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DXのキーパーソン!? 経営とデータサイエンスの橋渡し役 ビジネストランスレーターとは?

ビジネストランスレーターとはデータサイエンスを扱う技術部門と経営サイド(ビジネスサイト)の橋渡しを行う翻訳家のような役割がある仕事です。 この記事では、2026年までに200~400万人が必要となると言われるビジネストランスレーターの役割や必要性について解説します!

         

DXを推進していく中で、担当者が直面する課題に「技術者とのコミュニケーションが専門的で分からない」ということがあると思います。

例えば、経営サイドからさまざまなデータ分析の要望が伝えられたとします。そのままデータ分析を担当する部門に依頼しました。しかし担当部署から質問される内容が理解できずに、なかなか前に進められない。もしくは、担当部署に完全に任せていたら、イメージと異なる分析結果があがってきた。という経験をお持ちの方もいるかもしれません。

そんな時に活躍するのが「ビジネストランスレーター」です。 

ビジネストランスレーターとは?

「ビジネストランスレーター」とは、データサイエンティストやAI技術者などの技術部門とプロデューサーなどのビジネス・経営部門を橋渡しする役割の仕事です。

ビジネス部門の求めることを、技術部門にきちんと指示してくれます。逆に、技術部門の専門的な内容をビジネス部門に分かりやすく説明してくれます。ビジネスを「トランスレート」する人なので「翻訳者」という訳です。

そのため、経営視点でビジネスをデザインする能力と、技術的な知識の双方を持ち合わせなければなりません。

「ビジネストランスレーター」は、データサイエンティストのようにデータ分析の実務を行わないまでも、分析ツールの基本的な操作方法や、分析のロジックが分かっていること、そして何より実務におけるドメイン知識を持っていることが重要です。 

経営におけるデータ活用の現状の課題

経営におけるデータ活用の課題

最近はデータに基づく経営判断が重要視されています。しかし、データを使いこなせていない企業も多いのではないかと思います。

例えば、経営層が外部セミナーなどでデータの重要性を見聞きして、トップダウンで取り入れるケース。AIなどの先端手法などばかりを追いかけて、実際には自社の経営判断にはつながらないレポートがあがってくるようなケースはありませんか?

また、せっかくデータ分析で判断材料があがってきたのに、ネガティブな数値だったために、社内評価を気にして受け入れることが出来なかった。ということはないですか?

データ分析では、目的に対する適切な分析手法の指示が重要です。

まずは、ビジネス部門がどのような要求をしているのかを理解し、その要求に応えるにはどのようなデータ分析が必要なのかをイメージします。その上で、データ分析を実施する技術部門に対して、どのようなデータを使用して、どのような分析をして欲しいのか、具体的な指示をする必要があります。

このビジネス部門と技術部門の「翻訳」が的確にできていれば、経営判断に有効な分析データがあがってきます。仮にネガティブな分析結果があがってきたとしても、そのデータが意味する重さや、その結果をどのように活用すれば、その後ポジティブな反応に切り替えることが出来るのかを、ビジネス部門に正しく伝え、経営改善に正しくデータを活用することが出来るようになるのです。

今はまだ、そのビジネス部門と技術部門の「翻訳」が、うまくできていないケースが多く、そのため「ビジネストランスレーター」の必要性が語られているという状況です。 

ビジネストランスレーターの役割

ではどうすれば適切なデータ分析が実施でき、データを経営に活用できるようになるのでしょうか。ビジネストランスレーターの役割について考えてみましょう。

現在ビジネスは、データに基づく判断が重要視されています。

「データドリブン経営」という言葉も、よく耳にするようになりました。

「データドリブン経営」は、データ分析から経営戦略の判断を行う経営手法です。

アメリカのリサーチ会社Forrester Research 社によると、デジタルを活用しデータ分析から得たインサイトを出発点として経営判断を行っている組織は、世界のGDP成長率の7倍以上のスピードで成長しているということです。そのため、「データドリブン経営」が注目されているのです。

日本企業でも、ビッグデータの活用が重要視され、市場動向の予測やマーケティングに活用されています。ただ、ビッグデータの解析には、高度な技術が必要です。

例えば、全国でチェーン展開する小売り業態の企業が、POSデータを中心としたデータから、コロナ禍での店舗営業戦略を立てたいと考えたとします。

基本的には自社のPOSデータで、コロナ前後の同時間帯での購入商品の差異をみつけ、コロナ前後の変化を検証していくでしょう。しかしこの際に、「どのような外部データを取り込み、エリアごとにどのような特性を加味して分析すべきか」という視点は、ビジネス部門の担当者の専門外となります。

技術者に対して、どのような外部データとPOSデータを連携して分析すれば、信憑性のあるデータが分析できるのか。また、どのような条件で分析してしまうと、信憑性が下がってしまうのかなど、データの取り扱い方を的確に判断できる人材が必要となってくるのです。

そのように、ビジネス部門が欲しいデータには、まずどのような根拠が必要なのかを考えます。そして、その根拠を示すためには、どのような外部データと内部データをどのような条件で掛け合わせて分析する必要があるのかを考え、技術部門と調整する必要があるのです。

その役割を果たすのが「ビジネストランスレーター」ということになります。 

ビジネストランスレーターに必要なスキル

ビジネストランスレーターに必要なスキル

では、「ビジネストランスレーター」には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。

日経BP社の書籍「データ分析人材になる 目指すは『ビジネストランスレーター』(三井住友海上火災保険デジタル戦略部 木田 浩理 氏/伊藤 豪 氏/高階 勇人 氏/山田 紘史 氏著)」では、下記の「5Dフレームワーク」を推奨しています。

1.Demand:要求を聞く
2.Design:全体の絵を描く
3.Data:データを集める
4.Develop:分析する
5.Deploy:展開する

つまりこの5Dフレームワークでは、「ビジネストランスレーター」は以下のような業務を行うということになります。

ビジネス部門の要求(Demand)から必要なデータ処理の全体図をイメージ(Design)し、そのデータ処理に必要なデータが何かを判断(Data)し、技術者に指示を出します。

次に技術者と一緒にデータ分析を行い(Develop)、ビジネス部門の要求レベルに達する分析レポートを作成して報告(Deploy)します。

そのため、必要なスキルとしては、以下のようなものがあげられます。

  • ・経営などビジネス部門の要求を理解する知識
  • ・データサイエンスの分析手法の知見
  • ・データの加工や集計するための統計パッケージツール活用
  • ・データを可視化するためのBIツール活用
  • ・AI開発でも有効なPythonなどのプログラミング知識
  • ・最終的に報告書にまとめるレポーティングスキル
  • ・データサイエンスプロジェクトをまとめるプロジェクトマネジメント能力

ビジネストランスレーターの今後の需要

ビジネストランスレーターの今後の需要

では、今後「ビジネストランスレーター」の必要性は、どのようになっていくのでしょうか。

まだ日本国内では、「ビジネストランスレーター」に関する調査データなどが見当たらないため、技術部門であるデータサイエンティストのニーズから紐解いて考えてみましょう。

一般社団法人データサイエンティスト協会が2021年4月に発表した「データサイエンティスト国内企業採用動向調査」によると、データサイエンティストを直近1年で増やした企業は49%もあるそうです。また企業に在籍するデータサイエンティストのタイプは、「エンジニアタイプ」が51%で、前年調査より8ポイント増加しているということです。

企業でのデータ活用が重要視され、実務としてデータ分析を行う「エンジニアタイプ」の採用が進んでいるという状況が分かります。

ということは、増加している「エンジニアタイプ」のデータサイエンティストと、ビジネス部門をつなぐ「ビジネストランスレーター」の需要も増加することがイメージできます。

実際にマッキンゼー・アンド・カンパニーが2016年12月7日に発表したレポート
The age of analytics:Competing in a data-driven world」では、「ビジネストランスレーターの需要が2026年までに200万人~400万人に達する見込み」と掲載しています。

今後、必要性が高まる重要な職種となりそうです。  

日本におけるビジネストランスレーターの実際

それでは、日本国内の「ビジネストランスレーター」は、どのような人材なのでしょうか。

日本国内では、前述の書籍「データ分析人材になる」を著作している「三井住友海上」が、ビジネストランスレーターのオピニオン的な存在となっています。

同書籍の中では、木田 浩理 氏を中心メンバーとする三井住友海上のビジネストランスレーター育成に関する内容が掲載されています。同社のビジネストランスレーターは、出身業界はさまざまで、自動車、家電、コンサル、通販、製造などバラエティーに富んでおり、年齢も30代前半から40代後半までさまざまなのだそうです。

今後世界的に見れば、「ビジネストランスレーター」は前述のように、数百万人単位で必要となってくるのですから、これから育成していく必要もあるでしょう。

日本ではこのような専門分野を扱う人材は、「理系」と考えてしまいがちです。しかしビジネストランスレーターは、データ分析の基礎が分かっていれば文系でも対応できます。

IT業界で文系SEが活躍していることをイメージしてみてください。

文系SEは、自分で完全にプログラムを組むまでの実務は行いません。しかし、ビジネス部門の要求する機能を技術者にどのように指示すれば出来上がるか、しっかりとイメージしながら必要な設計に関する内容を技術者用に翻訳して伝えます。つまり、ビジネストランスレーターと同じような役割を果たしているのです。ですから、マーケティングが得意な文系人材に、データ分析を学ばせながら育成させていくこともできるのです。

実際、三井住友海上でも、文系のデータ分析人材の育成に力を入れているということです。

その経験の中で、大きく成長した人の性質として、前述の書籍の中で以下のように示しています。

・ビジネスに課題意識を持つ ・向上心があり自発的に勉強する ・周囲とコミュニケーションがとれる ・柔軟な思考を持っている ・素直でまじめにコツコツできる

日本国内では、まだまだ新しい存在のビジネストランスレーターですが、既にその必要性は高くなっています。早い段階から、ビジネス部門とデータ分析の技術部門の両者を理解できる人材を、育成していく必要がでてくることでしょう。

まとめ

「ビジネストランスレーター」とは、データサイエンティストやAI技術者などの技術部門とプロデューサーなどのビジネス・経営部門を橋渡しする役割の仕事です。

自分自身でデータ分析の実務を行わないまでも、データ分析の手法は理解している必要があります。ビジネス部門の要求に対するデータ分析結果を分かりやすく表現するために、BIツールなどを活用してレポーティングできるスキルが重要となります。

今後世界的に見れば、数百万人単位で必要となってくると言われるため、今後データ分析の世界では、重要視される存在です。

これから育成する場合には、マーケティングスキルのある文系人材でも、データ分析の基礎を学べば対応できる可能性は十分にあります。理系人材に限定せずに、データ分析に興味を持つ社員を育成し、ビジネストランスレーターへ成長させるという発想も今後は必要になるでしょう。

 

 
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