About us データのじかんとは?
第二部ではウイングアーク1st株式会社の久我温紀さんをモデレーターとし、freee株式会社の川西康之さん、株式会社HDEの水谷博明さん、株式会社Marketoの湯原良樹さんとともに「私たちはどうやってマーケティングと営業の壁を乗り越えたか」というテーマでパネルディスカッションを開催。
久我:まず、そもそも「営業とマーケティングの“壁”はなぜできる?」に関して、それぞれ皆さんに伺って行きましょう。川西さんからお願いします。
川西:営業とマーケティングの壁はあってもいいんじゃないかなと思っています。両者は役割が違いますから。重要なのは、いかに適切な緊張関係をもつかかなと。皆さんはどう思いますか?
水谷:「営業は狩人でマーケターは農耕民族」とよく言いますね。そもそも前提が違うため利害関係が一致しづらいですが、組織として追い求めるものを共有すべきと思いますし、壁は一緒に乗り越えるものだと思います。弊社では、その壁を乗り越えた結果が現状ですね。
湯原:弊社に関しては壁がほとんどないです。そもそもマーケティングオートメーションは、営業とマーケティングが共同体となるためのツール。最近の採用活動では、マーケターが営業として応募してくることがあります。壁を乗り越えたくてMarketoに入社した社員に聞いてみても「壁がある」という話はありません。また「お互いに緊張感を持つためには、ある程度壁をもつべきだ」という意見もあります。
おそらくMarketoでも、今後企業規模が大きなっていくと壁ができると思いますが、その理由はお互いに何をしているのか知らないから。営業がどういうお客さんと対峙しているかをマーケが知らなかったりしますね。
久我:以前お話した際に印象的だったのは、川西さんが「壁は必要悪」と言っていたこと。もう少し詳しくお願いします。
川西:会社としての共通認識をもつのは前提として、営業とマーケターがそれぞれ個別最適化すると両者がぶつかるのは不可避だと考えています。その点から、壁があってしかるべきではと。
久我:つまり「低次元の壁」と「高次元の壁」があるんですよね。「低次元の壁」とは「どうせ相手は分かってくれない」という壁。一方でお互いが必要としている状態で生まれる、緊張感を持った「高次元の壁」ならあるべきではということかなと。
川西:たとえば、若手マーケターが営業にマウンティングされて帰ってくることがあるんですよね。私も、普通に話してるのに「なんでマウンティングするんですか?」と言われる(苦笑)。マーケターと営業の性質の違いはあるので、どうしても壁が生まれるのかもしれません。むしろ、皆さんどう乗り越えているのですか?
水谷:営業は日々お客さんをマウントするからしょうがない(一同笑)。ただお互いが目標を共有しあうと、「これは壁ではないのでは?」と気づくと思います。狩猟民族と農耕民族の特徴を理解し合い、地道に歩み寄っていく。
私は、若手がマウンティングされたら「営業同行しろ」と言いますね。営業が日々どんな活動をしているかを見たり、移動中にコミュニケーションを取って、誤解が解けることもありますし。
久我:まとめましょう。営業はお客さんをマウントしがち(苦笑)。それゆえに、社内のマーケターにもマウントしがち。相手の役割を理解して、顧客のための仲間意識が芽生えると壁が解消されるということですね。
川西:弊社では当初は横串だったマーケを、事業部ごとの主要なKPIを追えるように独立化しました。そして私自身がこだわった点としては、とにかく言葉遣いを徹底しましたね。同じ会社に居るのに「あっちは」「こっちは」と言わせない。常に「私達は」とするように。
久我:言葉遣いというのはおもしろいですね。本当は同じ目標を達成するひとつのチームのはずなのに「あっちが」「こっちが」っていうのは線を引いてるということです。言葉遣いに注意するだけで、全体のプロセスのなかにいるマーケターが自分の役割を意識して動くことができるんですね。
水谷:これ、めちゃめちゃ大変なことですよね。営業がいる場所にマーケが入ると、言葉遣い以外にも乗り越えることが色々合ったのでは?
川西:キーポジションを入れ替えました。マーケの主要なポジションにいる人材を営業へ異動し、同じように営業からもマーケへシャッフルしました。先程おっしゃっていたように営業同行もしますし、Salesforceで録音されているものをマーケも聞きますし、営業のメンバーがMarketoを使えるように講習をしたり。
水谷:ジョブローテはどれくらいの頻度で?
川西:大規模なローテーションは半年に1回くらいですね。
川西:クオーター末にマーケができることが少なくなると、営業の現場にいって自分の席で提案・クロージングしまくっていました。その光景を見て「低次元な壁」を越えられたと実感しました。
久我:マーケが営業と一緒にクロージングをやってるって完全に壁がない状況ですよね!
続いてHEDさんはどうですか?
水谷:狩猟民族と農耕民族……って何度言ってるか分かりませんが(苦笑)両者の間にマーケティングと営業両方の性質を持ったインサイドセールスを置いたことで、組織構造として両者をブリッジさせることができました。
私は自社の製品を自分で使っていて、製品については理解しているほうだと思うので、「何かあれば営業に呼んでください」と言ってます。マーケだからやっていい、やっちゃだめと言われることはないです。
川西:夫婦みたいですよね。お互いが向かい合うのではなく、同じ方向を見ていく。
久我:ほっとくと壁はできてしまいそうですね。しかも手法はひとつではないと。共通項だったのは、水谷さんもマーケティングですけどクロージングしてくんですよね?
水谷:そうですね。私はマーケターですけど、クロージングを自らしていっちゃうタイプです。自分の頭の中で「お客様は何を求めているんだろう?」というカスタマージャーニーマップを作るうえで必要だから。
久我:大きい組織になるほど難しいとは分かるのですが、マーケターが現場から離れてマーケティングの仕事だけに注力してしまうと、本来の目的である「お客様に刺さるコンテンツ」ができなくなってしまうんですよね。でも皆さんの組織ではきちんとそのメカニズムができあがっていると感じます。また、皆さんのマーケティングと営業のKPIも教えていただきたいのですが。
川西:弊社では先程申し上げたようにひとつの事業部のなかにマーケと営業がいて、マーケはSQL(Sales Qualified Lead:営業に渡す見込み顧客)、営業はその月の課金数およびMRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)を追っています。ただ事業部全体のKPIを達成しないと意味がない構造にしているため、結果的に同じ指標としてARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)を追っています。
久我:マーケターも来場者数などではなく、受注に対するKGIやKPIを持っているということですね。水谷さんのところはどうでしょうか?
水谷:弊社もほぼ同じですね。マーケターもインサイドセールスも営業も最終的に一緒に予算を達成する「運命共同体KPI」をもっています。他の部署の数字が達成なければ、評価されない社内制度にしています。受注というゴールを見据えれば、営業とマーケの利害関係は一致するんじゃないでしょうか。
湯原:マーケティングとして達成しなきゃいけない数字はもちろんあります。ただ、マーケティングとして重要視しているのは、商談の金額や件数。営業の商談化のために役立つ顧客選定や分析をおこなっています。数字を見ながら、「どう優先順位をつけていけば営業の役に立つか」をマーケティングだけじゃなくインサイドセールスも意識しています。特にマーケとしては、いちばん大事なのは商談化率だと意識してます。
むしろ「クソリード渡しちゃったよね?」と、逆に営業に謝りに行きますね。同じ組織の中にいるからこそ一緒に振り返ってコニケーションを取っていきます。商談に行ったのに、アポ取るつもりないと言われたら時間の無駄。ノットレディのお客さんは営業に振らない、としています。
久我:同じ目標を持って、コミュニケーションを取っていかないと駄目なんですね。
湯原:私は自分から歩み寄りたいですね。
久我:そのコミュニケーションが大事なんだなと感じます。みなさん組織構造的にも工夫されていますし、KPIもしっかり設定して共通の目標をおかれていますし。これがこのセクションのゴールですね。
久我:では、水谷さんからお話を伺って行きましょう。
水谷:弊社では「営業3.0プラットフォームを作り上げていこう」というスローガンを掲げています。「営業1.0」は刑事型。「とにかく己のカンのみ」で受注までつなげていくという動きです。「営業2.0」はデジタルに抵抗がない世代。数値の共有や管理はデジタルですが、ただし行動は己のカン。「営業3.0」は完全なるデジタルネイティブ。Salesforceで精度の高いデータを入れるのは前提として、Marketoなどのツールを営業みずからが使ってコミュニケーションをとり行動する。マーケターも「営業3.0」に合わせて、そのプラットフォームを作るために支援、協力しています。
久我:テクノロジーを実装していかないと組織のパフォーマンスが上がらないよ、ってことですよね。freeeでは、マーケが営業に営業効率を上げるように圧力をかけてるという話もあったような……?
川西:今の話とも関連して、営業がMarketoを使うようになりツールでコミュニケーションを取っていくスタイルが実現すると、今でいうマーケと営業が渾然一体となっていくのかなと思います。そういう意味合いで「営業2.0はいらない」っていうプレッシャーはお互いにかけあっているのかなと思います。
久我:今回は皆さんすでにデジタルマーケティングを実装しているという前提で。テクノロジーがあるゆえに、コミュニケーションが活性化するとききましたが。もう少し詳しく伺えますか?
水谷:ツールというかデータですかね。弊社の場合、情報(データ)一元管理があったから壁を乗り越えられました。
具体的には、営業がヒアリングしたお客さんのデータを議事録ではなく有効活用できるデータベースとして管理していくことが重要だと思います。そうすればマーケティング側でも、営業が聞いたリアルな情報をもとにナーチャリングのメールを送ることができますし、スコアリングの精度もあがっていきます。弊社で営業とマーケティングの壁がなくなったのは、データベース化による要因が大きいですし、自負するところです。
久我:それはすごく大切ですね。さきほどマーケターが営業に同行するという話がありましたが、現実的にはなかなか難しい。ですがマーケターが位置情報にリーチするために、活動履歴としてSalesforceに営業が入手した位置情報が入っていれば――相対した実感には及ばないかも知れませんが――マーケティングの戦略をアップデートして、PDCAを回せますよね。
もう時間がありませんので最後に。「カスタマーをちゃんと見よう」という話があったと思うので、最後に湯原さんお願いします。
湯原:基本的にお客様のことを考えていればおのずと歩み寄れますし、めざすべき道は見えてきます。Marketoが日本でビジネスを始めるとき、最初に主眼を置いたのはカスタマーサクセスのチームでした。弊社では先人たちが作ってきた土壌があるので、全員がお客様のほうを向くのが当たり前になっている状態ではありました。それができれば、営業とマーケターも互いにカバーしあっていけるのではと思います。
久我:さっきの「同じ目標」ってこれですね。当然それだけでは駄目で、構造とKPIも必須ですが、カスタマーを見ていくカルチャーとビジョンを持つことが同じくらい大切だと。今回のまとめがこちらです。
こうして並べると単純ですが、いかに経営者を巻き込んで実行・実装していくかが重要だと思います。本日はありがとうございました。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!