




AgentKit:AIエージェントを構築・デプロイ(実運用)するためのオールインワンツールキット「AgentKit」を正式に発表。これにより、高度なプログラミング知識がなくても、AIエージェントの作成が可能となる。
Agent Builder:AgentKitの中核機能の一つで、ドラッグ&ドロップの操作だけで、AIエージェントを容易に設計できる画期的開発ツール。プログラミングができなくても、AI開発ができることを目指している。
ChatKit:開発者が作成したAIエージェントを、Webサイトやアプリケーションに簡単に埋め込むためのツール。これにより、独自のAIアシスタントを多様な場面で展開できるようになる。
Evals for Agents:開発者が構築したAIエージェントの性能を、評価・改善するための評価ツール。テストデータを用いた自動的な性能測定や、改善点の特定をサポートできる。
GPT-5 Pro API:従来より高度な推論能力と効率性を備えた新しい基盤モデル「GPT-5 Pro」のAPIが発表され、より高性能なAIエージェントの構築が可能となった。
AIエージェントの5段階モデル:OpenAIは、AIエージェントの進化段階を体系的に示す「5段階モデル」を提示し、現在の技術レベルと将来的なビジョンを共有した。

これらのツールによって、実用的なAIエージェントが、簡単に誰にでも開発できるとOpenAIは主張しています。専門家が数日かかっていたAIエージェントの開発を、会場デモでは数分でコード生成して実際に動かしていました。

へ~凄いな。それで実際にこれらのツール類は、日本でも使えるんですか?

発表時からすぐに日本でも使えると発表しています。課金が発生するのは11月からだそうです。

プログラミングしなくてもAIエージェントができるのか。たしかに革新的だな。そういえば、動画生成AIのSora2も公開してましたね。こっちは先に大評判だったので、ボクもさっそくスマホで遊んでますよ。日本語で指示するだけで、あまりにリアルな10秒程度の縦長動画が音声や音楽まで含めて、わずか1分程度で生成できるのには驚きましたよ。しかも無料だし。

スマホアプリのSora2は、確かに衝撃的なリアルさでしたね。ただ実在する人物や著作権のあるキャラクターと音楽まで動画に使えるので、大量の訴訟にみまわれるでしょうし、1動画を生成するだけで莫大な電力を消費するので、無料期間は短いですね。

これでフェイク動画が、いっそう激増するだろうな。それにしてもAIの進化が激しすぎますよ。誰かが言っていたけど、テクノロジーがほとんど魔法使いのレベルになってきたな。

”十分に高度な科学技術は魔法と区別できない”と言ったのはSF作家のアーサー・C・クラークで1970年頃でしたね。しかし今のAIのレベルは、以前からOpenAIが示していたAI開発の工程表に、ほぼ準じているので予想通りです。でも実際のサービスを見せつけられると、確かに驚きますね。今のところ、これらのテクノロジーの動作原理をなんとか理解できているので魔法だとは思っていません。しかし来年登場してくるはずのAGI関連のテクノロジーになったら、国家機密レベルになるので動作原理を理解できなくなるでしょうね。

そうか。AIテクノロジーに数十兆円も企業や投資家が投資できるのは、中国共産党に対抗できるOpenAIを、アメリカ政府がどうせ支えるだろうと考えているからか。

そのような考え方を否定しませんが、シリコンバレーではサンフランシスコ・コンセンサスという予言のような共通認識があります。それは「LLMによる言語革命、自立するAIによるエージェント革命、AIが推論できる推論革命、の3つが同時進行している。その結果、すぐにプログラマーが消えていき、数年でAGIが出現し、10年後にはASIが登場して人間の理解を超えた発見をするだろう」という認識です。この共通認識があるので、数千億ドルという莫大な投資を続けていると言われています。


そのコンセンサスは、何回か前の講義でも聴いた内容ですが、「ASIが出現するだろう」と「莫大なAI投資を続ける」の間の理屈が分かりませんよ。ASIが登場すると数千億ドルを回収できるんですかね。

私は不可能だと思っています。明らかに今はAIバブル状態です。確かにAIがこのまま進化し続けて、AGIやASIが登場した場合、現在のAIインフラつまりデータセンターやGPUや電力などはまったく足らないので、インフラ投資が必要だ、という主張は理解しています。しかしMicrosoftはOpenAIに130億ドル投資していますが、現在のOpenAIの事業損益は2024年の売上37億ドルに対して純損益は50億ドル赤字、2025年上半期のみの売上43億ドルに対する純損益はさらに135億ドルと赤字が拡大しています。

あれ、以前の話だとMicrosoftはAI開発でGoogleにかなり出遅れたんで、OpenAIを買収しようとしたり、それができなかったから資本提携したんですよね。でも今のところは、大赤字の企業をつかまされたようだな。

MicrosoftはOpenAIにかなりの金額を出資していますが、「OpenAIが少なくとも1,000億ドルの利益を生み出せば、AGI開発を達成したものとする」と奇妙な締結をしていると報道されています。

なんですか?そのおかしな契約は。

MicrosoftがOpenAIにAGIの完成を達成させるための契約ですが、AGIの定義が誰にもできないので金額で縛ったのでしょうね。

そういえばチクタク先生は1年前の講義で、AIはやがて階層化され分散化していく、と予言してましたよ。でも現在はAGIまっしぐらの状況じゃないですか。

いいえ予言ではありません。根拠を示した私の予想です。それにMITが今年7月に発表した論文Meek Models Shall Inherit the Earthでは、「膨大な計算資源を必要とする巨大AIモデルは、やがて性能が頭打ちになり、小規模モデル(SLM)が世界を支配していくだろう。」と論じています。私の推測と根拠は異なりますが、同じような結論ですよ。

そうなんだ。Sakana AIも似たような考えだったな。そうか、貧乏な日本企業は巨大なLLM構築はあきらめて、ドメイン特化型のSLMに注力しているから、結果オーライだな。でもソフトバンクだけは、AIに日本の国家予算なみの金額を投資すると、トランプ大統領に約束してたけど大丈夫かな~

ソフトバンクの投資先は、AIといってもAI専用データセンターのインフラ構築への投資です。もっとも最近聞いた話ですが、驚いたことにAIインフラ投資金額の60%はGPUチップ購入費だそうです。

え~本当ですか!数十兆円もNVIDEAに支払うんだ。だからNVIDIAの株価が爆上がりしているのか。

GPUメーカーはNVIDEAだけでなくAMDやGoogleも製造しているので、NVIDEAだけへの金額ではないと思いますが。まぁテスラのイーロン・マスクへの報酬を、1兆ドル(150兆円)にするような異常な国ですからね。

しかし金銭感覚がマヒするような話ばかりだな。なんで日本の国家予算より高額な金額を、たった一人の人間に支払わなければならないんだ。まったくアメリカはバブル絶頂期だな。

このAIバブルは、そろそろ崩壊するころだろうという観測が、アメリカや日本でも出ていますね。ただソフトバンクの決算が先日発表されましたが、史上最高益でした。しかしその内訳は、所有するOpenAIの株価値上がりとNVIDIA株を全部売った売却益でした。

え!NVIDIA株を全部売ったんだ。今、最高値だからとんでもない利益だろうな。でも、なんで?

OpenAI に投資するために9000億円で売ったと言っていますが、NVIDIAの株価は説明できない高値なので、利益確定のために売りぬいたのでしょう。

そういえば先生、AIバブルの話も面白いけど、かなりテクノロジーから離れましたね。

失礼しました。ただ、サム・アルトマンの言葉だけは伝えます。「OpenAIのビジネスモデルとは、まずAGIをつくり、どうやって金を稼げばいいかをAGIに尋ねることだ」AIバブルの裏話ならまだまだありますが、かなり長くなるので、ここで止めます。ただし注意してもらいたいことは、AIバブルがはじけて、AI関連企業の株価が大暴落しても、それらの企業が開発したテクノロジーは本物なので、AIの進化は止まりませんよ。テクノロジーの価値や有用性と株価は無関係ですから。では次回、Microsoftが噂になっていたGemini3やGemini Agentを、11/18に発表したので、その話をしましょう。
・OpenAIは、AIエージェントをエンジニアでなくても誰にでも開発できる画期的なツール類AgentKitや高性能動画生成AI sora2など、多数の新製品をリリースした。
・生成AIが大ブームの中、生成AIを利用した企業プロジェクトの大半が失敗だという衝撃的レポートが公開されたが、企業の生成AIへの投資の意欲は衰えを知らない。
・AI開発企業やAIインフラ企業は、日本の国家予算を上回る規模の莫大な投資を続けている。このAIバブルはいずれはじけるが、それでもAIの進化は止まらない。
図版・書き手:谷田部卓
AI講師、サイエンスライター、CGアーティスト、主な著書に、MdN社「アフターコロナのITソリューション」「これからのAIビジネス」、日経メディカル「医療AI概論」他、複数の美術展での入賞実績がある。
(図版・TEXT:谷田部卓 編集:藤冨啓之)
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!
前回に引き続きAIエージェントの話になりますが、今回は最近OpenAiとGoogleが発表した新しいAIと画期的な開発ツールを紹介します。
なんだかAI界隈では、いつも「画期的な」とか「革新的な」話題はかりですね。毎週のようにこの言葉を聞かされると、聞き飽きてきたんですが、本当ですかね。
エンジニアからみると、発表されるテクノロジーは毎回「凄い」と感じているのは本当です。しかし確かにエンジニアの観点に偏っていますね。ユーザーや経営者からみると、それで実際に便利になるのか、生産性が上がるのか、利益が得られるのか、は理解できませんからね。
しかし今回の「AIブーム」は長いですね。企業のAI投資金額も莫大だから、ほとんどバブル状態ですよ。チクタク先生は何度も言ってましたが、AI企業は投資回収できるんですかね。
まぁこのままでは無理だと思います。MITが最近公開した「The GenAI Divide STATE OF AI IN BUSINESS 2025」レポートによると、生成AIのパイロットプロジェクトの95%が失敗したという、衝撃的な統計結果を発表していますからね。
え!それは知らなかった。MITのレポートだから信頼性は高いはずなのに、それでもアメリカ企業のAIへの投資意欲が高いままですね。
レポートでは、この失敗の中身について詳しく分析しているのですが、ごく単純に言うと原因はAI側にあるのではなく、ユーザー企業のAI導入方法に問題が多いと指摘しているからでしょう。レポートは公開されているので、読んでみてください。面白いですよ。
なるほど。まぁ日本企業はアメリカ企業より1年遅れだから、アメリカでの先行事例を学んでいれば大丈夫か。でもMITのレポートなんかチェックしてるのかな~
それはともかく、本題のOpenAIが発表した新サービスを紹介します。10月にサンフランシスコで介された「OpenAI DevDay 2025」で、次のような発表がありました。たくさんあるので、AIエージェントに関する主要なものだけにします。