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少子高齢化が現在進行形で進み続ける日本が抱える問題はもちろんそれだけではありません。子供が少ないにも関わらず平成の30年間で共働きの家庭は1.6倍増加し、1980年代に約600万世帯だった共働きの世帯数は2020年には1200万世帯を超え、学校後に帰宅しても家には誰もいない環境で時間を過ごすいわゆる「カギっ子」と呼ばれる児童の数も増えていると言われています。
放課後の子供たちが自宅で一人で時間を過ごす、ということが必ずしも子供に悪影響をもたらすわけではありませんが、自宅以外の選択肢を子供に提供する、いわゆる「子供の居場所作り」は日本が抱える課題の一つとなっています。
「デジタル活用人材育成講座 in 釧路」のワークショップが2023年11月に釧路で行われ、その内容をデータのじかんで取材し、先日その記事を公開しましたが、同じ釧路訪問の際に、9月1日に釧路市役所前にオープンしたばかりの「デジタルステーション デジラポ クシロミツワベース(通称デジラポ)」(釧路市錦町5丁目3-3三ツ輪ビル1階)を見学させてもらうことができました。
デジラポは「学校」および「家」に次ぐ子供たちの第三の居場所として設立され、小学校4年生から高校3年生までの子供たちであれば無料で使える施設です。恵まれた立地、広々とした明るい空間、そして最新のデジタル設備を兼ね揃えたこのデジラポの施設がどのような経緯で、どのような意図を持って設立されたのか、現状どのような設備があるのか、あるいは今後どのような方向を目指していくのか、なぜこの類の施設が重要なのか、などについてこの記事では紹介していきたいと思いますのでぜひ最後までお付き合いください。
デジラポは公益財団法人日本財団が日本全国に開設している「子ども第三の居場所」事業の一つに位置付けられており、全ての子供たちが安心して過ごせる「放課後の居場所」として利用できる場所を提供することを主たる目的としています。
せっかく時間を過ごすのであれば何かしら新しいことを学んだり、体験できたりした方がよい、という考えのもと、デジラポには、ゲーム用に最適化されたハイスペックのゲーミングパソコンやタブレット、VRヘッドセットなどのデジタルデバイスだけでなく、3Dプリンタやレーザーカッター、室内で飛ばせる小型ドローンなども取り揃えられていて、子供たちは誰でもこれらを自由に使ってみることができます。また、電子ピアノや電子ドラム、アコースティックギター、DJ機器などもあり、子供たちの好奇心が赴くままに楽しみながら学ぶことができるような環境が整えられています。
ここでは、例えば、マインクラフトでプログラミングを学んでみたり、ドローンを使って撮影した動画を編集したり、MIDIキーボードをパソコンやタブレットに接続して音楽制作をしたり、と幅広い分野について楽しみながら学ぶことが可能となっています。一般家庭では買い揃えることが難しいデバイスや最新技術に触れる機会を持つことができるだけでなく、目的を持って、また仲間と力を合わせてそれらのデバイスを使いこなすことで、子供たちが自発的に学習できる機会を増やす、というのがデジラポが目指している姿となっています。
また、子供たちだけを対象とするのではなく、地域の企業や団体、他地域の人など、様々な交流が生まれる場所となるようにコワーキングエリアやイベントスペースも併設されており、年代や職業を超えた多くの人たちによる「多世代交流」をうながしていくことで、引いては地域の発展に貢献しようという目論見を有しています。
デジラポを運営するのは「一般社団法人 学校地域協働センター ラポールくしろ(釧路市末広町11-1-10クローバービル2階)」。ラポールくしろは2018年に設立され、学校と地域と企業をつなぎ、新しい教育の在り方について考え、子供たちの未来を支援する団体として2018年に設立されました。今回の訪問では代表理事の幸村仁氏にも短い時間ではありましたが、お話を伺うことができました。
幸村氏はもともと知床半島にあるウトロの公立中学校の校長先生でした。教育現場を熟知する幸村氏は、現状を知っているからこそ、学校だけでできることにある種の限界を感じ、兼ねてから、家庭と学校、そして地域が一丸となって新しい教育の形を作ることが理想だと考えていました。そして、新しい教育の形を実現させるには子供たちにとって第三の居場所となる存在が必要不可欠であると考えていました。その第三の居場所を実現させるため、幸村氏は在職中にラポールくしろを立ち上げ代表理事に就任しました。退職後はデジラポの館長として、子供たちの未来のために尽力することを決意し、今のポジションに着任しました。
デジラポでは、居場所と設備を子供たちに提供しますが、大人が子供たちに何かを「教える」ということは実は基本的には行っていません。何かを学ぶために必要な学習材料のほとんどがYouTubeなどの動画サイトをはじめ、インターネット上で見つけることができる今の時代において、必要なコンテンツを自ら探し出し、自発的に学習することこそが本当の学習だと幸村氏は考えます。教えることに大人たちのリソースを割り当てるよりも、例えば、より気楽に施設を使ってもらうために送迎バスを活用できるようにすることで保護者の負担を減らすことや、大学生や高専生のメンターによる対話を通じた寄り添い支援、利用料金を無料のままにしておくために必要な運転資金の確保などの活動に割り当てる方が賢明である、という考えのもとにデジラポは運営されています。今後はeスポーツクラブの本格的な活動の開始、デジタル人材育成や子ども会社の設立なども視野に入れた起業家育成など、より遠い未来を見据えた活動に関わっていきたい、また、地域全体でデジラポの活動に関わることにより、釧路全体の発展につながることを期待している、と幸村氏は語ります。
ここまで充実した設備が誰でも自由に、しかも無料で使える、というのは子供たちにとって夢のような話であり、インターネットでちゃんと検索すればいくらでも使い方を学ぶことができる、という時代背景もかなりの追い風となることは容易に想像できます。むしろ、大人でも十二分に楽しめ、かつ学習ができる充実した環境だと言えます。デジラポは子供たちのポテンシャルを開花させるにはまさに理想的な環境であり、今後、数多くの子供たちの才能がこの場所で開花していくこと間違いなし、と確信できる素晴らしい施設でした。最近、筆者が暮らすいわき市にある学童を訪問する機会があったのですが、
そこは古い施設で、当然のようにデジタル機器などは全く配備されておらず、昔の学校関連施設にありがちな灰色のイメージの場所でした。これが日本の多くの学童施設の現状だと仮定すると、デジラポが提供する環境の秀逸さと、その環境が子供たちに今後もたらすであろうさまざまなオポチュニティーについて改めて考えさせられ、デジラポの貴重さを再認識しました。
また、デジラポでは、実際の日々の運営業務を担う「デジラポ運営コーディネーター」を募集しており、データのじかん編集部員たちがこぞって一瞬本気で転職を考えるほど、仕事としてやりがいもあり、条件面でも充実した内容となっているので、釧路で暮らすことに少しでも興味がある方は条件だけでもぜひ見てみてください!前回の記事でも少し触れましたが、釧路は北海道とは言え、雪がほとんど降らない比較的暮らしやすいエリアなので検討の余地は十分あるのではないかと個人的には思いました。
もしかしたら近い将来、編集部員の一人である大川さん(下の画像左)がデジラポの受付で働いている、かも知れません(笑)。
(取材・記事執筆・撮影:データのじかん編集部 田川薫)
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