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2000年代後半くらいから、コンビニやレストラン、ホテルなどでよく見かけるようになった外国人スタッフ。流暢な日本語で接客してくれる人に感心することもしばしばですが、ふとした疑問が。それは「移民の受け入れをしていないはずの日本で、どうして外国人労働者が増えているんだろう?」というもの。もしかしたらみなさんも感じたことがあるかもしれません。

実は2016年時点で、日本の外国人受け入れ数は世界4位。(経済協力開発機構調べ)これは1位ドイツ、2位アメリカ、3位イギリスといった移民大国に次ぐ多さです。移民政策に積極的なカナダやオーストラリアよりも上と聞くと、さらに意外に思うかもしれません。

ちなみに2018年10月末時点での外国人労働者数は146万人(厚生労働省調べ)で、同時期の派遣社員数130万人をはるかに上回っています。

移民政策がないはずの日本でこうした状況が起こっているのには、どのような背景があるのでしょうか?

深刻化する人手不足、問題含みの現行制度


外国人労働者へのニーズの高まりには、高齢化や少子化による労働人口減少による特定業界の人手不足の深刻化という背景があります。製造業、農林水産業、飲食業などの業界は主に、発展途上国への技術支援を名目とした「技能実習」や、留学生に許可される「資格外活動」で就労する外国人労働者を雇用しています。

技能実習制度での滞在は最大3年までで、日本で習得した技術・知識を母国に持ち帰り生かしてもらう、というのが前提。この在留資格での滞在者は30.8万人(2018年10月時点)。

しかしその内実は、低賃金・長時間労働といった劣悪な労働環境の温床になっていると指摘されています。悪条件に耐えられず逃亡し、不法滞在や犯罪に走る技能実習生もいます。

また34.3万人(同)に上る留学生の資格外活動には、就労時間数に制限があったり、都市部に人手が集中しがちという難点が。

そこで政府は2019年4月、在留資格に新しく「特定技能」カテゴリーを追加し、外国人労働者の受け入れを促進していく方針を明確にしました。人材不足の業界では歓迎の声が上がる一方、その内容が「実質的な移民政策では?」と議論を呼んでいます。

特定技能カテゴリーの開設により、今後も増え続けるとみられる外国人材。どういった要件や待遇が定められているのか、詳しくまとめてみました。

新しい在留資格「特定技能」とは?

特定技能カテゴリーの新設が大きな話題になっているのは、外国人に単純労働を解禁したためです。今回の入管法の改正では、深刻な人手不足に悩む建築業界や介護業界などの14業種が含められました。

特定技能には1号と2号があり、条件に次のような違いがあります。

  特定技能1号 特定技能2号
滞在期間 最大5年(終了後は帰国) 制限なし
家族の帯同 できない できる
業種

①介護業

②ビルクリーニング業

③素形材産業

④産業機械製造業

⑤電気・電子情報関連産業

⑥建設業

⑦造船・舶用工業

⑧自動車整備業

⑨航空業

⑩宿泊業

⑪農業

⑫漁業

⑬飲食料品製造業

⑭外食業

⑥建設業

⑦造船・舶用工業

特定技能のうち1号に当たる12業種は、滞在期間が最大5年間となっており、期間終了後は帰国する必要があります。家族の帯同は認められていません。

一方、より専門的な知識と技術が必要とされる建築業、造船・舶用工業の2業種については、特定技能1号から試験を経て特定技能2号への移行が可能です。特定技能2号を取得すると、日本滞在期間に制限がなくなり、家族を呼び寄せることも可能。この点が「実質的な移民政策」と言われるゆえんです。

しかし特定技能1号については期限付き・単身での就労となり、2号についても対象2業種で日本に永住する人が爆発的に増えることは予想しづらいため、今回の入管法改正を移民政策と呼ぶことはできないように思います。

在留資格「特定技能」で外国人労働者を雇用するには?

基本的に、受け入れ希望企業と労働者が雇用契約を結び、当事者が入管にビザ申請を行うというシンプルなプロセスです。

特定技能ビザ1号を取得できる人材の条件としては、

1. 日常会話レベルの日本語能力
2. 対象業種の知識と経験を証明する試験に合格すること

の2つのみ。2の技能試験については、政府が2019年度内に業種別の試験を順次実施していく予定です。

また、現時点で技能実習2号、3号の資格を持つ人については、政府認定の技能試験を受けることなく特定技能1号に移行できます。

雇用時の条件とは?

特定技能カテゴリーで外国人を雇用する企業は、以下の基準を満たす必要があります。

① 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例えば、報酬額が日本人と同等以上であること)
② 受入機関自体が適切(例えば、5年以内に入管法や労働法令違反がないこと)
③ 外国人を支援する体制がある(例えば、外国人が理解できる言語で支援できること)
④ 外国人を支援する計画が適切(例えば、生活オリエンテーション等を含む支援計画があること)

1は、「搾取的」と言われる技能実習制度の失敗を踏まえた条件でしょう。2に関しては、過去に技能実習生に計画外の作業をさせたとして技能実習計画の認定を取り消された経歴を持つ会社は大手企業であっても対象外になる可能性があります。

3、4に関しては、住宅の用意、日本語学習の支援、行政手続きに関する情報提供など、外国人労働者が日本で生活を送るためのサポートの提供が求められています。

「特定技能」カテゴリーは変化のほんの序章

日本人が敬遠する肉体労働の担い手として、発展途上国の外国人材の確保を目的として新設された「特定技能」カテゴリー。日本の15歳から64歳までの生産年齢人口は、2040年には現在の2017年の7,596万人(総人口比率60.0%)から5,978万人(53.9%)まで減少すると見られています。即戦力となる技能を持った外国人労働者の需要はますます高まっていくでしょう。

しかし彼らの国が豊かになるにつれ、日本で5年間働けるという資格の魅力が薄れる可能性は十分にあります。そうなったとき、滞在期間の制限撤廃や、家族帯同の許可など、実際に「移民政策」と呼べるような動きが始まるのかもしれません。

今後の関連政策に注目です。

【参考リンク】
・外国人労働者の就労はどこまで?新在留資格「特定技能」の概要 
・決定版! 在留資格【特定技能ビザ】の使い勝手を、技能実習や他の就労ビザと徹底比較 
外国人労働者、派遣社員を上回る 最多の146万人

佐藤ちひろ

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