トイレの利用時間や混雑状況は、性別や施設の種類、国や地域によって大きく異なります。特に、女性トイレの滞在時間が長いことや混雑しやすいことは、多くの国で共通する課題となっています。本記事では、男女別のトイレ滞在時間の統計データ、公共施設や商業施設でのトイレ利用の実態、さらに国や地域ごとの違いについて詳しく解説します。
トイレの利用時間には明確な性別差があるそうです。一般的に、男性よりも女性の方が滞在時間が長い傾向があるというのです。
例えば、日本の高速道路サービスエリアでの2014年度の調査では、男性が小便器を利用する際の平均所要時間は約37.7秒だったのに対し、女性が個室(洋式便器)を利用する場合は平均93.1秒と、女性の方が約2.5倍長い結果が報告されています。同様に、日本トイレ協会による分析でも日常的な「小用」の場合、男性は約31.7秒、女性は約1分33秒(93秒)と女性が約3倍時間を要しており、この差は生理用品の使用や着衣の差、化粧直しなど女性特有の要因によるものだといいます。
海外でも傾向は同じで、女性の方が概ね1.5~2倍以上長いというデータが多く見られます。アメリカの公共施設を対象とした研究(空港やスタジアム等、被験者454名)では、女性の平均滞在時間は施設によって152.5~180.6秒(約2分半~3分)だったのに対し、男性は83.6~112.5秒(約1分半~2分弱)と報告されています。
また、オーストラリアの調査でも、女性のトイレ利用時間は平均172秒で男性より47%長く(※男性は約117秒)、排尿行為(小用)に限って比較すると女性は平均80~97秒、男性は32~45秒という測定結果が示されています。
こうした時間の差について、女性は化粧直しや、月経、妊娠中の対応、子どもや高齢者の付き添いなどで余分な時間を要する場合があり、子連れでは5~10分以上費やすケースもあるとされています。こうした男女差を踏まえ、米英ではいわゆる「ポッティ・パリティ(トイレの公平)」の観点から女性用設備を男性より増やすことが推奨されており、英国の公衆衛生庁報告書(2019年)は公共トイレの男女比を現状1:1から女性2:男性1に改善すべきという提言が出されています。
トイレ滞在時間は施設の種類や利用状況によっても差異があります。
株式会社ベクトル総研による2017~2020年の研究では、オフィス、大学、空港、鉄道駅など様々な公共・商業施設トイレで利用時間をセンサー計測しています。その結果、時間に制約のあるオフィスでは他の施設よりも平均占有時間が30秒以上短く、逆に鉄道ターミナル駅のトイレでは男女とも占有時間が長め(他より長時間滞在しがち)と報告されました。同じ空港内でも、チェックインカウンター付近よりフードコート近くのトイレの方が利用者に時間的余裕があり、平均利用時間が長くなる傾向が確認されたといいます。
一方、利用者の年齢層も影響し、中高年層が多いトイレでは男性用小便器の占有時間が長くなる傾向があることも指摘されています。 商業施設やイベント会場では利用者数が一時的に集中するため、女性トイレの行列が発生しやすくなります。前述の通り、女性は用を足すだけでも男性より時間がかかります。さらに個室のプライバシー空間ゆえに化粧直しや身だしなみを整える時間が加わることもあり、商業施設内トイレでは女性の滞在時間が延びがちだといいます。実際、ある大型オフィスビルでIoTセンサーを用いて約18万回分のトイレ利用を記録したデータでは、男性個室利用1回あたり平均約4分12秒、女性個室は約2分57秒という結果でした。これは男性が個室を主に“大”の目的で使い、女性は“小”“大”いずれでも個室を使うため、男性側の1回あたり時間が長くなった特殊なケースかもしれませんが、いずれにせよ混雑時の劇場やショッピングモールでは女性は数分程度、男性より長く滞在することが多いと考えられます。にも関わらず、全国779箇所のトイレを調査した結果によると、男性用小便器は3625、男性用個室は2301、つまり合計5926個あったのに対して、女性用個室は3657と総数においても女性用のトイレの方が少ない、ということが明らかになっています。女性の方が時間がかかることを鑑みると、女性のトイレの総数を男性のものよりも多くすることもトイレ問題の解決策の一つとして視野に入れても良いように思えますよね。
トイレは日常生活において欠かせないインフラであり、その快適性や利便性は私たちの生活の質に直結します。男女の利用時間の違いや混雑の実態を理解し、より公平で快適なトイレ環境を整備することが、今後の社会課題のひとつとなるでしょう。
(大藤ヨシヲ)
・「女性トイレの行列問題」なぜ解消されないのか | テンミニッツTV
・トイレ文化小論 | 内閣官房・Restroom usage in selected public buildings and facilities: a comparison of females and males | VTechWorks・Adequacy of Female Public Sanitary Facilities Impact Analysis | The Australian Building Codes Board (ABCB) ・女性の公衆トイレは男性の2倍必要、英公衆衛生庁が報告書 | CNN.co.jp・トイレの利用実態と占有時間に関する施設用途別比較 | 株式会社ベクトル総研
・トイレのビッグデータから見えること | note – 加藤篤(日本トイレ研究所)
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