トップバッターは月井精密の名取氏。月井精密は飛行機や人工衛星、ロケットなどの精密機械のパーツ加工をメインに行っている会社。20歳のときに脳梗塞で倒れた祖父の意志を継いで社長に就任。アナログ機器と手作業で行われていた加工現場をNC化しデジタル化を推進し、現在では34歳の工場長を筆頭に、20代の女性が半数を占めるという若い企業となりました。
工場内のNC化を進める一方、見積もりなどを始めとした事務作業は依然としてアナログなこと、そして図面などに重要なデータが書き込まれているのに廃棄されてしまうということに目を付けた名取氏は、見積もりデータのAI化に着手。その結果、見積もりに特化したSNS「Terminal Q」を開発。現在はNVTというベンチャー企業を立ち上げ、製造業は月井精密、Terminal QはNVTという2社の経営を行っています。
Terminal Qはサービスリリースから2年で1,500社が利用。1日当たり2,000枚ほどの見積もり図面がやりとりされている巨大サービスとなっています。Terminal Q内では、参加企業が自社の実績や使用機材、得意分野などを登録。それらのデータはAIで処理され、発注企業が見積もりを依頼したいときにTerminal Q内で検索をすると、要件に合致する企業がピックアップされ見積もり依頼ができるという仕組みです。メールやFAXなどを使わず、Terminal Q内のチャットでやりとりが行えるため、スピーディにビジネスが進められるのが最大の特徴。また、受注側の企業が自社の技術や実績をプレゼンテーションし、発注側の企業がその場で見積もり依頼ができるというユーザー会も定期的に開催。従来の見積もり業務とは異なる、新しい見積もりの場を提供しています。
製造業を軸に、AIベンチャーへと徐々に業態を変更し進化している、注目の企業です。
次は浜野製作所の浜野氏が登壇。東京都墨田区という下町で、小さな町工場からスタート。元々は5次下請、6次下請をメインとした金属加工業でしたが、工場の火災を機に徐々に業態をシフト。量産加工メインの業態を、地域密着型、そして少量多品種生産の業態に変更し、自社工場内にインキュベーション施設「Garage Sumida」を開設。そこに集まってきたベンチャー企業や研究機関の開発支援を推進しています。
Garage Sumidaでは開発設計から試作、量産までをサポート。オリィ研究所やWHILL、チャレナジーといった注目のスタートアップ企業が、Garage Sumidaを拠点としています。
その取り組みが世界的にも注目され、2018年には経済産業大臣賞を受賞。また、現上皇陛下の最後の企業視察や2019年6月にはニューヨークの国連本部で開催された国連中小企業の日記念イベント「Micro-, Small and Medium-sized Enterprises Day」に登壇するなど、世界的に認められているものづくり企業です。
最後は旭鉄工の木村氏。旭鉄工はトヨタ自動車系の一次仕入れ先となっている自動車部品メーカーです。木村氏は2016年に社長に就任後、製造ラインのIoT化を推進。生産性を43%アップさせるなどめざましい成果が得られたことで、そのシステムを外販するi Smart Technologiesを設立。2社の経営を行っています。
旭鉄工では、製造ラインにAIスピーカーなどを導入し、従業員がタブレットや音声を使ってトラブル発生時のライン停止や製造個数の確認などが行えるようになっています。それらをリアルタイムで確認できるだけでなく、音声でデータ確認ができたり、スマートフォンやスマートウォッチなどから指示を出すということも可能。現場の効率化を図ることで生産性を大幅にアップしました。
製造業の現場は、まだまだアナログな作業が多いもの。目で確認しペンで紙に記入するという作業は、時間がかかるだけでなく人的ミスも引き起こす可能性があります。これらをIoTの導入により解消し、生産性を向上させたことは、製造業の現場を大きく変える可能性を秘めていると言えます。
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