毎年恒例のウイングアーク1st主催カンファレンス「ウイングアークフォーラム」。2020年は名称を「updataNOW 20」に刷新し、オンラインイベントとして開催しました。今年は10月12日の前夜祭を皮切りに16日までの会期中、65超のセッションでお送りしました。
2020年4月15日にリリースしたコミュニケーションプラットフォーム「DEJIREN」について、「なぜ今必要とされるのか」「実際にどのように使われているのか」、そして「SlackやAWSとの連携によって拡がる可能性」の3つのテーマでご紹介しました。
新型コロナウイルスが端緒となったテレワーク。その最中、私たちはオンライン会議ツール、電子メール、コミュニケーションツールを積極的に活用しています。ウイングアーク1stによる実態調査でも、上記の“3種の神器”利用率はいずれも7割以上に達しました。
それ以下にはVPN、スケジュール管理が続きますが、営業・販売管理システム、文書管理ツール、人事システム、プロジェクト管理システム、会計システム、可視化・見える化ツール、生産・在庫管理システムの利用率はいずれも50%以下に留まっています。
ウイングアーク1st ビジネス戦略室 副室長の大畠幸男は、Day1セッション『DEJIREN UPDATA PoCプロジェクトを通じて見えてきたデジタルの道のパターン』の中で「これら下層にあるソフトウェア・サービス・システムでもデータを使える状態にしていかないと、ヒトから見た情報の距離が遠くなってしまう」と指摘。その上で、それを象徴するビジネス現場の課題について次のスライドの通りまとめました。
現場の課題から見えるのは、さらなるデジタル化の必要性です。大畠は「システムやツールはあっても、探したい・伝えたい・承認したい・教えてほしい・調べたい……など、ビジネスにおけるさまざまな“コト”が満たされていない」「人の判断の質・行動の豊かさにはまだまだ向上させる余地がある」と話し、情報の概念「DIKWモデル」を掲示。「データ・情報の活用=システムによってヒトが知識・知恵を得る。かつ、システムからデータ・情報を探求できる。そんな状態こそが、ヒトとシステムの理想的な関係性である」と話しました。
そこでDEJIRENです。DEJIRENは「伝達・自動化・連携の機能を搭載することでコミュニケーション層(チャット・メールなど)とシステム層(企業の業務システム・外部クラウドサービスなど)の連携を、ノンプログラミングで実現できるコミュニケーションツール。特別にシステムを意識しなくとも必要な情報が素早く届けられ、迅速な意思決定とスピーディーなアクションにつなげられるようになります。
「とりわけ新型コロナウイルス感染症の影響で、ヒトはシステムにタッチしにくくなってしまいましたが、プロセスそのものがもっとデジタル化されていけば、頑張ってオフィスに行かなくてもよい状況がつくれます。そんな“デジタルの道”を実現するためのプラットフォームこそが、2020年4月15日にリリースしたDEJIRENです。DEJIRENは大きなパラダイムシフトに対応した最新ソリューションとして、すでにお客様のさまざまな課題を解決しようとしています」(大畠)
実際にDEJIRENはどのように活用されているのか。Day2セッション『モノづくりにおける攻めのDXにチャレンジし続ける伊福精密株式会社。DEJIRENで始める日本版3D Hubs化構想への新たな挑戦』では、伊福精密 代表取締役社長の伊福元彦氏に、同社で進めるPoCの事例をお話しいただきました。
写真は、伊福精密による金属3Dプリンターの可能性を追求するデザイン雑貨ブランド「OshO」で展開される酒器「Syuki」という商品です。「金属3Dプリンターならでは」といえる複雑な一体構造をしています。かつ、この酒器は多層構造をしており、なかのお酒に熱が伝わりにくく、冷酒でも熱燗でも時間を気にせず楽しめるそうです。
同社は1970年に創業した、従業員50名の精密部品加工メーカーです。リバースエンジニアリングから精密加工まで一連の精密加工をワンストップで行える製造ノウハウ・設備を有し、生産設備においては三次元測定、ワイヤーカット、切削加工、3Dプリンタなど、あらゆる基礎工作技術での製造ノウハウも蓄積しています。
そんな同社は昨今、デジタルファクトリー化の取り組みを強化しています。
「デジタルファクトリー化により、昨日まで隣の工場でつくっているものが、明日には地球の裏側の工場でものづくりができるようになる。自社の他、協業メーカーや海外法人に蓄積されていた製造ノウハウや製造データをクラウドにて一括で共有し、いつでもどこでも必要なモノがつくれる、そんな世界こそがデジタルファクトリーです。実現のためには、営業活動や工程管理を含む“モノゴトを作る前の段階”をすべてデジタル化させる必要がありました」(伊福氏)
同社は2020年8月からDEJIRENを使ったPoCを実施。伊福氏は「DEJIRENを“デジタルツイン”化(リアルな世界をデジタル上にリアルタイムで再現するデジタルの双子)の架け橋として活用しようと考えている」と話します。
例えば、これまで同社が得意先から見積検討依頼を受け取った際のプロセスは「①営業部門が得意先から見積検討依頼をされる→②技術系の各部門で検討を行う→③全ての部門が検討を終えた後、工法検討会議を行う」という流れでした。しかし同プロセスで営業部門は、各部門の検討状況が見えない上、各部門での検討にはタイムラグが生じるため、得意先に見積を出せるタイミングなどが計れませんでした。
デジタルファクトリーが実現すれば、見積工程・製造検討工程・製造工程など、実際の世界で発生するあらゆる“経験”がリアルタイムでデジタル空間に上げられます。リアルとデジタルの架け橋となるのがDEJIRENで、それらは常にMotionBoardで見える化がされます。
「日本国内では金属3Dプリンターの採用実績がまだまだ少ないのが実状です。新型コロナウイルス感染症の影響で、グローバルサプライチェーンの分断が起こり、生産停止リスクも露呈されています。そうした状況を打破するためにも、サプライチェーン連携による『ものづくりのレジリエンス向上』はますます求められていくでしょう。とりわけ平時と緊急時のモードを迅速に変更できるサプライチェーンは、ものづくりのレジリエンスになり得ると考えています」(伊福氏)
Day1セッション『DEJIRENで広がる世界 Slack×Amazon Web Services(AWS)×DEJIRENで実現するリモートワーク』ではSlack Japan株式会社 事業開発部 部長 水嶋ディノ氏、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 パートナーアライアンス統括本部 テクノロジーパートナー本部 部長の岡崎貴紀氏をお招きしながら、ウイングアーク1st 大畠が「Slack×AWS×DEJIRENの連携によって変革されるリモートワークの可能性」について提示しました。
これまでにもウイングアーク1stでは、AWSクラウド上のAmazon RedshiftやAmazon DynamoDBといったリソースにMotionBoardを連携させることでお客様へデータドリブンな環境をご提供してきました。またSlackとMotionBoardの連携ではユーザーへの即時通知を実現し、リアルタイムの気づきをもたらしてきました。
これに対し、DEJIRENとSlack・AWSとの連携により、情報への距離は今までよりもいっそう近くなります。
「すでに私たちのスマホやパソコンにはチャットのようなツールが入っていて、すぐに気付いたり探せたりする環境が整っています。さらにそこに、システム側から人に情報を届けてくれたり、今知りたい情報に自由にアクセスできたりする機能が実装されればどうでしょうか。MotionBoardとSlack・AWSの連携にDEJIRENが加わることで、ヒトとシステムの理想的な環境が整います」(大畠)
DEJIRENにはAPI連携でシステム・サービスをつなげる「コネクター」機能が搭載されています。リリース当初に実装されていたのはMotionBoardコネクターとSPAコネクターでしたが、その他製品についても順次対応しています。
①データ取得 | チャートを指定し、対象のデータソースのデータを指定形式で取得。 |
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②イメージ取得 | チャートを指定し、対象チャートをイメージ(画像)形式で取得。 |
③レポート取得 | MotionBoardで設定しているレポートを取得。 |
①フォルダ検索 | 入力したフォルダ名から、フォルダIDを取得。 |
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②ファイル取得 | 指定したファイルIDのPDFファイルを取得。 |
③ファイルプレビュー | 指定したファイルIDの該当ページをプレビュー画像で取得。 |
④ファイル検索 | 指定フォルダ以下をキーワードで検索した結果を表示。 |
⑤ファイル情報 | ファイルのファイル情報(ページ数・作成日・作成ユーザー等)を取得。 |
⑥SVF検索フィールド | SVF検索フィールド入力したファイルの該当ページの SVF検索フィールドを取得。 |
2020年10月にはSlackとの連携も発表しました。Slackとの連携によりリアルタイムでの業績確認・営業活動支援・人事総務支援・情報システム業務支援などにおいて、Slackインターフェイスからインタラクティブかつ自由に、情報を取得できるようになります。
BIツールの画面にアクセスすることなく、毎朝定時に役員に経営に関する情報をSlack上のチャンネル等へ、DEJIRENから定期配信。経営者が情報を知りたいときにもDEJIRENのBotを経由しSlackのチャット画面上で、リアルタイムの最新情報を呼び出すことができます。
契約情報や売上情報などをSlackアプリに入力するだけで、DEJIRENのBotを経由しSlackのチャット画面上で必要な情報を取得できるようになります。
Slack上のDEJIREN Botとのメッセージに必要書類名を入力するだけで、社内ポータルにある人事・総務関連の申請書類を取り出すことができます。ポータルを隅々まで閲覧し目的のドキュメントを探す必要がなくなります。
他システムからのエラーや警告情報をプッシュ型でDEJIRENで受け取り、Slack上のDEJIREN Botが管理者に通知します。システム管理者は状況判断に必要な情報を確認の上、対応することができます。
「DEJIRENそのものは、ヒト×データ×テクノロジーをコラボレーションするプラットフォームです。DEJIRENからMotion Boardに連携すれば、さまざまなチャート・画像にアクセスできます。SPAに連携すれば、社内にあるさまざまなデジタル文書の検索・情報閲覧が行えます。RPA、運用監視、IoT、AI、そして各種クラウドサービスとも連携ができます。Slackとの連携で、スマホ1台からの情報アクセスも可能になります」(大畠)
最後に大畠は次のように締めくくりました。
「ITの世界には“The 5 Second Rule”というものがあります。何か新しい行動を始めるなら5秒以内に始めるべきだ、とする格言です。やはり人は、何かを始めても、そのことに時間をかけていると途中で投げ出してしまう生き物です。すぐに情報へタッチできる環境を準備しておくことが、特に今の世の中では重要になっていくのではないでしょうか」(大畠)
ウイングアーク1stが毎年開催している国内最大級のビジネスイベント「ウイングアークフォーラム」。今年は「updataNOW 20」と名前を変え、10/12~10/16にオンラインで開催しました。 登録数15,000名以上、セッションの総視聴数は40,000を迎えました。 データ活用とDXを基軸に、ネクストノーマル時代に向けた洞察から、各業界・業種の先進的な成功事例、そして、ビジネスを加速する最新のサービス紹介まで、65を超えるセッションの大部分をアーカイブ配信として公開いたしました。 見逃した方はもちろん、もう一度視聴したい方も是非ご覧ください。
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