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近年、どの業界でも高いコンプライアンス意識が求められます。ニュースなどでもコンプライアンス違反などのワードを耳にすることが増え、特に関心が高まっています。
本記事ではコンプライアンスについて解説します。コンプライアンスの正しい意味や、各業界での使い方や違反事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「法令」に明確な定義はありませんが、一般的には法律や命令、条例など国民が守るべきルールを総称したものを指します。
また、企業においては、法令に限らず社会規範を守り、倫理的かつ道徳的に正しく行動することが求められるのです。
企業におけるコンプライアンスの範囲は、主に法令・社内規則・社会倫理の3つです。
国や行政が定めた法令に違反することだけでなく、就業規則や社内マニュアルに反することや、ハラスメント行為などの倫理・道徳に反した行為もコンプライアンス違反となるのです。
医療・看護業界のコンプライアンスについて、広義では一般企業と同じ法令や規則の遵守という意味合いですが、重要視される部分がやや異なります。
ここからは、医療・看護業界におけるコンプライアンスについて紹介します。
医療・看護業界のコンプライアンスに関わる法律としては医師法や医療法、個人情報保護法などがあります。
また、この業界のコンプライアンスの概念には以下の3つがあります。
・医療従事者におけるコンプライアンス
業務を遂行する上で、法令違反や倫理に反し信頼を損なう行為をしないことが重要視される。具体的には、1人の人間としての権利・尊厳を尊重することや個人情報保護に努めることなど。
・病院におけるコンプライアンス
患者の病状だけでなく、心理的・経済的・社会的側面を理解し最適な医療を提供すること、患者の人権やプライバシーを尊重すること、医療従事者に働きやすい環境を実現することなど。
・患者におけるコンプライアンス
患者のコンプライアンスとは、医療従事者の治療方針や指示に従うことを意味する。用法・用量を守って薬を服用しているか、治療方針に従って治療に参加しているかなど。
医療・看護業界のコンプライアンス違反には以下のような事例があります。
・カルテの改ざん、虚偽報告
医者が看護師にカルテの改ざんを指示する、医師が虚偽診断書を作成するなど。
・医療事故の隠蔽
入院患者に間違えた医薬品を注入したことにより死亡させたなどの医療事故を隠ぺいするなど。
・個人情報の流出
院内で第三者がいる前で特定の患者の話をする、電話で入院患者の容態を問われた際に患者の許可なく答えてしまうなど。
医療・看護業界では、「コンプライアンスが良い」「コンプライアンスが悪い」などの使い方をします。
薬の服用など、医療従事者が指示したことを患者が遵守しているかどうかという意味合いで使われます。
介護業界にもコンプライアンスが存在し、特に道徳や倫理観が重要視されます。
ここからは介護業界のコンプライアンスについて紹介します。
介護業界では、法令遵守はもちろん、利用者やその親族、従業員の人権を尊重した行動が重要視されます。
介護業界に関わる法律は、介護保険法・老人福祉法・高齢者虐待防止法・労働基準法などです。
また法令遵守以外にも、介助時の利用者への声がけや、安全運転で利用者の送迎を行うことなどもコンプライアンスに含まれます。
介護業界のコンプライアンス違反には以下のような事例があります。
・利用者への虐待
介護職員が利用者に暴言や暴力、介護放棄や性的虐待などを行うなど。
・長時間労働の強制
職員に対して長時間の過重労働やサービス残業をさせるなど。
・介護報酬の不正請求
利用者や家族に対して過剰に上乗せした報酬を請求するなど。
介護業界においては「介護職員へのコンプライアンス研修を行う」などの使い方をします。
介護保険法では介護者の尊厳の保持が定められており、職員へ倫理的責任を教示するコンプライアンス研修がとても重要です。
ビジネスシーンでの、一般企業のコンプライアンスの使い方や違反事例を紹介します。
ビジネスシーンでは、企業紹介や研修、告発などの場面でコンプライアンスが使われます。
企業紹介では、自社のコンプライアンスへの取り組みなどを紹介することで、倫理的かつ道徳的な経営を行っていることをアピールできます。
また新入社員や昇格者向けの研修や、従業員による告発や報告の場面でもコンプライアンスを使うことがあるでしょう。
コンプライアンス違反の代表例としては以下5つが挙げられます。
・ハラスメント行為
上司や同僚からパワハラやセクハラなど。最近はモラルハラスメントやアルコールハラスメントなどもある。
・長時間労働
従業員の法定外残業や過労死ラインを超える過重労働。
・情報漏洩
会社のデータを外部に持ち出した際の情報漏洩、同僚同士のお喋りで外部に秘密情報が漏れるなど。
・著作物の無断使用
インターネット上のイラストなどを無断使用、盗作するなど。
・悪ふざけのSNS投稿
飲食店の勤務中に悪ふざけをしている写真や動画をSNSに投稿し炎上するなど。
一般企業でのコンプライアンスの使い方の具体例としては、「弊社ではコンプライアンスの徹底を呼びかけている」「取引先でコンプライアンス違反が発覚した」などが挙げられます。
また「コンプライアンス教育」「コンプライアンス研修」「コンプライアンス方針」など複合的に使われる場合もあります。
学校の教職員などは特にコンプライアンス意識をもつことが求められます。教育業界のコンプライアンスについて紹介します。
教育業界のコンプライアンスとして重要視される法律は、地方公務員法や教育公務員特例法や学校教育法などです。
例えば、職務に専念する義務、信用失墜行為や政治的行為や体罰の禁止などです。
これらに違反することで、懲戒などの処分の対象となり、教職員という職務の重要性からニュースなどに取り上げられることもあります。
教育業界のコンプライアンス違反には以下のような事例があります。
・生徒へのいじめや体罰
教職員が児童に対して悪質な体罰や暴言、威嚇を行う、生徒同士のいじめに加担するなど。
・生徒や保護者への性的行為
必要以上に生徒の体に触る、性的羞恥心を害するような発言をする、児童の保護者を執拗にデートに誘うなど。
・個人情報の不適切な取扱い
生徒の個人情報を私的に利用する、個人情報を持ち出して、紛失や流出させるなど。
教育業界では、「教職員に特化したコンプライアンスマニュアル」「教職員向けのコンプライアンスハンドブック」などの使い方があります。
また同僚の不祥事などがあった場合の教職員の相談窓口として「教職員コンプライアンス相談ホットライン」などもあり、教育業界では多様な使われ方がされています。
コンプライアンスは、企業や組織が法令や規範を遵守することを指し、その実践は業界やシーンによって異なるニュアンスを持ちます。一般企業では、法令や社内規則、社会倫理の遵守が重要であり、具体的な違反事例や使い方事例を通じて理解を深めることができます。医療・看護業界では、法令だけでなく、患者やその家族の尊厳を守る行動が求められ、介護業界でも利用者の尊重と法令遵守のバランスが大切です。教育業界では、教職員の倫理と法的責任が強調され、特に生徒や学生との関わりにおいて様々なコンプライアンスが考慮されます。これらの業界を通じて、コンプライアンスがどのように実践され、どのような違反事例が存在するのかを理解することで、私たちはより安全で公正な社会を築く手助けとなります。
著者:sakitsun415
技術職としてキャリアをスタート。その後、行政書士の資格を独学で取得し、現在は大手企業の法務部員として勤務。法律・資格・転職関連の記事を中心にライターとしても活動中。
(TEXT:sakitsun415 編集:藤冨啓之)
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