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デジタル・ハグとは? コロナ禍を経た私たちに必要なことを教えてくれる研究結果

         

新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、少しずつ世の中が平時に戻りつつあるように感じます。コロナ禍は様々な制約が起こり、経済だけではなく日常生活にも大きな変化をもたらしました。リモートワークが当たり前になったというメリットがある一方で、人々の交流が分断され、人間関係にも影響を及ぼしたのも事実です。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)とユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの研究チームは、科学誌『Frontiers in Psychology』において、「デジタル・ハグは有効か?デジタル・タクトを用いてオンライン上で社会生活を再体現する(Do digital hugs work? Re-embodying our social lives online with digital tact)」と題された研究論文を発表しました。果たして、デジタル・ハグとはどのようなものなのでしょうか。

デジタル・ハグとは?

通常のハグ、というのは誰かを抱きしめる行為のことを指します。日本語でも「ハグする」という言い回しが最近はかなり浸透してきているかと思いますが、ハグするというのは非言語コミュニケーションの中でもかなり一般的に行われていることであり、かつデジタルの世界、オンラインの世界では代用が難しい行為の一つです。

対して、デジタル・ハグとは、物理的なハグ(=直接的な交流)ではなく、物理的ではない社会的な交流のことを指します。例えば、コロナ禍において、遠く離れた家族とZoomなどを利用してコミュニケーションを取ったり、SNSなどでメッセージを送り合ったりした経験がある方も多いと思いますが、これらはデジタル・ハグに当たります。上記研究論文では、このデジタル・ハグは有効であるか? について述べられています。以下で詳しく見ていきましょう。

オンライン上でも「思いやりのあるつながり」を見出した人たち

同研究チームは、イギリス、日本、メキシコの18歳以上の人々を対象にオンラインでのアンケートを実施しました。その結果、多くの人が、オンラインのみでの交流に不安を持った一方、デジタルを介したやり取りの中で思いやりのあるつながりを見出し続けた人たちがいたことを発見しました。

研究者たちは、Mixed Reality Interaction Matrix(MRIM)と呼ばれるフレームワークを利用し、物理的・仮想的などの様々な要素に分解しました。その結果、物理的なものを除くすべてのことがデジタル空間において代替されていることを見出しました。また、他者との交流においてお互いに一定のスキルがある場合には、身体的接触などオンラインでは実現できない要素の欠落を補うことができることがわかったのです。

「デジタル・タクト」という名のスキル

一般的に、対人関係スキル、場面ごとに異なる対応をするスキルなどを身に付けるには、ある程度の時間が掛かります。このスキルはデジタル上でも求められ、良好な人間関係を築く上でも重要です。上述の研究チームは、この一連のスキルセットを「デジタル・タクト」と呼んでいます。

この能力のある人は、たとえオンライン空間であっても既存の規範や慣例が存在していることを認識しており、他者とうまくやれるように適応しています。このデジタル・タクトを持っていることが、オンライン上で起こる諸問題を解決する第一歩になる、と研究員であるマーク・ジェームズ博士は話しています。今後この研究チームは、デジタル・タクトを実験的に調査していく予定とのことです。

デジタル・タクトは、オンライン上の欠点や諸問題すべてに対処できるとは言い切れません。しかし、今後研究が進めば、これらの問題を解決する手段となりえるかもしれないのです。今後もこのチームの研究に注目が集まります。

「デジタル・タクト」は今後必要なスキルとなり得る

今、SNSを見ると、意見の対立や批判・中傷などかなり殺伐とした雰囲気を感じる時があります。しかし、デジタル・タクトの研究が進めば、これらの空気が変わっていく可能性があります。例えば企業においては、研修のなかでこのスキルを習得するカリキュラムを設けることができるでしょう。学校教育においても、特別授業としてオンライン上での交流の仕方を指導することは難しいことではありません。オンライン上でのふるまいによって、現実生活に支障を来すようなことだけは避けたいところです。

冒頭でも触れましたが、コロナ禍を経て私たちの生活は一変しました。しかしながら、オンライン会議やリモートワークなど、必ずしも対面である必要はないことが明らかになりました。場所を選ばずにやりとりができるという点で、今後もオンライン上でのやり取りは増えていくものと思われます。だからこそ、それに適応するためのスキルも必要になってくるのです。

とはいえ、物理的なハグが不要になる世の中がやってくるとは到底思えませんので、近くにいる人には物理的なハグを、頻繁に会うことが難しい人にはデジタル・ハグを、という使い分けが大切であり、人と人との交流においてはやはり、「コミュニケーションの頻度」や「コミュニケーションの密度」というのが重要なのではないかと改めて考えさせられる研究結果ではないかと思います。

(安齋慎平)

 

参照元

・Do digital hugs work_ Re-embodying our social lives online with digital tact | Frontiers
・DigitalHug Social Insight Advisory

 

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