About us データのじかんとは?
イベントの最後を締めくくるのは、サクセスラボ株式会社代表取締役で『カスタマーサクセスとは何か』著者である弘子ラザヴィ氏のスペシャルセッションです。
セッションは、ウイングアーク1st株式会社執行役員/マーケティング統括部統括部長の久我 温紀(くが・あつき)氏との対談形式で進められました。白熱のあまり10分の延長まで行われたトークの模様をかいつまんでご紹介します。
カスタマーサクセスはなぜ必要になったのか?
その背景には“リテンションモデルというビジネス形態が台頭してきた事情がある”とラザヴィ氏。
リテンションモデルとは、“カスタマー(顧客)を「それなしでは生活できない」というレベルで虜にするビジネス形態”のこと。例えばAmazonプライムに加入しており、ほとんどのモノをAmazon経由で買っている人やiPhoneなしで生活できないという人はいまや少なくないでしょう。
近年さまざまな分野で現れているサブスクリプションはリテンションモデル時代を象徴するサービス形態の代表例です。リテンションモデルがビジネスの定石となるデジタル時代。カスタマーサクセスはすべての企業の生き残りのカギとなるとラザヴィ氏はいいます。
日本の大企業の経営陣と話し合い、ラザヴィ氏がつくったリテンションモデルの定義は以下の通り。4つすべてを満たすビジネスのみがリテンションモデルと認められます。
利用者が、日常的・継続的にそのプロダクトを利用し、モノの所有に対してではなく成果に対して対価を払う
利用者が、いつでも利用を止める選択権を持ち、かつ初期費用が非常に少なくてすむ
利用者が、それ無しでは生活や仕事ができない・使い続けたいと断言できるほど明らかにプロダクトが常に最新状態に更新・最適化され続ける
利用者が、自分にとって嬉しい成果を得られるならば、自分の個人データをプロバイダーが取得することを許す
出典:弘子ラザヴィ『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』英治出版、2019
モノへの欲求が低下し、価値観が多様化したミレニアム以後の世代にプロダクトを売るには、リテンションモデルへのシフトが求められます。
それに成功した大企業の例として対談中に挙げられたのがAdobeとマイクロソフト。
リテンションモデルは“買った後に良くなる”ことをラザヴィ氏は強調します。ユーザーのデータの取得が容易になったこと、アップデートのコストが格段に下がったことで常にプロダクトは更新され最適化される。その結果カスタマーサクセスが実現されることで大企業でも変化し、さらなる成功をつかむことができるのです。
リテンションモデルは”買ってもらってからが大切”です。
それは、チャーン(解約してしまった顧客)の割合が数年後の企業の成長率に大きな差を及ぼすから。実際、毎月5%のチャーンが発生する企業と既存顧客を逃さず逆に2.5%のアップセル/クロスセル(追加購入やグレードアップを行った顧客)を得た企業の5年後の売上には3倍の差が発生するそうです。
チャーンを防ぐために企業はどうすれば良いのでしょうか?
人を追加する?
それはあまり良い方法ではないとラザヴィ氏はいいます。なぜなら採用や育成には多くの時間がかかるから。そこで重要なのが“データ活用”。データを集め分析することでチャーン/アップセル/クロスセルの兆候が見えてきます。データサイエンティストやデータ活用専任チームの協力を得て、データドリブンな顧客理解を進めましょう。
カスタマーサクセスのサクセス(成功)とは要するに何なのでしょうか?
「カスタマーをディライト(≒満足・ワクワク)させるのはいいけどそれだけじゃ不十分」
Dropbox CCO ヤミニ・ランガン氏の発言を引用してラザヴィ氏は言います。カスタマーサクセスとは、文字通り顧客の成功です。プロダクトの利用により期待される“結果”が得られなければカスタマーサクセスとはいえません。その結果にはカスタマーが気づいていない問題の解決なども含まれます。
「これからの企業はデータの力でカスタマーが望む以上の成功を提供していかなければならない。そのための組織、業務プロセス、カルチャーが必要ですね。」
そうまとめる久我氏の発言で白熱のトークセッションは幕を閉じました。
3時間以上に及ぶイベントのハイライトをお伝えしました。
データ活用に真剣に取り組まなければ企業は勝てない時代に入っていることが、弘子氏のセッションから伝わったのではないでしょうか?
システム担当者にとって身近なデータ活用の第一歩は、現場を改善すること。そのための知見と仲間を得るための場としてnestは存在します。
nestへの加入方法は簡単。Facebookグループで参加申請を行い、いくつかの質問に答えるだけです。BIツールを使ったデータ活用に興味がある方は参加を検討してみてはいかがでしょうか?
(宮田文机)
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