Facebookが一部の保有データを一般とシェアしているウェブサイトをご存知ですか? その名も『facebook Data for Good』。Data for Goodは「慈善に役立つデータ」くらいの意味でしょうか。
データとFacebookと聞いて思い浮かぶのが、2016年の米大統領選で大量のFacebookユーザーデータが流出し、トランプ陣営に渡っていた問題。その他にも、データアルゴリズムにより自動生成されるターゲット広告がトランプ陣営やロシアの情報操作に利用され、米大統領選挙の結果に影響を与えたのでは、と物議を醸しました。
Facebookはこうしたイベントの際、ビジネスの一環として積極的にデータを提供した疑いが持たれています。この疑惑についてアメリカ、イギリス、カナダを含む複数の議会がCEOのマーク・ザッカーバーグ氏を参考人招致しましたが、CEOはだんまりを決め込むばかり。
こうして見ると、Facebookのデータ利用は「for Good」にはほど遠いわけですが……。今回立ち上げられたデータページには、どんなことが書いてあるのでしょうか?
トップページには、Facebookは人道的支援に取り組む非営利団体にデータを提供しています、という説明が。提携先は各国の独立系NPOや大学から、UNICEFや国際赤十字など大規模なNPOまで様々です。データ提供の目的は、発展途上地域の援助や公共の福利に役立てるため、としています。
提供されるデータは以下の2種類。
人工衛星画像やセンサーデータを用いて開発されたデータはオープンリソースとして、誰でも無料で入手できます。オープンデータはFacebookデータページや提携先団体のウェブサイトからダウンロード可能とのこと。
非公開のリソースから生成されたデータの場合、個人情報を特定できないように処理を施し、限られた団体と特定の目的のもとデータ共有契約書締結などの法的プロセスに従って共有されます。
2.の非公開データに関しては、Facebookが共有先の団体とその目的を決定できます。個人情報を特定できないように処理を施されているとは言え、十分な監視下で運用される必要がありそうです。
Facebookのデータ共有ツールには主に以下のようなものがあります。
Facebookユーザーの位置情報を基に自然災害発生から24時間以内に生成されます。これは従来のツールに比べ非常に迅速です。災害マップはリアルタイムの情報を共有し、電力や通信ネットワークの使用可否、避難状況、支援サービスや物資の決定などに役立てられます。
NASAの人工衛星画像データ収集プログラムを使用し、中電圧供給ラインの位置を特定します。この位置情報は施設建設場所の決定に関わるため、インフラプランの作成や地域開発プロジェクトに欠かせません。位置特定の精度は約70%とのこと。
2016年以降、Facebookは世界銀行やOECD(経済協力開発機構)と協力し、Facebook上にビジネスアカウントを持つ小規模ビジネスの動向調査を行ってきました。最初は20カ国で始まったこの調査は現在90カ国以上に拡大され、対象となるビジネスオーナー数は9000万社以上にのぼります。調査結果はオープンデータとして政策決定関係者、研究機関、各種NPOに提供されます。
2017年、大型ハリケーンがプエルトリコを直撃した際、コネクティビティの有無が人命や復興状況を大きく左右しました。Facebookはプエルトリコのユーザーの位置情報データを民間通信企業と国際赤十字に提供し、プエルトリコのコネクティビティマップを作成。それを基に、7ヶ月間で99カ所のコネクティビティ設備が増設されました。
またアフリカのマラウィでは2017年、コロンビア大学と世界銀行がFacebookの持つ人工衛星データ上に建物が写り込んでいるかを機械学習で解析し、人口分布を測定。この人口分布データは後に、国際赤十字がマラウィ健康省と提携して行ったワクチンキャンペーンに使用され、3日間で約10万軒の戸別訪問の達成に貢献しました。
こうして見るとFacebookは数年前からすでにデータの「クリーンな」活用を行っています。それ自体はもちろん歓迎すべきことですが、一連のデータにまつわるスキャンダルを振り返ると、データとは人命救助に役立つ正義の剣であると同時、人を操る悪魔のささやきにもなり得る諸刃の剣であることがよくわかります。
データ利用の目的に関わらず、これからも個人データを提供する際は慎重になった方が良さそうです。
参考リンク: ・Facebook Data for Good ・ロシア、米大統領選に「全ての主要ソーシャルメディアで介入」=英研究 | BBC ・UNLOCKING INSIGHTS FROM DATA: COLLABORATION WITH PRIVATE SECTOR CREATES CUTTING-EDGE MAPS FOR DISASTER RESPONSE | NETHOPE ・THE POTENTIAL OF SOCIAL MEDIA INTELLIGENCE TO IMPROVE PEOPLE’S LIVES | GOVLAB
(佐藤ちひろ)
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