

INDEX

「データのじかん」の読者において、一番身近なのはデータの見える化と分析でしょう。今年もデータにまつわる本が発売されており、異なる視点からデータと向き合ってはいかがでしょうか。
様々なデータから東京における格差を浮き彫りにしています。面白かったのはIT企業やIT系人材の約6割が、1都3県に集中していることです。ITは東京一極集中が顕著という感覚はありましたが、改めて可視化されると驚きです。他にも待機児童やスーパー「まいばすけっと」など、東京における話題をデータで見える化しており、色々な発見があります。
「日本人って〇〇だよね」と言われがちですが、本当にそうなのでしょうか?世界の数字とデータを駆使して「日本人はどんな人なのか?」を比較しながら調べています。食や政治や宗教や肥満や夫婦関係など、様々な視点から日本人を調べており、意外な発見や驚きがあるでしょう。本を読み終えた時に、物事を印象だけで決めないことを実感できるはずです。
資料でグラフを作る時にどうやって見せればよいかは、ビジネスパーソンにとって共通の悩みです。本書はExcelのグラフにおいて、効果的な「理論」から仕事で役立つ「実践」の両方から解説しています。豊富なデザインと細かな説明が両立されており、そのまま研修にも使える内容です。キレイでわかりやすいグラフを作りたい方は必読です。
書評1本勝負でもご紹介した一冊。データサイエンティストブームがすっかり過去の話題になっていますが、現在においてもデータ分析プロジェクトの需要と重要性は変わりません。BIPROGY(旧:日本ユニシス)の現場で培ったノウハウは、決して色褪せないものです。本書は改めてプロジェクトとしてのデータ分析において、見つめ直すきっかけになるでしょう。
2025年にはAIエージェントの本も多く発売されました。従来はAIに人間が指示を出して回答を得る形でしたが、AIエージェントは自動的・自律的な作業に行えることが期待されています。徐々に事例や活用法も増えており、2026年にはさらに話題になるでしょう。
AIエージェントについて、技術とビジネスの両面から解説されており、ビジネスパーソンにもエンジニアにも役立つ内容となっています。ビジネスパーソンにおいては、AIエージェントの影響力や活用事例を知ることで自分の業務における活用がイメージできます。エンジニアにとっては、導入に必要な準備は技術的な概要を把握することで、次の準備に進めやすくなるでしょう。
AIエージェントの仕組みだけでなく、技術的な解説も多く、こちらもビジネスパーソンとエンジニアの両方にオススメできる本です。特に日立グループのオフィスワークや開発などの様々場面において、実際に開発から運用まで行われた一連の流れを経験した知見が詰まっているのが魅力です。この点が他の本との差別化と言えるでしょう。
こちらはAIエージェントにおける開発、導入、運用などエンジニア向けの内容が中心です。ヘルプデスクやデータ分析など、実務においてAIが使われる場面において、サンプルコードから体験して学べる仕組みです。AI開発において実績がある複数社の著者が共同執筆しており、それぞれの得意分野で解説されているのが特徴です。
「開発運用入門」とあるとおり、一定の経験があるエンジニア向けの内容です。内容は幅広く、主要なフレームワークの紹介からサンプルコードの掲載など、開発に必要な内容が網羅されています。まったくAIエージェント開発が未経験の状態から、本書1冊で一通り学べる構成です。こちらもAI開発や他の書籍執筆などで実績がある複数の著者で執筆されています。
技術やビジネスから少し離れて、社会への影響や組織に与える役割などについて、歴史などを踏まえながら俯瞰した視点から語られています。会社組織における生成AIやAIエージェントにおける活用も解説されているボリュームがあります。近い将来、AIエージェントがどのような影響を与えるかを考える意味で、長期的な視点から考える本としてもオススメです。受賞歴もある本「エンジニアリング組織論への招待」の作者でもあり、ページ数が392ページと分厚く読み応えがあります。
AI開発ツールのDifyは、プログラミング不要のノーコードで独自のAIを作れます。今年発売された解説書も多く、プログラミング未経験の初心者向けから、開発経験が豊富なエンジニア向けの本まで発売されました。4冊紹介するので、難易度や用途に応じて自分に合った本を選んでください。
今回紹介するDifyの中で、一番初心者向けの本です。プログラミング未経験で、パソコンを使うのはOfficeソフトぐらいな方にもオススメです。内容は事務作業の自動化として、名刺管理や見積書の処理が解説されており、細かい手順は豊富な画面キャプチャで詳しく解説されています。「まずは便利なAIを作ってみたい」という目的に向いているでしょう。
難易度は初心者向けに優しく解説しており、特徴としては導入の壁を越える点に着目していることです。Difyに限らず導入しても使われなかったり、管理者が不在で保守されないなど問題があります。こうしたリスクを防ぎ、安全に使える環境づくりが解説されています。また、Appendixが豊富でDifyの理解が深まる点も特徴となります。
こちらも初心者向けですが、「Difyで作る生成AIアプリ完全入門」よりも少し複雑無ないようです。方向性としても業務に役立つアプリを簡単に作ることより、Difyの仕組みやアプリ開発を理解する側面が強いです。エージェントDify以外のアプリとの連携など、より複雑な機能を開発することができるでしょう。
難易度はプログラミング経験があるエンジニア向けを想定しています。紹介する4冊の中で技術的には最も高度で詳細な解説が載っています。内容も初期設定、Dockerのインストール、Githubからソースコードのダウンロード、、PowerShellなど、エンジニアとして一定の経験が必須となります。開発する内容もプラグインによる外部システムとの連携や、SNSにおける情報収集の自動化、Googleスプレッドシート連携などです。業務用アプリを開発する方は、こちらが良いでしょう。
2025年に多かった生成AIの問題として、「生成AIを導入したが従業位に使われず、成果が出ない」が挙げられます。費用をかけて生成AIを導入したものの、一部の人が文章作成や調べ物に使う程度では費用対効果は厳しいです。そこで導入活用を推進するためのノウハウを本で調べて、実践してみましょう。
作者は企業におけるIT系ツールの豊富な導入支援実績があり、生成AI導入活用に必要な点においても、幅広く解説されています。生成AIは技術的な問題だけでなく、社員が使いたくなる意欲を醸成したり、情報漏えいやリストラに関連する不安を払拭するなどの側面があります。このような該当する課題と解決策について、自社で取り組む場合に役立つ本です。
著者はRidgelinez株式会社ですが、同社は富士通によるDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現するコンサルティング会社として設立されました。上席執行役員 Partnerという役職もあり、組織体制やデータ基盤など経営側の視点でデジタルやAIの導入活用について解説しているのが特徴です。実際に生成AIやデータ分析を導入推進している企業の多くは経営者からのトップダウンが大きく影響しています。異なる立場と視点から考えるきっかけになるでしょう。
生成AI活用で失敗する要因として、社内のデータが整備されていない点が挙げられます。実はこの問題はデータサイエンティストブームでも同様で、以前から指摘されていました。そこでデータを整備するためのデータマネジメントとして、何が必要なのかを解説したのが本書です。データの整備という土台がなければ、上にあるAIがどんなに高性能でも役に立ちません。そこで生成AIを活用する前に読んでおきましょう。
著者の所属する株式会社ギブリーは、生成AI導入活用における実績がありノウハウも豊富です。他社で実践したことや、問題が起きて解決した対応などは、自社で起こる可能性もあります。こうした知見としてAIの活用方法や、導入から組織への浸透など情報量が豊富なので、様々な場面で知恵袋のような使い方ができるでしょう。
ここまで紹介した3冊は日本国内の内容が中心ですが、本書は世界各国の企業における事例や成果を紹介しています。様々な業種業界におけるAI活用として、100以上の事例が掲載されています。本の厚さは502ページ数と非常に情報量が多く、辞書のように参考になる事例を探しやすいのも魅力です。
今年も不祥事や問題発言やハラスメントやコンプライアンス違反が、世間を騒がせました。有名人だけでなく、会社で働く皆様にとっても他人事ではありません。生成AI時代において重要になるのは「ルールを守ること」ではないでしょうか。そんなルールと安全について解説した本を紹介します。
生成AIによって注目されているのが、知財特許や権利です。これまで馴染みが薄かった特許や著作権などの法律において、進化が早い生成AIが追いついていない現状があります。例えばChatGPTを開発したサム・アルトマン氏がSNSのアイコンをジブリ風にするのは、問題ないでしょうか。知財特許や権利と言われると堅苦しいイメージがありますが、作者の個人的な体験談を盛り込みながら、面白く読みやすい内容になってます。
著者は民泊アプリのAirbnbにおける倫理責任者として、組織と利用者において誠実であるべきルール作りについて解説しています。過去に民泊アプリはトラブルや犯罪などの問題がありましたが、利用者や社会にとって安心安全を提供するためのプラットフォーマーとして、どのような責任を果たすべきかが解説されています。生成AIでも利用において問題を起こす可能性もあります。問題を未然に防ぐルールと組織づくりとして参考になるでしょう。
生成AIの登場から3年が経過して、徐々に普及が進んでいます。一方で将来において、IT業界のみならず社会全体においてどんな影響を及ぼすでしょうか。生成AIが様々な変化を起こすことは避けられません。いずれやってくる将来に備えて、本を読んで準備しておきましょう。
「生成AIは進化が早く、話題も多く、どこから調べれば良いのかわからない」という、悩みがあります。特にビジネスパーソンにとって、毎日SNSなどを調べるのは大変でしょう。そこで本書は生成AIにおいて知るべき「ビジネス」「テクノロジー」「社会・経済」という3つのテーマにおいて、概要を1冊に凝縮しています。生成AIについて手軽に一通り把握したい人にオススメです。
SIerによるエンタープライズ向け大規模システム開発において、生成AIをどのように活用するかを紹介しています内容はシステム開発を手掛けるエンジニア向けで、要件定義、設計、実装、テスト、運用における一連の流れで解説されています。元々プログラミングやシステム開発におけるAI活用は進んでいましたが、大規模な開発プロジェクトではまだ不十分だったので、本書で変わりゆく開発現場について習得しましょう。
アメリカのシリコンバレーで投資家として活動する著者の視点で、豊富な海外の事例や将来におけるAIの行く末などが解説されています。また、日本でAIに取り組む様々な立場の方々が担当分野について解説を加えており、複数の視点でAIと将来における視座を得られるのが魅力です。進化を続ける生成AIが社会全体にどのような影響を及ぼして、我々がどんな変化に備えるべきかという将来への備えとして読んでおきたい1冊です。

ここまでAI関連本を紹介してきましたが、読者にとっては変化の激しい生成AIにおいて、出版するまで時間がかかる本は無意味ではないかと疑問を感じる人がいるでしょう。実際にSNSや動画投稿サイトでは毎日大量の新たな情報が発信されており、性能やランキングも短期間で入れ替わるほどです。しかし、AIを理解して成果を出すために、最新情報を追う必要はありません。根底にある技術は短期間で変化するものではなく、理解するには時間も必要です。AIを活用して成果を出すためには、慣れるまでの手間もかかります。そのための土台を作るために、本を読んで学びながら試行錯誤を繰り返すことが、成果につながります。これが遠回りのようで近道です。一方で最新情報ばかり追い続けても、一時しのぎにしかならない表面的な情報を手に入れるだけです。そのような脆弱な情報を積み重ねても、業務で役立つ知識や知見にはなりません。生成AIが登場して3年が経過します。既に一時的なブームではなく、当たり前になりつつある生成AIと向き合う機会として、本を読んでみるのも大切だと考えております。


“データサイエンス界の東京スポーツ”がリングイン!
覆面AIコンサルタントのマスクド・アナライズが、巷に溢れる書籍を現場目線でジャッジ。AI・データ分析プロジェクトの最前線で戦ってきた男が選ぶ、本当に使える一冊はどれだ?
流行りの技術か、本物の知見か――忖度無用のガチンコ書評、一本勝負!
詳細はこちらメルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!