生体データ、という言葉、聞いたことありますか?
生体データは、その名の通り、人々の体に起こった様々な事象をデータ化する、というもの。生体データ管理の精度が上がれば、人間の体に起こった病気や怪我などの異常を早急に察知し、人命救助にも繋がります。
そこで近年、特に注目を集めているのがウェアラブルなデバイスを活用した生体データの取得です。
今年9月、iPhone11とともに発表された新たなOS、iOS13でも、とりわけ大きくアップデートされたのが、ヘルスケアアプリケーションでした。
デバイスを持った状態での運動量を記録するアクティビティから食事管理、さらには心臓機能や月経周期などもデータとして一括で管理できるようになったのです。
スマホを始め小型の端末を持つのが当たり前、になりつつある時代、私たちの健康管理の方法もデバイスを活用するのが一般的になっていくことが予想されます。
そこで今回は、デバイスによる生体データの取得・管理の現状を紹介していきたいと思います。
まず、デバイスによる生体データの取得って本当に意味があるの?なんて思っている方に見ていただきたいのが、Apple Watchによる救急通報が持ち主を助けた、という事例です。
アメリカのワシントン州でマウンテンバイクを運転していたボブ・バーデットさんは、思いがけず転倒し、頭を強打、意識を失ったそうです。その時、彼は腕にApple Watchをつけていました。
大きな衝撃を検出したApple Watchは持ち主であるボブさんの意識の有無を確認するべくアラート音を鳴らしましたが、反応がなかったため、位置情報を救急に通報、さらに緊急連絡先に登録されていたボブさんの息子、ゲイブさんにも緊急事態であることと位置情報をメールで知らせたそうです。
ゲイブさんが共有された場所に行ってみるとボブさんはすでに病院に搬送され、処置を受けていたということで、その後、ボブさんは無事に意識を取り戻したということです。
一連の事件の流れをゲイブさんがFacebookで共有すると瞬く間にバズり、投稿には60万件を超えるリアクションが集まりました。
他にも、オーストラリアでてんかんの発作を起こし転倒した40代の女性が同じくApple Watchによる通報で早急に救急搬送された事例もあり、その力は侮れません。
ちなみに転倒検出機能は、Apple Watchに年齢を設定していて、その年齢が65歳以上の場合は自動にオンになり、そのほかの場合は、手動で設定できるそうです。
Apple Watchによる救助要請の事例は、転倒などによる外部刺激がトリガーになっていますが、最近では、皮膚を通じ体内の情報を取得し、さらに精密な生体データ管理を実現しようという動きも活発になっています。
特に、人々が身につけやすい薄型のセンサーの開発は、様々な研究開発チームが取り組んでいます。
その一つがスタンフォード大学が開発したバンドエイド型の生体センサー「BodyNet」です。
このセンサーは皮膚から発されるシグナルを解析できます。さらに、研究チームは、近距離の無線通信で多くの情報を共有できるシステムを開発。受信機は洋服などに取り付けることができるそうで、スマート衣服などにつなげていきたいという事です。
また、日本でも、ウェアラブルな生体センサーが生まれています。
それが生体が発するシグナルを読み取る特殊な布を使った「hamon」です。
この布を構成するのが「AGposs」と呼ばれる特殊な繊維です。この繊維はナイロンに銀をメッキしたもので、導電性に優れており、さらに、抗菌、防臭、保温、断熱、制電効果も持っているということです。
さらにhamonから取得したシグナルは小型の充電器生トランスミッターから発信され、スマホの専用アプリなどでモニタリングもできるそう。
現在はスポーツや医療、介護の分野での実用化に取り組んでおり、生体データの記録を解析し、今後の動きを予測することもできるようにしていきたいということです。
しかし、なぜ今、生体センサー分野が大きく脚光を浴びているのか?そのきっかけの一つとも言えるのが5G回線の到来です。
超高速、超大容量、多接続の5Gは刻一刻と移り変わる生体情報のデータを即時に送受信できます。
そのため、従来の回線では難しかった膨大なデータのリアルタイムでの管理・解析が可能になるのです。
さらに、生体データを様々な外部デバイスと接続することで、緊急の事故に即座に対応したり、防いだりすることもできます。
Apple Watchが人命を救助した事例はもちろん、例えば、自動運転機能を搭載した車を運転している時に、運転者が急な発作などで運転不能になった場合、瞬時にAIの運転に切り替えたり、熱中症など人々が気づきにくい体の異常を早々に感知したり、とその活用のバリエーションは様々です。
また、心拍数などから精神状態をモニターし、職場や学校などでのストレスを検知して、改善策を呼びかけることで、人々のウェルビーイングをより加速させるという使い方も検討されています。
その一方で、生体データの取得は、より詳細な個人情報の取得、ということもあり、情報をどのように秘匿・管理していくか、という面での課題も大きく、さらなる技術発展が必要な分野でもあります。
5Gの到来で私たちの健康管理がどう変わっていくのか、今後も期待していきたいですね。
今回は、今年に入って注目度が益々高まってきているウェアラブルな生体データ管理を取り巻く現状について簡単にご紹介いたしました。
まとめると以下のようになります。
現在研究段階にある最新技術が私たちの手元に来るにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、スマートフォンのアプリやスマートウォッチなど、ウェアラブルで生体管理ができるツールやサービスはたくさんあるので、興味がある方はぜひ、手に届きやすいものから使ってみてはどうでしょうか?
【参考引用サイト】 ・BodyNet - Techable(テッカブル) ・「iOS 13」の新たなヘルスケア&フィットネス機能で私はトラッキングを再開できる? ・Apple Watch Alerts Emergency Services After Man Suffers Hard Fall From Bike ・生体データを送信する「バンドエイド型センサー」が実現間近 ・生体データで「自分を管理する」時代がやってくる ・hamon | 株式会社メタテクノ ・AGposs - ミツフジ株式会社 ・Apple Watchの転倒検出がまたもお手柄。救急車を呼び女性の命を救う ・Apple Watch で転倒検出機能を使う - Apple サポート
(大藤ヨシヲ)
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