では日本のジェンダーギャップにおける課題とは一体何なのか、分野別に見ていくと「政治」・「経済」の分野での遅れが足を引っ張っていることがわかりました。
特に「政治」の分野は昨年の125位から20位近くランクを落とし、144位と大きく出遅れています。
また、他国で「教育」の分野におけるジェンダーギャップの解消が進む中、変化のない日本は昨年の65位から大きくランキングを下げました。
それではジェンダーギャップにおける日本のウィークポイントである「政治」・「経済」の分野について項目ごとにその指数を見ていきましょう。
「経済」分野で指数となるのは次の5つの項目です。
この項目のうち「労働参加率」、「男女間の同一労働での賃金格差」、「男女間の収入格差」の三つの項目で日本は世界平均を上回っています。
一方で、「管理職につく男女の人数の格差」や「専門職、技術職につく男女の人数の格差」世界平均を下回り、特に前者の項目については、平均の半分以下のスコアとなっており、ランキングも131位と著しく低く、女性が要職につきにくいという日本の課題が顕著に表されました。
続いて日本のジェンダーギャップの縮小のボトルネックとなっている「政治」分野で指数となるのは次の3つの項目です。
日本は政治分野の全項目で世界平均を下回っていることがわかります。
過去50年間に国家のトップとなる女性がいなかったというのはもちろんのこと、閣僚の女性率の低さも目立ちます。
このような課題は経済での課題として見えた、「女性が要職につきにくい」とも合致しています。
一方で世界で見ても、現代キャップ指数が1、つまり完璧に平等な国はまだ存在せず、WEFは、ジェンダーギャップの解消には今後99.5年かかるだろうという試算も出しています。
女性がなかなか要職に付けない背景には、日本社会に年功序列が根付いており、労働時間に比例して役職につきやすいということがあります。
育児や介護などの負担が女性にかかりやすい日本では、必然的に女性の労働時間が長くなったりキャリアに空白期間ができたりして、年功序列から外れてしまう、という事例が多いのです。
そこで、近年、女性の活躍にもつながる新たな制度の導入に乗り出す企業も少なくありません。
例えば、リモートワークの導入によって場所に縛られない働き方ができたり、裁量労働制の導入によって労働時間に縛られない評価方法が導入されたり、と従来の働き方や評価方法を変える、という事例はスタートアップを中心によく見られます。
そうした中、ユニークな方法でジェンダーギャップを解消しようと取り組む企業があります。
フェムテックの先駆けとして女性の体管理アプリ「ルナルナ」などを提供するエムティーアイは、2020年2月より福利厚生の一環として低用量ピル服用を支援するという発表をしました。
医薬品の製造・販売をするバイエル薬品が日本人女性約2万人を対象に行なった調査によると、月経に伴う生理痛や、PMSを含む月経困難症に伴う労働力の低下が年間6828億円の経済的損失を生み出しているそうです。
そこで、エムティーアイは同社がグループ会社のカラダメディカとともに提供する産婦人科向けのオンライン診療サービス「ルナルナ オンライン診療」を活用した場合、婦人科受診と処方された薬代を同社が負担するというプログラムの導入に踏み切ったということです。
制度上の変革だけでなく技術や医療を活用することでジェンダーギャップを埋めようとする取り組みは多くの話題を呼びました。
例えば、課題の一つとして、家庭の中で福利厚生の充実している企業に勤めている人にライフイベントに伴う負担の比重が偏ってしまい、その人自身だけでなく、企業側にも負担がかかりやすくなる、ということが挙げられます。
こうした課題を解消するためにも、働きやすい制度を特定の企業のみが採用するのではなく、社会で広く導入することで、きちんと負担を分け合うことが重要になってくると考えられます。
ジェンダーギャップを解消するための様々な改革を取り入れることははじめは負担が大きいかもしれませんが、少子高齢化で労働力不足が続く昨今、継続的に取り組めば、女性の労働力を最大限に活用することもでき、結果的に利益に繋がっていくと考えられます。
ジェンダーギャップと言うとネガティブな言葉に聞こえるかもしれませんが、これからまだまだ改善する余地があるという意味で、前向きに様々な改革を進めていきたいですね。
【参考引用サイト】 ・ Global Gender Gap Report 2020 | 世界経済フォーラム ・ 女性活躍推進で社員が変わった企業の成功事例8選・取り組みのポイントとは? ・ 生理の体調不良で経済的損失が年間6828億円 フェムテック先駆け「ルナルナ」運営会社が福利厚生制度で低用量ピル服薬を支援(大藤ヨシヲ)
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