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ブルシットジョブとは?無意味でどうでもいい仕事が増える理由を日本のデータと合わせて解説

本記事では、2020年の7月末に発売された「ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論」により注目された、ブルシットジョブについて、実際の本の内容を踏まえて解説しています。ブルシットジョブとはなんなのか、日本にはどれくらいのクソどうでもいい仕事があるのか、具体案を出しつつ解説していますので、ブルシットジョブについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

         

「生きていくために本当に価値のない仕事を続けている。」

自分はそうではないとあなたは断言できるでしょうか?

2020年の7月末に邦訳版が発売された『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』は、その条件に該当する人が、富裕国の37~40%にも及ぶかもしれないというセンセーショナルな指摘でたちまちベストセラーとなりました。

この記事では『ブルシット・ジョブ』の鋭い指摘を、データに現れる日本国内の状況とともに読み込みながらご紹介します!

ブルシットジョブとは?完璧に無意味で、不必要で、有害でもある仕事

ブルシットジョブとは?完璧に無意味で、不必要で、有害でもある仕事

『ブルシット・ジョブ』の著者であるアメリカの文化人類学者デヴィッド・グレーバー(David Graeber)氏は、ブルシット・ジョブを以下のように定義します。

ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わねばならないように感じている。

引用元:デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹訳 『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店、2020、p27-28

あなたはこのような仕事に現在・過去を問わず従事した記憶があるでしょうか?

筆者(私)にはありますので、下記にて紹介します。

ブルシットジョブに関する筆者の体験談

以前バイトとして勤めていた出版社で、最初の3カ月間、新人の私に与えられた仕事は本棚整理でした。その企業の出版物、過去に編集長が手がけた雑誌、なぜか園芸関係の本……乱雑に書籍が詰め込まれた本棚をなんとなく出版社・50音順に並べ替えるのが週5日、10時-18時の私の仕事だったのです。最初はおそらくその出版社の雑務をいろいろと手伝うアシスタント要員として雇われたのでしょうが、バイトにさせられることが思いのほか少なかったのでしょう。

「うちの出版物の理解を深めるため」と編集長には言われましたが、ざっと一日で総覧すればそのくらいのことはわかります。また整理された本棚が活用される機会が増えたようにも私には見受けられませんでした。とはいえ、もっと意味のある仕事を与えてくれということもできず、私は20代前半の数十時間を雑多に並べられた本を並べ替えることに費やしました。

要するに、思い付きで雇ったものの“仕事をあてがう暇がなく、かといってクビにする手間も惜しまれた”のでしょう。あるいはこの仕事は編集長を偉そうに見せるためにあてがわれたブルシット・ジョブの主要五類型でいう取り巻き(flunkies)の仕事だったのかもしれません。ほかにもブルシット・ジョブには脅し屋(goons)尻ぬぐい(duct tapers)、書類穴埋め人(box tickers)、タスクマスター(taskmasters)などの類型があるとされています(「第2章 どんな種類のブルシットジョブがあるのか?」より)。

書籍では、自立した部下への仕事の配分と監視が業務の大半を締める中間管理職の業務がブルシット・ジョブの典型として紹介されています。要するに、立場や収入の高低によらず、ある仕事はブルシット・ジョブとなりえるということです。むしろ肩書ばかりの管理者業務が増えるにつれてブルシット・ジョブも増加することが示唆されています。

ブルシットジョブは5種類に分類

前述しましたが、グレーバー氏はブルシット・ジョブは下記の5つに分類できるとしています。

ブルシッドジョブ仕事内容
取り巻き誰かを偉そうに見せたり、誰かに偉そうな気分を味合わせたりするだけの仕事
脅し屋雇用主に自身の存在を全面的に依存し、肩書きや行動によって他者を脅かしている仕事
尻拭い組織の欠陥を穴埋めするだけのために存在している仕事
書類穴埋め誰も読まないような書類を作り続ける仕事
タスクマスター他人への仕事の割り当てだけからなる仕事

自分や部下、上司が上記のような仕事をしているような状況の場合は、その組織自体の欠陥が考えられますので、今一度所属している組織体制を見直してみてください。

ブルシットジョブ・どうでもいい仕事【会社での事例】

前章では、ブルシットジョブ・どうでもいい仕事には5種類あると解説しましたが、本章では会社でのブルシッドジョブの事例を紹介します。本章で紹介するブルシットジョブの事例は、会社でのムダ会議です。

パーソル総合研究所が2018年に行った調査によると、会社のメンバー層で23.3%、上司層で27.5%の人が会社の会議がムダであると感じているようです。上記の数値を元に1万人規模の企業がムダ会議に使用しているリソースを計算すると、下記の通り、人件費として約15億円ほどの損失が発生していることとなります。

ムダ会議のリソース

引用:パーソル総合研究所・中原淳(2017-8)「「ムダ会議」による人件費の損失」
長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」)

しかし、会議に参加している本人たちがムダだと感じていても、「ムダだからやめよう」という行動にはなりません。誰も読まないような資料作りやコーヒーを手配するだけの業務は、雇用条件の一環であるために、ブルシットジョブではないと取り繕う必要があるのが、問題と言えるでしょう。

日本はブルシットジョブ大国?世論調査から実態を分析

日本はブルシットジョブ大国?世論調査から実態を分析

冒頭の37~40%という数字は、世論調査代行会社YouGovがイギリスで実施した世論調査に由来します。

2015年の調査で「世の中に意味のある貢献をしていますか?」と尋ねられたイギリス人の働く大人のうち実に37%が「していない」と回答したのです。オランダにおける同様の調査では40%が自分の仕事は有意義でない、と答えました。

データ引用元:Will Dahlgreen「37% of British workers think their jobs are meaningless」┃YouGov

では、日本はどうでしょうか。次章にて、日本の産業別就業者数でブルシットジョブを見てみましょう。

産業別就業者数に見るブルシットジョブの増殖

以下の日本の産業別就業者数の推移をご覧ください。

引用元:早わかり グラフでみる長期労働統計_図4 産業別就業者数┃独立行政法人労働政策研究・研修機構

1951年から2019年にかけて農林漁業に従事する人数は激減し、代わりに「その他」の割合が増加しています。

「その他」には一般事務員、情報処理技術者、他に分類されない労務作業者などの職業が多く含まれることが、2000-2015年に就業者数が増加した職業から予測されます。

引用元:産業別・職業別就業者数の将来予測┃独立行政法人労働政策研究・研修機構

これらの職業は『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論 』「第5章 なぜブルシット・ジョブが増殖しているのか?」で、ブルシット・ジョブ増殖の犯人として示唆されている「情報労働」に重なります。

やたらとカタカナが連ねられた大仰な肩書を持つ割に何をやっているかわからないITコンサルや、第三次AIブームにあやかって現れたにわかデータサイエンティストも「その他」の「ブルシット・ジョブ」に当てはまるでしょう。

「データの世紀」といわれる21世紀に花開いた職務に従事する方々は、特に自身の仕事がブルシット・ジョブではないか一度胸に手を当てて考えた方が良いかもしれません(もうお気づきかも知れませんが)。

ブルシッドジョブの解決策【ベーシックインカム】

日本で増えつつあるブルシッドジョブですが、解決策はあるのでしょうか。『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論 』の著者は、ブルシッドジョブの解決策として、「ベーシックインカム」を提案しています。

ベーシックインカムとは、「性別・年齢・所得水準」によって制限されず、すべての人間が国から一定額の金額を定期的かつ継続的に受け取れる社会保障制度のことをいいます。

上記の原資として考えられているのが、機械やAIの自動化で利益を獲得できる企業に課された税金ですので、ベーシックインカムを導入することで、どうでもいい仕事「ブルシッドジョブ」から解放され、個人より意義を感じられる事象に時間を使用できると考えられています。

しかし、何もせずとも収入を得ることができる点に関しては、ベーシックインカムの問題点でもあります。

「人を堕落させてしまう考え方」という意見もあるようですが、お金のための労働から自己実現のための労働に切り替われる可能性が高いことも考えられるため、ベーシックインカムがブルシッドジョブの解決策として提案しているようです。

終わりに

終わりに

データを見る前から感じたかもしれませんが、日本は“世界有数のブルシット・ジョブ大国”です。

ハンコを押すための出社や会議のための会議など「この仕事、クソどうでもいい!」と感じたことのある瞬間は皆さんも容易に思い浮かぶのではないでしょうか。

ブルシット・ジョブの縮小につながる策の一つとしてデヴィッド氏が示唆するベーシックインカムの実証実験が、2020年8月仕事の幸福度が日本に次いで低いドイツで始まりました。
その効果は今後どのように表れるのか? 日本とドイツの仕事の幸福度は枝分かれすることになるのか?

我々日本の労働者として、ぜひ注目していきたいですね!

 

参照元

・デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹訳 『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店、2020
・Will Dahlgreen「37% of British workers think their jobs are meaningless」┃YouGov
4 op de 10 medewerkers vinden hun werk niet zinvol┃SCHOUTEN&NELISSEN
早わかり グラフでみる長期労働統計_図4 産業別就業者数┃独立行政法人労働政策研究・研修機構
The Indeed Job Happiness Index 2016: Ranking the World for Employee Satisfaction┃indeed
産業別・職業別就業者数の将来予測┃独立行政法人労働政策研究・研修機構
ドイツでベーシック・インカムの実証実験が始まる──3年間、月15万円支給┃YAHOO! JAPAN ニュース
長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」|パーソル研究所

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