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育児・教育の現場で最近よく耳にする「体験格差」とは?多様な体験が子どもたちの成長にもたらす影響とは

         

最近、育児・教育の現場で、体験格差という言葉を耳にする機会が増えたように思います。体験格差とは、子どもたちが家庭環境や地域の違いによって経験する機会やものごとに差が生じる現象を指します。多くの子どもたちが必要な体験に触れられるようにするために、どんなことができるのでしょうか?今回、文部科学省が発表した最新のデータも交え、体験格差の現状と、それに対する対策について再考します。

体験格差とは具体的にどのようなものを指すの?

文部科学省が2021年に発表した「社会的・経済的背景に関する調査結果」によると、経済的背景や地域によって、子どもたちが体験する機会に大きな格差が生じていることが示されています。特に、低所得層や都市部以外の地域に住む子どもたちは、教育的な体験活動や文化的な経験に対するアクセスが限られています。

例えば、自然体験やアウトドア活動の機会について、経済的に余裕のある家庭の子どもたちは、キャンプやスキー、旅行といったアウトドア活動に積極的に参加している一方で、低所得層の子どもたちはこうした経験が少ないことが明らかになっています。また、音楽や美術、スポーツなどの文化的活動に参加する機会も、家庭の経済状況によって大きく異なります。

実際、2021年の調査データによれば、世帯の年収と子どもたちの体験活動について、自然体験も文化体験も世帯年収が上がるほど機会が増える傾向が見られました

体験活動が心理的なスキルや能力を高める?

文部科学省の調査によると、小学生時代に多くの体験活動(自然体験、社会体験、文化的体験)や読書、家でのお手伝いを経験した子どもは、後の成長過程で特定の心理的なスキルや能力が高くなることがわかっています。特に、以下の3つのスキルが強く関連しています。

  • 自尊感情: 自分に対して肯定的であり、自分に満足している感情
  • 外向性: 活発であり、他者とのコミュニケーションに積極的な性格
  • 精神的な回復力: 新しいことに興味を持ち、感情を調整し、将来に対して前向きな姿勢を持つ力

これらのスキルは、主に高校生時代に強く現れることが確認されており、小学生の頃の体験活動が大きな影響を与えていることがわかります。このように、体験活動は子どもたちの人格形成や精神的な強さに貢献しているのです。

異年齢での交流や自然環境での遊びがもたらす効果とは?

小学生の頃に異年齢の子ども(年上・年下の子)と一緒に遊んだり、自然の中や空き地でよく遊んだ経験がある子どもたちも、成長後に同様のポジティブな心理的特性を示すことがわかっています。異年齢の仲間との遊びは、コミュニケーションスキルや協調性の向上に役立ち、自然の中での遊びは、自己肯定感や創造性を育むとされています。こうした体験は、特に小学校時代に多く行われるほど、後に大きな効果をもたらすそうです。

興味深いのは、体験活動や遊び、読書、お手伝いといった異なる活動が、それぞれ子どもの意識やスキルに対して異なる影響を与えるということです。文部科学省の調査では、体験の種類ごとに、成長に与える影響やその時期が異なることがわかりました。

例えば、自然体験は自尊感情や回復力の発達に寄与し、社会体験は外向性やリーダーシップの形成に関連しています。これらの結果から、一つの経験に集中するのではなく、多様な体験をバランスよく積むことが、子どもの健全な成長に不可欠であることが示されています。多様な体験は、子どもの持つ潜在的な能力を引き出し、将来的な自己実現や社会的成功に結びつくと考えられています。

体験格差解消に向けて、公共でできる取り組みは?

文部科学省は、体験格差を解消するために「子供の未来応援国民運動」や「放課後子供教室」を通じて、全ての子どもたちが平等に体験活動を得られる環境づくりを進めています。

放課後子供教室は、放課後の時間を活用して、地域のボランティアや専門家が子どもたちに体験活動を提供します。スポーツ、文化活動、科学実験など、通常の授業では得られない多様な体験ができる場を提供し、子どもたちの興味や学習意欲を引き出します。それ以外にも、自然体験やアウトドア活動、音楽や美術、スポーツなど、地域や家庭の経済状況にかかわらず子どもたちが多様な経験を積めるよう、全国的な自然体験や文化活動の支援プログラムが展開されています。これにより、普段体験にアクセスしづらい家庭の子どもたちにも、充実した体験の機会を提供しています。

体験格差を解消するためには、国や地域社会だけでなく、企業や個人の協力も必要です。例えば、地域でのボランティアや企業の協力を得て、放課後や休日に子どもたちが参加できる体験活動の場を提供したり、地域の図書館や無料の公園での体験活動の機会を増やすことが考えられます。

おわりに

体験格差は、子どもたちの将来に大きな影響を与える重要な課題です。家庭環境や地域、経済状況によって体験機会が異なる中、国や地域社会が連携し、すべての子どもたちが豊かな体験を得られる環境を整えることが求められています。体験を通じて得られる学びや社会性は、子どもたちの成長に欠かせないものであり、その格差を解消することが社会全体の課題となっています。環境や家庭の状況にとらわれず、平等に機会を提供するために、何ができるのか、今一度大人たちが考える必要があるのかもしれません。

(大藤ヨシヲ)

 

参照元

・子供たちの未来を育む豊かな体験活動の充実・令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告 ~21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について~:文部科学省・青少年の体験活動の推進に関する調査研究 報告書

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