企業の枠を越え、より広く、より多くの人が交流するデータ活用の拠り所を目指すコミュニティがある。それはファイル連携ミドルウェア「HULFT(ハルフト)」とデータ連携ソフトウェア「DataSpider(データスパイダー)」の開発、提供を手がけるセゾン情報システムズが運営しているデータ活用コミュニティ「DMS Cube」だ。
累計数千人の参加者がいた既存のコミュニティを統廃合して誕生したDMS Cubeは、ベンダーである同社の役割を果たすために、敢えて「ベンダーらしいコミュニティから脱却」にこだわって運営されているという。
YouTube、オウンドメディア、VTuberなど、様々な施策を通じてDMS Cubeが目指すコミュニティとその理想について、運営メンバー4人に伺った。
DMSとはデータマネジメントソリューションの略語だ。2020年にセゾン情報システムズの主力製品である「HULFT」と「DataSpider」のコミュニティを統合して誕生。現在、約500人の会員と4人のメンバーで運営している。その立ち上げの中心人物だったのが泉麻里子氏だ。コミュニティの統合は同社が提供するHULFTシリーズに、合併した企業の製品であるDataSpiderを組み入れたことがきっかけだったという。
泉:「HULFTは約30年、DataSpiderは20年以上もお客様に愛されていて、合併後もしばらくはそれぞれのコミュニティサイトが運営されていました。ただ、より多くの企業にデータを活用してもらうことが弊社の目標でして、それを達成するためには製品軸に捉われないコミュニティが必要不可欠だったのです。アイドルグループに例えると、弊社が提供するソリューションという『箱』を推してもらうためのコミュニティに再構築したというわけですね」
HULFTというシリーズ名をコミュニティ名に加えなかったのも理由がある。DMS Cubeの立ち上げメンバーである渡部桜氏によると、その根幹にはDMS Cubeが目指すコミュニティの在るべき姿が深く関わっているという。
渡部:「お客様にデータを十分に活用してもらうことで、さらにその企業の取引先や関係者にもデータの有用性に気付いてもらえる機会が増える。そんな横のつながりを広げるのがDMS Cubeの使命です。HULFTやDataSpiderはあくまでツール・手段の1つという位置付けで、データ/マネジメント/ソリューションそれぞれのアイデアや活用方法を入手できる場を目指してスタートしました。
名称は、製品とそのお客様が集う「Square(広場、平面)」に1軸「コミュニティ」を足して、より広がりのある3次元的な意味合いを持たせた『Cube』としました。
ベンダーが運営するコミュニティはしばしば「製品を推す」ことに終始しがちだが、DMS Cubeが「データ活用を推す」のであればさらに一歩、広い視座が必要だ。ただ、その実現は簡単ではない。そのため、2021年に入り新メンバー宇佐見直人氏、高山 真彰氏がプロジェクトに参画し、お客様同士や開発者との双方向のコミュニケーションの強化を目的として、様々な施策を打ち出している。
データ活用を広げるためには、ベンダーが捉われがちな「製品をどう使ってもらえるか」という思考から脱却し、その先にある未来をお客様に提供し、想像してもらうコミュニティの創造が欠かせない。ただ、提示できる情報は製品の情報や使い方などが主となるため、従来のコミュニティ運営にはない視点での情報発信や交流が求められているという。
宇佐見:「私は2021年6月からDMS Cube運営に参画しているのですが、実はそれ以前からDataSpiderのユーザーでしてユーザーコミュニティの会員でもありました。その時に助かったのは、コミュニティ内にある『使っている人』の情報でした。どんな業種の人がどんな使い方をしているのか、といった現場の生情報は、作っている人からはなかなか入手することはできません。そのような意味でも、ユーザーの質問にユーザーが答えて盛り上がる環境を構築することがコミュニティには絶対的に必要だと考えています。では、そのような場を提供するために我々『作っている人』が何をできるか、という視点を持たないといけません」
その1つの答えが「他社の製品を横断した知の集約」だと宇佐見氏は語る。HULFTやDataSpiderはシステムなどの連携ツールのため、紐づく他社の製品を含めたデータ・チェーンを作ることで大きな価値が生まれるというのだ。そのために乗り越えるべき課題も明確になっている。
高山:「統合前のHULFTとDataSpiderのコミュニティはどちらも1,000人単位の会員がいたものの、そのほとんどは活動していないのが実情で、サポートセンターよりも気軽に当社の運営スタッフに質問できる『お悩み相談室』になっていたのが大きな課題でした。まずはその状態に陥らないように有益な情報発信と並行して、データ活用に積極的なお客様との交流の場となるよう、様々な活動をおこなっています」
宇佐見:「DMS CubeのターゲットとなるHULFTをお使いのお客様はもちろん、IT関連部門、非IT関連データ活用部門の人たちも含めています。『データ連携』という直接的な課題を持っている人だけでなく、生産性を上げたい、コスト削減したいといった漠然とした思いを抱いている人にもデータ活用に可能性を見出していただきたいですね」
高山:「そのようなターゲット向けのメディアが『HULFT Square』で、DMS Cubeのチームが運営しています。そこではデータ活用の成功者などを紹介することで読者に『きっかけ』を与えられるようなコンテンツを提供しています。データ連携するためには最低でもExcelによるデータ作成、集計が必要なのでまずはHULFT Squareで知見を読者の皆様に高めてもらった上で、更なる取り組みのためにDMS Cubeの会員になってもらうのが理想ですね」
9月16日にはミートアップイベントの開催を予定している。製品を利用いただいているお客様に登壇してもらい「使っている人の発言」を増やすことで、現場に役立つ情報発信につなげる狙いだ。また、宇佐見氏によると他のデータ活用を目的にしたコミュニティと連携することで、データ活用に積極的なコミュニティ界隈の盛り上げにも貢献したいという。
DMS Cubeは複数のメディアを展開し、製品の壁を超えた知識の集約とデータ活用の可能性を広げている。IT業界は兎角、技術進化が早い。そこに目をつけ、HULFTとDataSpiderを擬人化したVTuber「くも子」と「ハルカ」が最新のIT用語をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル「くもラジ」を開設した。渡部氏が主導して毎月1回程度、更新している。
渡部:「くもラジでは『slackとデータ活用』や『データカタログとは』といった旬のIT用語の意味や使い方などを紹介しています。データ活用の裾野を広げる目的はもちろん、DMS Cubeでのコミュニケーションのきっかけになると考えています。6月に行ったミートアップイベントでも好印象だったので、今後、サブカル好きな方に刺さるのではないかと期待しています」
運営メンバーは製品や事業のオプションではなく、データ活用を推進する重要な場としての「DMC Cube」の確立を進めていることと、その必要性を強く訴える。
宇佐見:「私が社会人になった頃は、パソコンが一人一台ない企業もあり、IT企業であれば一人一台あるような状況でした。それが現在ではビジネスシーンには一人一台のパソコンどころか、スマートフォンやテレビ会議などが当たり前の世の中になっています。これと同じようにデータ活用が普通の社会になり、より良い使い方やアイデアを求める人も増えると考えています。DMC Cubeは広場でゲートはありません。ぜひ、多くの方々の拠り所になるコミュニティにしていきたいです。お客様同士やお客様と中の人、当社のお客様ではない方を含めて、『データ活用』という共通の話題でつながれる場所にDMC Cubeがなれたなら、素晴らしいと思います」
高山:「これからのデータ活用はデータが中心になるのではなく、課題に対してどうデータを利用するかがポイントになると考えています。コミュニティも人が中心になって様々な交流が生まれるのが理想。課題解決や情報発信だけでなく、『宇佐見氏に会いたい』といったきっかけづくりにも注力していきたいですね」
企業、製品、業種の壁を超えた「データ活用愛好者」の拠り所となるため、本格稼働したDMS Cubeは今後も様々なメディアを通じて、その存在感を高めていくだろう。集まった人や情報、知恵からどのようなデータの活用方法が生まれ、各企業の利益につながるのか注目だ。
(取材・TEXT:藤冨啓之 企画・編集:野島光太郎)
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