前回のエピソードでは、どんなにデータ活用をしたくない、と思っていても残念ながらあなたはすでにデータ活用をしてしまっていて、今さらデータ活用をしたくない、と主張したところで手遅れであり、そうであればいっそのことデータ活用についてもう少し意識的に取り組んでみてデータを活用する習慣を身につけてはいかがでしょう、では、その最も簡単な方法として体重を測って記録してみましょう、というお話をしました。
今回のエピソードでは、体重を記録することによってどんなことがわかるのか、という話について書いてみたいと思います。
【データ活用なんて簡単でR】エピソード1:一人でできる超簡単データ活用入門編
体重を測る、という行為の利点はなんといっても体重というものは誰でも簡単に数値化できる、というところです。
年輪を重ねるたびに人として成熟してきた、と感じることはなかなか難しいですし、本当に成熟してきたのかどうかを証明することもこれがまたなかなか難解です。自分的にはかなりの成熟を特にこの2年くらいで遂げたと感じていても、周りの人からすると、いや、10年前と比較すると確かに少しは成熟してきたかも知れないけれど、この3、4年は停滞傾向にある、と感じているかも知れません。
ですが、年輪を重ねるたびに人として体重が増してきた、と感じた場合、体重を測り、自らの体重を数値化し、それを過去のデータと比較することによって体重が増えたか否かを判断することはいとも簡単にできます。つまり、10年前は60kgだった体重が今年は70kgに変化している場合、この十年間で体重が10kg増加した、という受け入れがたい事実が判明します。反対に10年前80kgだった体重が今年は72kgに変化していた、という場合、それは8kgほどの減量に成功している、ということになります。
しかし、増えているのか減っているのか、というのを判断するためには過去のデータが不可欠です。もしも過去のデータが全く存在しない場合、体重の変化が客観的事実なのかどうかを判断することは残念ながらできません。もしも過去に健康診断を受けた結果が手元にあれば、体重という項目は必ずそこに存在していて、何らかの数値が書かれているはずなので、どうしても過去の自分の体重が思い出せない、という方はそちらを参照してみてください。結果が手元にない、という方でどうしてもそのデータを入手したい、という方は健康診断を受けた医療機関にもそのデータは保存しているはずなので、問い合わせると教えてくれるかも知れません。また、体重を減らしたいと思っている人もいれば痩せ型の体型なので頑張って体重を増やしたい、と思っている人もいるので、減量=成功と先ほど書いたのはちょっと考えが浅かったような気がするのでこの場を借りて訂正させて頂きます。
いずれにせよ、前回の記事を読んで人生で初めて自分の肉体の重さを数値化してみた、という昨今の日本では極めて珍しい人生を歩んでいらっしゃる方でも、今日測定した体重データを一晩寝かせると、それは漏れなく昨日のデータに早変わりするので、まだまだ熟成されているとは言えないですが、これを過去のデータとして使えば体重が今後増えるのか減るのかをトラックしていくことができるようになります。
さて、しばらく日常的に体重を測定する、という行為を続けてみると、その行為が習慣化してきます。一説によると人間の習慣というものは20日以上連続でやると作られるそうなのですが、まぁ言ってもアプリを開いて体重計という名のIoTデバイスに自らの肉体を載せるだけなので、この習慣に関してはそこまで難易度が高いわけでもなく、さして人に自慢できるほどの習慣とは言えないかもしれないですが、体重を記録するだけでも毎日やると自分の体が今日は普段より重いのか軽いのか、というのが自分の感覚としてわかるようになってきます。
今日はなんだか動きが軽やかで、いつもよりフッ軽な自分がいるなぁと感じながら体重計に載るといつの間にか1.5kg体重が軽くなっていた!という時もあれば、全然体重は変わっていなかった、あるいはむしろ重くなっていた、という場合もあるかもしれませんが、その感覚が必ずしも正しいわけではない、ということがそれによって分かりますし、だからこそ感覚や経験だけに頼ったデータ活用以前の人類の仕事方法は若干正確性を欠くものであり、感覚や経験や度胸だけに頼らず客観的な数値を記録することは重要なことであると理解して頂けるかと思います。しかしながら、決して感覚や経験は全く役に立たない、というわけではなく、むしろ感覚や経験もデータ活用において極めて大切な要素なので、客観的なデータを記録しながらも、自分の体の感覚もちゃんと感じ取っていくというクロス手法がおすすめです。
ちなみに、体重計によって測定される数値はこれは誰が測っても同じ数値になる客観性の高いものなので、これはデータの中でも「ハードデータ」と呼ばれる種類に分類されます。同様に、今日の気温や日付、時間などもハードデータと呼ばれるデータになります。そして、今日の体の感じはどう?という問いかけに対するあなたの答えを1から10段階に分けて数値化していく、というのは同じデータとは言え、7と8がどのくらい違うのか、普段の状態を5とするのか、8とするのか、などかなり主観的な部分が入ってきてしまうため、これは同じデータでも「ソフトデータ」と呼ばれるデータに分類されます。先日公開されたタイムくんのネタとしてもこの話を取り上げているので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。
【タイムくん–第125話】ハードデータとソフトデータ
タイムくんの話の中ではソフトデータの例としてM-1の審査得点をあげているのですが、それぞれの審査員の「面白い」の基準が何点くらいなのか、というのはなかなか難しく、また最初のパフォーマンスに何点をつけるのかによっても変わってきてしまいます。あまり最初の組に高い点数をつけてしまうと、もっと面白い組が登場した場合それに加点しなくてはいけなくなり、またその組よりも面白い組が登場した場合、これ以上差別化が測れない、という状況が起きてしまうため、多くの審査員が最初の芸人には90点を付けてしまう、という仕方ないのだけれど、なんとかしてあげたい、でも最初に登場するのは不利な感じが否めない、とは言え誰かが最初に登場しなくては番組が進まないのでどうしようもないという類のソフトデータも世の中には存在しますので、データを活用する際にはそのデータがソフトデータなのかハードデータなのか、というのも少し意識してみてください。
さて、人間の体重というのは、かなり近代社会においては関心が高いトピックとなっているため、かなり研究が進んでいます。過去のデータがない場合や、なんとなくのデータは覚えているのだけれど曖昧すぎて比較対象にしづらい場合などに参考として使える数値が実はいくつかあります。その一つの指標となるのが「適正体重」という考え方です。津市のホームページではこの適正体重を「病気になるリスクが少なく、健康的に生活できる体重」と簡単かつ適切に説明しています。また、なぜ適正体重が重要なのかという理由として、「肥満は、生活習慣病の発症や腰痛などに関連し、“やせ”は貧血や骨粗しょう症などの要因となる」という理由が述べられています。
気になる適正体重の計算方法ですが、適正体重を計算する前にまずBMIという概念が重要になってきます。BMIとはBody Mass Indexの略でこの数十年の間にいつの間にか国際標準として用いられるようになった考え方です。BMIを求めるために必要なデータは「体重」と「身長」です。いずれもハードデータに分類される数値なのでかなりの客観性が期待できます。
BMIを求めるための計算方法は
体重(キログラム) ÷ [身長(メートル) × 身長(メートル)] = BMI
という式によって求められます。
若干ややこしいのですが、健康であると考えられるBMIは年齢層によって異なります。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると目標とするべきBMIは下記のようになっているそうです。
しかもややこしいことに、BMIの計算方法は世界共通でありながら、肥満の判定基準は国によってまちまちなので、たとえば日本では肥満体型と判断される人でもアメリカの基準では肥満ではない、と判断されることがあります。いかに客観的なハードデータと言えどもその解釈によって結果が異なってしまう、ということは時折あり、データ活用初心者を混乱させることがあるのですが、まぁ、それはさておき、仮にあなたが身長175cm、68kg、40歳の場合でBMIを計算してみましょう。
体重(68キログラム) ÷ [身長(1.75メートル) × 身長(1.75メートル)] = BMI
1.75×1.75が3.0625なので68÷3.625=22.2040816となり、22.20は18.5-24.9の間に収まるので目標とするべき体重の範囲内であることがわかります。
では、BMI20を目指す場合で考えてみましょう。
適正体重の算出方法は
身長(メートル)× 身長(メートル)× 目標とするBMI(注) = 適正体重(キログラム)
となっているので、
1.75 x 1.75 x 20 = 61.25kg
となり、BMI20を達成したい場合は6.75kgの減量が必要である、ということがわかります。
ちなみに、BMI18.5の場合は56.65kg、BMI24.5の場合は76.26kgということが計算してみると分かり、健康だと考えられている範囲には実に20kg近い差がある、という衝撃的な事実もここから紐解くことができます。
自分の体重と身長というハードデータを使い、適正体重というデータと比較することでも自分の体重が今現在どのような状況なのかというのを判断することができる、ということがこの例を通じてわかってもらえると幸いです。
自分のデータだけでなく他者大勢のデータを活用して客観的な健康の基準を知る、というのも立派なデータ活用ですし、それを意識するだけでも日常生活を少し変えてみるきっかけになるかもしれません。それこそがデータ活用の利点であり、体重一つとっても様々な観点からそのデータを比較したり、身長というもう一つのハードデータと掛け合わせて使うことでBMIなどの数値が計算できるようになり、また別の世界がひらけてくる、というのもデータを使ってあれこれやってみる醍醐味でもあります。
次のエピソードではまた別のデータを掛け合わせて考える方法を深掘りしていきたいと思います。お楽しみに!
(データのじかん編集部 田川)
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