大阪・関西万博では万博史上初の「全面キャッシュレス万博」を目指している。会場ではクレジットカード、IC型・QR型電子マネーなど約60種類の決済手段に対応する。また、2023年11月から独自サービス「EXPO2025デジタルウォレット」がスタートした。
「EXPO2025デジタルウォレット」は大きく4つの役割「つかう」「ためる」「あつめる」「つながる」があり、それぞれに名称が付けられている。
「つかう」は「ミャクペ!」と命名され、クレジットカードや銀行口座からチャージして使える電子マネーだ。Visaのタッチ決済対応のため、万博会場だけでなくタッチ決済対応の全国のVisa加盟店で使える。
「ためる」は「ミャクポ!」だ。SDGsや万博に関する取り組みに参加するとポイントが貯まる。貯まったポイントは万博限定商品・サービスに使える。
「あつめる」は「ミャクーン!」という。イベント参加やミャクぺ!利用などにより、
ミャクミャクのNFTが付与される。
「つながる」ではSBT・NFTの保管管理、保有しているNFTを二次元コードで簡単に交換できる。
「ミャクペ! 」「ミャクポ!」「ミャクーン!」のサービス開始は2024年5月からだ。
さっそく「EXPO2025デジタルウォレット」をインストールした。メイン画面では、公式キャラクターのミャクミャクが現れ、万博のアプリであることを強く印象付ける。筆者がインストールした時点では「ミャクペ! 」は使えなかった。
一方、4月27日から一般社団法人大阪外食産業協会(ORA)と連携したキャンペーンを順次行っている。これは対象店舗で500円以上を利用すると、店内にあるキャンペーンPOPに表示されている二次元コードを読むこむ。すると、大阪の飲食店などで使えるクーポンNFTや大阪・関西万博のチケットなどが当たる仕組みだ。
キャンペーンの実態を調査するため、大阪市内にある対象店舗を訪れた。しかし、店内をいくら見回しても、キャンペーンPOPは見つからない。「おかしいな」と思い、店員にキャンペーンについて尋ねると衝撃的な答えが返ってきた。キャンペーン開始から3週間が経過しており、対応しているのが自然だろう。
何とキャンペーンの存在を知らず、今まで尋ねる客もいなかったそうである。当然、キャンペーンの恩恵にあずかることはできなかった。一方、店側は筆者に対して謝罪し、極めて誠実な対応に終始していた点は言及しておきたい。
「キャンペーンの存在を知らなかった」という事実は店側だけの問題ではない。むしろ、万博の認知度・関心度の低さ、「EXPO2025デジタルウォレット」への無関心が招いた結果といえるだろう。
人々の万博に対する関心度はアンケート調査により導き出される。読売新聞は4月19日から21日にかけて、万博に対する関心度を調査するために全国世論調査を実施した。それによると、「関心がない」は69%にのぼった。
今回の大阪市での出来事は数字以上に万博に対する関心度の低さを象徴するように思う。取材からしばらく経った今、キャッシュレス決済を通じて感じた雰囲気が少しでも変化していることを願わずにはいられない。
(取材・撮影・TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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