卸売業のKGIにつながるKPIには、これまでの経営の経験で培った指標を用いることになります。
ただそれだけでは、卸売業の問題・課題を表面からしか探すことができません。
さらに深部に潜んでいるKPIの要素を探し当てるには、デジタル技術によって蓄積したデータ活用が必要不可欠です。
昨今の物流機器は仕分け、ピッキングを実施するのと同時にデータを取得する機能も備えています。
取得したデータは、データベースエンジンとBIツールを活用することで、KPIロジックツリーの作成のみならず、KPIマネジメントにも活用することができます。
昨今の卸売業では、小売業からの引き合い・見積もりから納品・入金に至るまでのプロセスを行うと同時に、様々なデータも収集しています。
卸売リードタイム、見積もり精度、実働率、誤出荷率、入庫量/人・時間といった卸売業の指標をより細分化する事で今まで気が付かなった振る舞いや傾向が「見える」ようになります。
卸売業の場合、メーカー・生産者、物流センター、配送業者、小売業者など自部署以外に業者との関わりが多く、業務範囲も広いため、特定のKPIのみの改善で経営指標の達成を実現することは困難です。
それには、システムや機器からのデータだけでなく、IoTやAIでテータ収集・分析手段を増やし、自社の業務をマクロな視点で把握できるようにする必要があります。
セグメントとは、KGI、KPIがそれより下位のKPIの足し算で成立する場合の項を指します。
例えば、物流コストの場合、移動コスト、保管コスト、返品・返品物流費、回収物流費、リサイクル物流費、廃棄物流費などの和がKPIとして求められます。
セグメント分解では、”コスト・生産性”、“品質・サービスレベル”、“物流・配送条件”の各指標をまずは足し算で分解することからはじめます。
セグメントに分解したKPIをさらに分解すると、様々な“行動”が「見える化」されます。
卸売業のKPIとして良く活用されている“作業リードタイム”では、その内訳が荷受、ピッキング、梱包、積み込みといった“行動”であり、これら一つ一つが占める割合など把握することで、様々な問題が「見える」ようになります。
卸売業の場合、業務範囲が広いため、KPI指標の分類に対する各プロセスをマトリックス化し、それぞれのマスに既存のものやこれから設定しようとするKPIを当てはめて、網羅状況を把握します。
上図の例の場合だと、在庫管理のプロセスで、リードタイムと生産性のKPIが設定されていないことが明確に示されています。
在庫管理に分類される棚卸、搬入、搬出に要するリードタイムや生産性を示す指標を導入し、KPIとして取り組むことで、経営指標の達成率が高まることが期待できるようになります。
ただしこのようなケースの多くは、これまでは
といった問題でKPIを活用することができませんでした。
昨今ではデータベースエンジン、BIツールの登場によりこのような問題は解決されつつあります。
データでは、KPIに設定できる可能性は示しているものの、その要素の正体が不明確なケースは実は少なくありません。
データ化が可能なものは、新たに分析する事で追従できますが、そうでないものに関しては、仮説を立てて、検証する必要があります。
仮説を明らかにするための施策は、PDCAで実践する事でより高い確度で進められます。
仮説が立証されたKPIは、上位のKPIに繋げることで経営指標の達成具合が計れるになります。
先程紹介した仮説で更なるデータの分析でも行動に至る要素が分析できない場合、カットアンドトライ、消去法といった施策でその構造を明らかにしていきます。
これらの多くは、システムの未導入、施策の未活用に潜伏しているケースが多く、例えば、
といったことを要素としている可能性があります。
卸売業は、自動化されていないプロセスも実は多く、このような領域をフォーカスすることで高い効果が得ることが期待できます。
構造の実証には比較的時間を要し、また上位のKPIに繋がらない可能性もあるため、卸売業全体のKPIから切り離した方が実証はスムーズに進みます。
セグメント、行動で分解したKPIを抽象度の高い要素を頂点に置き、それの要素になるKPIを線(枝)で結びます。
これをツリーの末端となる要素(葉)まで繰り返すことでKPIツリーが完成します。
KPIツリーを作成する事で、具体的な施策に至るまでのプロセスが網羅できるようになります。
また、いざ実践をするにあたって、注入すべきマンパワーや投資なども「見える化」されるので、経営面のリスクの回避にも繋がります。
卸売業のKPI向上は、設備投資で対処できるものは、即座に対応し、そうでないものは、ナレッジ化といった観点で取り組むことで着実な向上が期待できます。
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