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それは、私達の生活スタイルの変化に大きな理由があります。ドイツとイギリスがサマータイムを導入した第一次世界大戦時、一般家庭に普及している電化製品は「照明」がほとんどでした。つまり、夜に照明を消すことで電力消費を大きく削減できたわけです。
しかし、今はどうでしょう。
パソコンやテレビ、IHヒーターに冷蔵庫と一般家庭に普及している電化製品の多くが時間帯に関係なく使われています。そのため、時代の変化にともなってサマータイムの効果が薄くなってきたというわけです。
EUでサマータイム廃止が議論されている主な理由が「省エネルギー効果が乏しい」からなのであれば、「夏季オリンピックで暑い時間に競技をしなくてもいいように」と導入の議論を始めた日本にはあまり関係ないように思えます。
しかし、先ほどの欧州委員会での調査では「省エネルギー効果が乏しい」と答えた20%の人々を大きく上回る43%が「健康への悪影響」を挙げているのです。
それを裏付ける研究が、2013年にリバプール・ジョン・ムーアーズ大学(Liverpool John Moores University)の心理学者、イヴォンヌ・ハリソン(Yvonne Harrison)氏によって行われています。
彼女の論文によれば、サマータイム開始時に睡眠時間が1時間短くなることによる睡眠不足の影響は1週間続き、しかもサマータイム終了時に1時間長く眠れている人はほとんどいないとのこと。これが原因かどうかはわかりませんが、2008年にスウェーデンで行われた研究では、サマータイム開始から3週間で心臓発作を起こす人が顕著に増え、逆にサマータイムが終了してからの3週間でぐっと減るという結果も出ています。
これは多くの動物が持つ「概日リズム」、いわゆる体内時計が狂うことによる障害と見られていて、カザフスタンではこの健康被害を理由に2005年にサマータイムが廃止されました。
第二次世界大戦が終わった直後、GHQに支配されていた日本でも、当時アメリカがすでに導入していたサマータイムがそのまま持ち込まれて3年間だけ実施されていたことは、あまり知られていません。
その時は、残業の増加や寝不足から大変不評で、サンフランシスコ講和条約が締結された直後に打ち切られています。ちなみに、当時の日本では「サンマータイム」と表記されていました。
今回の記事ではサマータイムについていろいろ調べてみましたが、ある特定の時期に必要に迫られて実施された習慣が完全に定着して、その悪影響にも関わらず「やめられない」状態になっている側面が見えてきます。
仕事においても、特定の業務で必要に迫られて変更した規則やデータの扱いが、気がついたらそのまま定着してしまった、という悪習があったりしますよね。
一度冷静になって、今ある習慣を見直してみるいい機会かもしれません。
【参考サイト】 The impact of daylight saving time on sleep and related behaviours | Sleep Medine Reviews EU to recommend end to changing clocks twice a year | The Guardian 欧州の夏時間、8割超が「廃止」求める | 日本経済新聞
(塚岡雄太)
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