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「AI推論」とは? 「AI学習」との違いや、予測・レコメンドなどの事例を押さえよう

         

2020年代前半は後の歴史からさかのぼってAI活用においてエポックな期間だったと振り返られることになるでしょう。それはいうまでもなく、ChatGPTをはじめとする生成AIがキャズムを超え、メインストリーム市場においても存在感を発揮する状況が生まれたからです(NRIの調査によると2023年5月時点で日本の就労者における生成AIの認知率は50.5%)。

そんなAIの活用において理解しておかなければならないのが「AI推論」とは何か。その意味や具体的に活用されているAI予測、AIレコメンドの今について、この記事でわかりやすくご紹介します。

「AI推論」は“AIを使って問題解決を行うプロセス” 「AI学習」との違いは?

AI推論とは、簡単に言えば“AIを使って問題解決を行うプロセス”のことです。AIの活用には大きく分けて「学習」「推論」の2つのフェーズがあり、前者ではAIに学習データを与え、教師あり学習、教師なし学習、強化学習などで予測やコンテンツの生成を行うための推論モデルを構築します。いわゆるAIモデリングも学習とほぼ同義と考えて問題ありません。

後者の推論は、学習フェーズで構築したAIモデルを実際に使う段階です。AIに生成支持を行うためのプロンプト(命令文)や画像といった新たなデータを与え、それに応じた結果(文章、画像、プログラムコード、映像、音楽……etc.)を出力させることで我々は恩恵を得ることが可能になります。

厳密には、AIがプロンプトを読み込み、何を出力するかを計算によって導き出すプロセスや、識別や予測を行うプロセスまでがAI推論であり、人間の指示通りの形で出力する段階は「AI推論の結果の出力」と区別すべきかもしれません。

とはいえ、通常AIを利用するにあたっては冒頭に述べたように“AIを使って問題解決を行うプロセス”=“AI推論”と考えるとよいでしょう。

データ活用の高度化・一般化に貢献する「AI予測」の可能性

AI推論と近しい用語として「AI予測」があげられます。AI予測はその名の通りAIを用いて未来の売り上げや施策の成功確率、将来のリスクなどを予測させることであり、“AI推論の一部”に当たる利用法です。

自社データやビッグデータ、アンケート結果などを組み合わせた予測については、「データ活用」の中心的な打ち手のひとつとして近年注目を集め続けてきました。AI予測はそこにAIを導入することでより容易、スピーディ、正確な予測を実現するための取り組みといえるでしょう。

たとえば、「人 口 推 計- 2023年(令和5年) 12 月 報 -」(総務省)のPDFをChatGPT4に読み込ませて、「「人口推計_総務省」からわかる範囲で2030年の日本の人口について予測してください。」と命令した結果が以下です。

もちろん、このぐらいの予想であれば誰にでも可能であり、データサイエンティストやデータアナリストが行う高度な分析には及びもつきません。しかし、人口動態データや出生率と死亡率の推移、移民の流れに関するデータなどより多くの資料を読み込ませれば、大きく精度を高めることはきっと可能でしょう。足りないデータについてもAIの指示を仰ぐことができるため、人間は予測に脳をほとんど使うことなくAIと対話しながら、データ活用が行えるのです。

もちろん業務にAI予測が活用される流れは2023年以前よりずっとつづいており、AI 需要予測自動発注システムを全店に導入し、発注にかかる人的コストの大幅削減に成功したスーパーマーケット「ライフ」の事例や、台風、地震といった自然災害の発生確率や被害の規模、道路状況の変化の予測にAIが用いられる事例など数多くのケースが報告され、今も発展し続けています。

高度なデータ解析や必要なデータの収集、日々変化する状況への対応などデータ活用の専門家の役割はこれからもなくならず、むしろAIの機能とともにさらに発展していくことでしょう。

とはいえ、AI予測が専門家でない我々にも身近になったことはテクノロジーにより広がった可能性として押さえておきたいところです。

サードパーティクッキー廃止に伴い、高まる「AIレコメンド」への注目

AI推論、AI予測の活用事例の中でもポピュラーなのがAIレコメンドです。

Google広告やAmazonのおすすめ商品、Apple MusicやSpotifyのプレイリスト作成などさまざまなシーンで、ユーザーの好みを計測・分析し、AI推論によって最適なコンテンツや商品をレコメンドすることはもはや我々の日常で当たり前に行われています。

これまでGoogleなどの行動ターゲティング広告に利用されてきたサードパーティクッキー規制の流れは何度か延期を重ねながら、2023年12月末現在は2024年末の廃止を目標に進められており、サイトをまたいで閲覧データを利用できないなかで、AIを用いた閲覧者の分析と分類をもとに、プライバシーを保ちながらターゲティング機能を代替する「プライバシーサンドボックス」の実現が計画されています。

個人情報保護とレコメンドのバランスを保つためにもAIの推論能力が台風の目となっていることに、遠からず訪れるサードパーティクッキー廃止(Apple社のSafariでは2020年3月にすでにデフォルトで実行)を見据えて注目すべきでしょう。

終わりに

AIの活用に当たって重要、というよりAIの活用そのものを指すといっても過言ではない「AI推論」やその実践例としてのAI予測・AIレコメンドについて解説してきました。

現在のところ、学習したデータを背景に、与えられた命令に従って推論を行うのがAIの役割であり、どのようなデータを学習させるのか、どのような命令を与えるのか、そもそも何を目的に設定するのかを考えるのは人間の役割です。その思考の過程にもAIの活用は有用ではあるものの、あくまで人間が主体となる必要がある点は今後もしばらくは変わらないのではないでしょうか。

近年AIがぐっと身近になったからこそ、使ってみて、慣れて、主体的に活用してみることをおすすめします。

(宮田文机)

 

参照元

・キャズム理論とは?キャズムが発生する理由、越えるための7つのポイント┃東大IPC
・生成AIで変わるビジネス┃NRI
・第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0(令和元年版 情報通信白書)┃総務省・人 口 推 計- 2023年(令和5年) 12 月 報 -┃総務省

・年間40万時間の発注作業を一気に半減 ライフ全店で導入のAI自動発注システムの実力とは┃Diamond Chain Store online
・衛星データで災害予測 総務省、AI使い変化解析┃日本経済新聞
・サードパーティークッキー廃止へ ネット広告効果半減も┃日本経済新聞

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