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「下町ロケット」のモデルになった企業も。:実は医療機器後進国な日本の現状と現状打破に挑戦する中小企業とベンチャー企業

         

今人気のテレビドラマ『下町ロケット』を見て、胸を熱くしている読者の方も多いことかと思います。

前編ではロケットのキーデバイスであるエンジンバルブを独自技術で開発して、超大手企業の帝国重工と一緒にロケットを飛ばした町工場「佃製作所」ですが、後編のガウディ計画ではロケット以上に日本企業が苦手とする医療機器市場へ挑戦しています。

日本の製造業は世界トップレベルであり、精密加工技術や高度なハイテク機器に強いから当然医療機器分野にも強いはずだと思う人も多いと思いますが、実はそうではありません。今日はそんな医療機器分野における挑戦についてまとめてみたいと思います。

医療機器分野で日本は後進国!?

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図:医療機器業界の世界ランキング2014

上図をご覧頂けばわかると思いますが、トップ10に日本企業は1社もありません。

それどころか、日本企業のトップは、20位にテルモがかろうじて入っているだけです。東芝ですら22位で、内視鏡の世界市場シェア7割を占めているオリンパスが25位というのが実情です。

さらに、日本企業が得意としている医療機器は、医療検査機器と呼ばれる領域です。これは、X線検査装置(東芝、島津製作所など)や血液検査(シスメックスなど)で、ドラマ『下町ロケット』の後編のテーマとなっている人工心臓や人工弁、人工関節や人工血管など患者の治療に使われる治療系医療機器はそのほぼ全てを海外からの輸入に頼っています。毎年7,000億円以上の治療系医療機器を輸入しています。

ドラマのなかでも繰り返し出てきますが、こうした治療系医療機器の開発は莫大な開発投資が必要であることと、不具合などが原因の医療事故による訴訟費用と、これによるマイナスイメージが強く、日本企業は苦手としている分野です。

日本の医療機器開発が遅れている理由

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(図:首相官邸 健康・医療戦略推進本部) 「次世代医療機器開発推進協議会」活動実績資料(平成27年9月30日現在P.4より)

医薬品や医療機器を管轄しているのは厚生労働省ですが、これまでは規制や業界ルールが厳しいことが原因で、日本企業が開発した医薬品や医療機器であっても、日本で使用が認可されるのが欧米より1年以上遅れてしまうケースが相次いでいました。これは、デバイスラグと呼ばれています。

2013年に改正され、2014年より施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法、薬機法)」(旧薬事法、改正薬事法とも言われています)により、こうした取り組みが見直されました。

首相官邸もこれを後押しするかたちで「次世代医療機器開発推進協議会」などを設置して、遅れている日本の医療機器開発を支援しています。

下町ロケットのモデルとなった企業「福井経編興業」

さて、ドラマ『下町ロケット』で登場する架空の繊維ベンチャー企業「サクラダ」ですが、実はそのモデル企業が福井に実在します。絹糸を特殊技術で編み上げた“人工血管”を開発する「福井経編興業」がその企業です。ドラマでもその工場でロケが行われています。

この企業が取り組んでいるのは、「人工血管」という治療系医療機器で最先端の技術を使った医療機器です。

現在一般的な人工血管は、ポリエステル製ですが、血栓が詰まりやすいという欠点があるため6ミリより細い血管を作ることができません。つまり、治療部位や子供などには移植することができないという弱点があります。絹糸による人工血管であれば、1.5ミリまで細くすることが可能であるとして、こうした欠点を克服することができます。実用化まであと少しと言われていますが、中小企業やベンチャー企業が未来の医療に今も挑戦し続けているのです。

こうした裏話に思いを馳せながら、毎週日曜日のドラマ『下町ロケット』をワクワクしながら観るのも楽しいのではないでしょうか。

(データのじかん編集部)

 

[著]Wingarc1st Official The BLOG編集部
本記事はウイングアーク1st株式会社の運営するThe BLOGに掲載された記事を許可を得て掲載しています。

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