近年、転職、副業というキーワードをよく耳にします。今まで日本が歩んできた終身雇用という考え方が変わってきているなかで、転職を考えるビジネスパーソンも増えてきています。転職や就職というと、ES(エントリーシート)の書き方、面接での立ち居振る舞いなどの、刹那的な場面でのスキルに傾倒した書籍が多いですが、松本利明氏による著書「いつでも転職できるを武器にする」では、自分の生まれ持った資質を、今後の人生でどう活かすかということについて考えられています。新たなスキルを学ぶというよりも、本来の自分の能力を最大限に発揮することを目的としているので、ビジネスパーソンだけではなく、万人に読んでもらいたい一冊です。
インタビュー記事に入る前に、まずは近年の転職に関するデータを見て見ましょう。下のグラフは内閣府「日本経済2017-2018」の中にある、転職市場の動向を示したものです。これによると、近年の転職率は緩やかに増加傾向にあると言えます。
では、転職率が増加しているなかで、人々は仕事に対してやりがいや、満足感を感じているのでしょうか。
厚生労働省「働く人の意識と就業行動」の中にある、「仕事の満足度(主要項目別)」を見てみましょう。
これによると、仕事に対する満足感が近年減少傾向にあることがわかります。昔よりも多様な働き方が可能になり、入社する企業の選択肢が広まったことで、かえって自分に不向きな企業に入社してしまうということが多くなってきているのではないでしょうか。
転職や新卒で自分の不向きな企業を選択しないためにも、自分の「資質」についてこの記事をもとに再考していただけると幸いです。
岸田 – どのような動機で本書籍を執筆されたのでしょうか?
松本 – 今と昔ではキャリア形成の手法が異なっています。昔は年功序列で一社に長く勤めるのが当たり前でしたので、処世術や専門スキルというところにフォーカスした本が多かったですね。今の若い世代の人たちは、本能的に転職をするという生き方を察知しています。しかし、転職するにしても選択肢が広すぎて何をもとに転職すれば良いかわからない。そこで、自分自身の「資質」に注目することで、より良い転職をしてもらいたいという気持ちでこの書籍を執筆しました。
岸田 – 確かに今は多種多様な企業がありますからね。昔のように選ぶ企業が少なければ多少のミスマッチも目を瞑るところですが、多様性の中でミスマッチが目立ってしまうのかもしれませんね。だからこそ「資質」に着目した企業選びが必要というのも納得です。
岸田 – 以前「学歴フィルター」の著者である福島直樹氏に、採用に隠された学歴フィルターの話を伺いました。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成に携わった松本さんから見ても、やはり仕事ができることと、学歴は関係があると感じますか?
松本 –これまで数多くのリーダー候補たちに会ってきましたが、結果的に学歴が高い人たちが多かったのは事実です。やはり大学生などはサークル、アルバイトなど似たような経験をせざるを得ないので、効率的な採用においては学歴が使われてしまうのは仕方がないことだと思います。このほかにも、同じ大学や同じ性質を持つ人は親近感を感じてしまうということはあると思います。よって、高学歴な人たちが集まる会社には同じ属性を持つ人たちが集まりやすいということはあるかもしれません。
岸田 – AIが発達し、採用が効率的になればなるほど、学歴というフィルターは活用されていくのかもしれませんね。
岸田 – 向いていると好きなことはどちらがより活躍できると思いますか
好きなことは9割が情報によって形成されていますので、人生において変化があることが多いです。例えば、小さい頃は戦隊モノが好きだったという人も、大学を卒業するころには新たに好きなものができているわけです。一方、資質というのは、20歳頃までに形成されるものであり、なかなか変わりにくいものです。よって、まずはいかに資質や向いていることを見つけるかということが重要で、好きなことは生きていく中で都度見つけていけばいいと思います。例えば、「人を楽しませる」という資質があれば、ユーチューバーではなくても、マジシャンだとか、ほかに好きなことはいくらでも見つかると思います。
著者:岸田 英(キシダ ヒデ)
【経歴】
2011 年 東京大学工学部卒
2011 年 インフラ企業に就職
2015 年 同社退社
2015 年 エスカルチャー株式会社設立 代表取締役兼学習塾 ESCA 塾長
【概要】
東京大学卒業後、サラリーマン経験を経て、2015 年にエスカルチャー株式会社を設立。「受験勉強では終わらない、社会で生きる力を養う」という理念で、学習塾の運営と、海外インターン/海外留学コンサルティング事業、就活支援事業を展開している。 学習塾の運営においては、自らも教壇に立ち、サラリーマン時代の経験を活かして、「学問の体系化」「理論と現実」「回答の見せ方」「問題文を読む意味」「学習における知識と思考のマネジメント」など、勉強が社会にどのようにつながっているのかを教えている。
【ウェブサイト】
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