東京都渋谷区某所にある「DEKIRU CAFE」。ここは「データ」に関わる酸いも甘いも知り抜くマスターが、その悩みに耳を傾け解決してくれることが評判の店だ。今日も業務と「データ」の狭間で悩む人が訪れる。
自分の業務の中に「データ」があるとは思えない
いきなり社長が「うちもこれからはデータ活用だ!」と宣言したんですけど、そもそもうちの会社や業務に流行りの「ビッグデータ」とかないと思うんですけどね。
うちの店でも、常連のお客さんが何の銘柄のコーヒーをどんな頻度で注文しているのかは、会員カードのデータを貯めて把握しているよ。
そういう「データ」なら僕も体感的にも分かります。よく使う通販サイトがおすすめを表示したり、いろんなカードにポイントが貯まったり。あ、今日は、この店、ポイント5倍ですよね。うちの会社は、昭和の頃から変わらない製品の製造と販売ですし、昔ながらの取引先と紙の伝票をやり取りしているから、「データ」そのものがないのに……。
それは、「データ」がないんじゃなく、何が「データ」なのか分かっていないだけなんじゃないかな。私だって、会員カードがなくても常連客の好みは把握している。 これも実はデータの一種なんだ。ただ、この2つは、実は異なる。
マスターの「データ」と店の「データ」は違うんですか?
私の頭の中にあるいわゆる定性データはソフトデータ、会員カードが持つ事実や統計、売上などの定量データはハードデータと呼ばれるんだ。私の頭の中にあるのは経験やノウハウで、私しか使えない。店にはスタッフもいるし、その熟練度もさまざま。当然、私の経験やノウハウは伝えるけど、何をどう伝えればいいのかを選ばないといけない。その時に店にとって必要な「データ」とは何かを考えるんだ。
僕も同じ部署の先輩の仕事ぶりをすごいなあ、早くああなりたいなあと思う事があります。でもそれは同じような経験を積まないと無理、ずっと先のことだと思っていました。確かに、先輩にこちらから聞けば解決することもありますね。あの時、僕は、必要な「データ」を手に入れたのかな……。
どうすれば「データ」に気づくことができるのか
つまり、君が自分の業務に課題を感じた時に、必要な「データ」に気づいたんだ。「データ」そのものは、人にたとえれば経験やノウハウ、失敗も成功も同価値で日々増えていく記憶のようなものじゃないかな。だから君の多彩な失敗事例も会社にとっては有益な「データ」のはずだよ。
うわ。とたんにコーヒーが苦くなりました。あれ? そうだとすると「データ」って、何か狙いをつけて集めた極秘資料みたいなものではなくて、僕の仕事だったり、昭和の頃から毎日続くラインの作業だったり、その中に日々生まれているということなんですね。
君の通販サイトの購入履歴だって、別に極秘資料じゃないでしょ? でも、通販会社にとっては貴重な「データ」だというのは分かるよね。
いや、ちょっと極秘な所もあるんですけどね……。あー、何か分かりかけてきたから、もっとしっかり「データ」のことを整理したいなあ。
データ活用を考えるDEKIRU CAFE 第1回: 実は何が「データ」なのか分からないんです。
https://data.wingarc.com/dekirucafe1-6348