受益者のリターンを最大化する狙いのもと、機関投資家の行動規範が定められています。その中に「投資先企業のESG課題への対応状況把握や対策強化の促進」も含まれており、これがESG投資を後押ししていると思われます。
2013年5月、サステナビリティに関する国際基準の策定を行うGRI(Global Reporting Initiative)が第4版ガイドラインを策定しています。このように、ESG情報に関する開示を充実させる取り組みが拡大しており、ESG投資の拡大にも寄与しているとみられます。
日本のESG投資額は2014年に70億ドルでした。
2016年は4740億ドルと急拡大しましたが、それでもこれは世界のESG投資総額の3.4%にとどまっています※5。日本のこの低調さは、そもそもESG投資の対象となる日本の大手企業が少なく、また投資信託などの運用会社や金融機関もこれを重視してこなかったからでしょう※6。
世界的にはますます重要視されるESG投資ですが、今後、日本国内でもESG投資の普及が望まれます。
(安齋慎平)
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